短編②
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「お前が火拳の女だな?」
「違います」
エースと買い物に来てただけなのに、
ちょっとはぐれた隙に路地裏に押し込まれて拳銃を突きつけられた。
目の前には2人の男。
2人なら何とかなる、かな。
1人は見張り中だし。
「・・・・・・・違うのか?」
「違いますね」
「いや、お前火拳の女だろ?さっき一緒に居たじゃねえかよ」
「だから違いますって。一緒に買い物してただけで」
「そ・・・そうなのか」
「そうそう」
頷きながら何処か悲しくなる自分が居る。
実際エースとはそんな関係じゃない。
私はエースのことが好きだけど、
たぶんエースは気づいてないし。
だからさっさと解放して欲しいと思ったんだけど、世の中そう甘くはないようで。
「だが白ひげ海賊団の人間だ、そうだな?」
「そうですけど」
素直に認めれば、目の前の男がニタァ、と笑った。
うわあ、嫌な予感しかしない。
「なら命乞いをしてもらおうか?」
「・・・・・・・・・はい?」
命乞い?
「命だけは助けてくれって言うんなら解放してやる」
「言わなかったら?」
「火拳のエースの前で殺す」
「・・・・・・エース?」
「今仲間が連れてくるところだ」
ざっという足音と共に男達の後ろに見えた影。
「ああ・・・・・じゃあ言いますけど」
「あひゃひゃ!」
「命だけは・・・・・・・・・・・・助けてあげる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
ぽかん、と大口を開けた男は次の瞬間、
地面に頭を擦りつけた。
いや、足蹴にされている、っていうのが正しい言い方。
「って訳で命だけは助けてあげてよエース」
つきさっきまで目の前に居た男を踏みつけて、エースは不満そうだ。
「別に殺しゃしねェ」
恐らくエースをここまで案内してきたであろう男と、見張りをしていた男が倒れていて。
・・・・・・たぶん意識ないなこれ。
残ったもう1人は、
「ひっ」
「半殺しにするだけだ」
「・・・・・・・・・・・お疲れ様でした」
ボコボコにされた3人を路地裏に放置して、エースと2人で買い物を再会した。
「ありがとね、エース」
「おう、気にすんな。それよりあいつらに何もされなかったかアコ?」
「うん、大丈夫」
「変なこととか言われなかっただろうな?」
「・・・・・・・・・・・うん」
脳裏に過ぎった、『火拳の女』
「・・・・・・・今の間すっげェ気になる」
「や、ほんと何もなかったから、大丈夫」
慌てて首を横に振っても、エースはうさんくさそうな目で私を見つめる。
うーん、どうしよ。
「嘘だろ」
「嘘じゃないって。ほら、何処も怪我してないでしょ?」
言いながら手を広げて見せると、エースはまじまじと見つめた後ゆっくり頷いた。
「してねェ、な」
「エースの方がやり過ぎだったんじゃないかなって思っただけ。ほら、父さんに言われたでしょ」
「オヤジに?何か言われたか?」
「騒ぎ起こすなよって」
「ああ、言われたな確かに。でも仕方ねェだろ?あれは・・・・・」
そこで言葉を切ったエースに私は首を傾げて、続きを促す。
「あれは?」
「あれは・・・・・アコが危なかったから」
「うん。嬉しかった」
言いにくそうに小さい声で答えるエースが可愛い。
その、言葉も。
「・・・・で、ホントに何もされてねェんだな?」
「うん、大丈夫」
「ったくちょっと目離すとすぐ他の男んとこ行くよなお前は・・・・」
「へ?」
「・・・・・・・何でもねェ」
意味深なエースの台詞と。
少しだけ赤くなったエースの頬に。
私の心臓が大きく飛び跳ねて。
もしかして、もしかしたりする?なんて。
「・・・・・ごめんエース、私嘘ついた」
「え?」
「さっき捕まった時」
「何かされたのか!?」
「ううん、言われた」
がしっと両肩を掴まれて、私は苦笑しながら続けた。
「何て言われたんだ?」
「お前が火拳の女か、って」
「・・・・・・・・・え?」
真剣な顔で聞いてくれていたエースは途端疑問の顔になった。
「あの時は違うって言ったけど・・・・次はそうよ、って言いたいなあ」
「え、あ、俺っ」
「エースが、好き」
じっと目を覗き込んで言ってみたら、
「・・・・・・・・・先に言わせろ馬鹿」
ぷい、とエースは横を向いて不貞腐れた顔。
先に言わせろ、ってことは。
「・・・・・・・エース?」
小さく名前を呼ぶと、エースは私の方に向き直って、そのまま、
「へ」
私の頬に唇が触れた。
「俺も好き、だ」
そしてニヤリと不敵な笑み。
「・・・・・・・・・有難う」
ああ、もう。
カッコいいなこの人は!
「これからはちゃんと火拳の女って名乗れよアコ」
「うん、そうする」