短編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最初にあれ?と思ったのは、1週間前の夜。
シャンクスと結婚して1年。
今までは普通にテーブルに置いてあったシャンクスの携帯が最近置いてない。
でもシャンクスは会社で大変な立場にいるし、大事な連絡でもあるのかなって。
それくらいにしか思ってなかった。
だって別に特別連絡がとれないとか、
夜遅くに帰ってくるとか、
ましてや朝帰りとかなんてなかったし。
ただ携帯をそこらへんに置かなくなった。
ただそれだけの変化だった。
「怪しいわね」
「・・・・・・・・・・え、そう?」
「今度携帯見せて、って言ってみなさいよ。焦ったら絶対黒よ」
でも親友のナミ曰く、怪しいらしい。
「で、でも怪しいのは携帯だけで」
「誰とどんなやり取りしてるかわかったもんじゃないわ」
「・・・・・・・・・・・・うーん」
「いい?今夜本人に言ってみるのよ、携帯見せてって」
「・・・・・・・・わかった」
シャンクスが仕事で忙しいのは理解してる。
おかげで私は家のことに専念出来る。
したかったら仕事してもいい、って言ってくれたけど、
本当に大変なシャンクスを支える為にも私は専業主婦で居ることにしてる。
「ただいま、アコ」
不意に耳元で聞こえた声に心臓が飛び跳ねた。
「・・・・おか、えり。お風呂沸いてるよ」
「ああ、有難う。・・・それより、考え事か?」
「え?」
「俺が帰ってきたの気づかなかっただろう?」
「え、あ・・・ちょっとぼーっとしてただけ、大丈夫」
「そうか?ならいいが・・・1人で抱え込むなよ」
「・・・・うん」
「風呂、入ってくるな」
「うん、行ってらっしゃい」
いつものようにシャンクスをお風呂場まで見送って。
私はシャンクスが置いていった鞄を見つめた。
・・・・・・・・・この中に、携帯が入ってる。
や、でも流石に内緒で見るのはまずいよ。
うん。
手を伸ばしかけて、やめた。
シャンクスがお風呂から上がる前に料理しなくちゃ、と私はもやもやを抱えたまま台所に向かった。
「・・・・美味しい?」
「ああ、美味い」
お酒を片手にご機嫌のシャンクスだけど、横には携帯が置いてある。
・・・・・・・・・・言うなら今。
「あのね、シャンクス」
「ん?」
「携帯、借りてもいい?」
何気なく口に出した瞬間、シャンクスは目に見えて焦りを出した。
「・・・・・・アコ?何かあったか?」
ビールのグラスをガタンと強く置いて、箸の動きが止った。
「・・・・・・・・・・・・駄目なの?」
「俺は・・・・不安にさせてるか?」
「・・・・・・・・・・最近、携帯置きっぱなしにしないなあ、って思って」
シャンクスからしたらそんなことで疑われちゃたまらないと思う。
・・・・・・・怒られるのも、覚悟の上。
「そうか」
と思っていたら、シャンクスは難しい顔で一言呟いて。
「・・・・・シャンクス?」
「何があっても怒らないと約束出来るか?」
「な・・・・・に、それ」
予想していなかった言葉に私は絶句。
何それ、何それ。
「アコ、誤解はしないでくれ、俺は」
「もういい」
「いや、俺は」
何か言おうとしてるシャンクスの言葉がもう聞きたくなくて、
「もう寝る。おやすみなさい」
私はそのまま席を立って1人寝室に向かった。
・・・・・・・・泣きながら。
何あの態度。
・・・・・・・・・絶対黒じゃん。
流れる涙を袖で拭って、ベッドにダイブした。
「・・・・・・・・・・黒いのは謎の組織だけで十分だよ」
「いいや、グレイだ」
「・・・・・・・・・・・・・・何言ってんのシャンクス」
ノックもせず勝手に入ってきたシャンクスは訳わからないことを言いながら、
「ほら」
と自分の携帯を突き出した。
「悪かった。アコを傷つけた」
「・・・・・・・・・見たらもっと傷つく?」
好奇心と、恐怖心の戦い。
「悲鳴は上げるかもしれないな」
何処か困ったようにそう笑うシャンクスに、私は覚悟を決めた。
・・・・・・もう、受け入れよう。
どんなものがあっても。
私は姿勢を直して、座った。
「じゃあ・・・・・見るよ」
「ああ」
そしてそれは、メールでも着信履歴でもなく、待ち受け画面を見た時だった。
「な!・・・・・・何これ!!」
「・・・・・・・・・・・・・やっぱ怒るだろ?」
「怒る、っていうか・・・・なんで!?いつ撮ったの!?」
その待ち受け画面は、写真だった。
「この間仕事から帰った時、つい」
「・・・・・・・・・・恥ずかしすぎる」
私がシャンクスのシャツを抱きしめて寝ている姿。
っこんなの撮られた覚えない!
って当たり前か寝てたんだし・・・・!!
「頼む!消さないでくれ!」
「・・・・・・・・・・・もしかして」
「見られたら絶対消せって言われるだろうと思ったから・・・・・・見せられなかった訳だ」
はは、と照れたような笑みを浮かべたシャンクスに、私はどっと身体の力が抜けた。
「・・・・・・・・・・誰かに見られたら恥ずかしい」
「見せねェ!絶対!」
「ていうか何でこんな」
「可愛いだろ!?すげェ可愛い!」
・・・・・・・・・すんごい必死なんですけどこの人。
「・・・・・・・私、すっごい不安になった」
「・・・・・・・・それは、悪かった」
抗議の言葉を口にすれば、途端しゅんとなるシャンクスが可愛い。
「もう隠し撮りしないこと。・・・・その写真は誰にも見せないこと」
「約束する」
「・・・・・・・・・・・なら、許す」
そう言った瞬間勢い良く身体が後ろに倒れた。
正確に言うなら、倒された、だけど。
「不安にさせちまったからな、しっかり愛させてもらう」
「え」
「これからはいつでも好きな時に携帯も見ていいから。不安になったらいつでも言え」
「・・・・・・・・・・・うん」
それからシャンクスはいつも通り、
携帯を置くようになった。
待ち受けは相変わらずあの写真だけど。