短編①
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「大切な人との喧嘩がありそう。感情的にならないこと。1度出した言葉は戻りません」
朝食後の珈琲を優雅に楽しんでいたところ、隣に座ったサッチさんが突然おかしくなった。
「・・・・・・・いきなりどうしましたサッチさん」
まじまじとサッチさんを見つめると、にやりと笑った。
「新聞の占い。これ結構当たるらしいぜ?」
手に持っていた新聞を私に見せてくれたサッチさんに、どれどれと該当する記事に目を通す。
「え、ちょっとそれ私のことじゃないですか」
「だから言ったんだって。エースと喧嘩に気をつけなきゃな?」
「・・・・・・・・・・・・うーん」
正直、エースと喧嘩をあまりしたことがない。
そりゃ細かいのは何度かあるけど、ちょっとした言い合いで、だいたい私が謝るか、
私が泣いてエースが謝るかのパターンですぐ解決する。
「何?予兆あんの?」
「ないです・・・・・・けど」
「けど?」
最近もやもやが溜まってるのは事実、ではある。
「でもまあ、占いなんて当たるも八卦、当たらぬも八卦、って言いますし」
「そりゃそうだけど。でも気をつけるにこしたことはないと思うね俺は」
「・・・・・・・・・・・・はい」
ちら、と目の前に座るエースを見つめる。
・・・・・・・・・まだ寝てるよ。
そして寝てるエースの周りに、エースの寝顔をほほえましげに見つめる数人のナースさん達の姿。
最近の私のモヤモヤの原因、だ。
エースはモテる。
だって2番隊隊長だし強いし優しいし顔だってカッコいい。
加えて無防備に見せる寝顔が母性本能をくすぐる。
今私がエースの恋人だっていうのも信じられないくらいだ。
ふと、
「・・・・・寝てた」
エースが目を覚ました。
これはこれで、
「エース隊長ったら可愛いっ」
「ほら、食べかすついてるわよエース隊長」
ナースさん達が黙ってない訳で。
目の前で繰り広げられる光景に、私は深いため息を吐いて席を立った。
自分の部屋に戻って改めて出るため息。
ナースさん達に悪気がないのはわかってる。
ほとんどの人がエースに対して恋愛感情でないことも。
『ほら、エース隊長って1番若いじゃない?可愛い弟みたいなのよ』
と前に誰かが言ってたし、ナースさん達のエースを見る眼差しも確かにそんな感じだし。
・・・・・・・・でもそんな中、稀に混ざってる熱い視線。
エースもエースで、もうちょっと私のこと気にかけてくれてもいいのに。
なんて思ったところで、
コンコン、とドアのノック音が響いた。
「入るぜ、アコ」
聞き慣れた声と共に返事も聞かずに入ってきたのは、今まさに考えていたエースだった。
「・・・・・・・どうしたの?」
「その言い方、用がなきゃ来ちゃ行けねェみたいだな」
私の質問にエースはむっとした様子で。
・・・・・でも今の私はそんなエースに謝る気分じゃなかった。
さっきの光景が目に焼きついて、離れなくて。
「そんなことないけど・・・・さっきまでナースさん達と楽しそうにしてたから」
「してねェよ。お前だってさっきサッチにくっついてただろ」
「くっついてない」
「じゃあひっついてた」
「ひっついてない!」
「楽しそうにしてただろ?」
「してない!!」
お互い1歩も譲らず、声の大きさは増していくばかりだ。
「・・・・・ンだよむかつくなァ」
エースの口から出た低い声音に胸が痛むけど、私だって言いたいことある。
「エースだってナースさんと楽しそうにしてたじゃない!もうエースなんかっ」
エース、なんか。
そこまで言って脳裏に過ぎるサッチさんの声。
『感情的にならないこと。1度出した言葉は戻りません』
「・・・・・・・・・なんだよ」
「エースなんか・・・・・」
「・・・・・・なんか?」
「大好きなんだからバカー!!!」
「はァ!?」
面白いほど大きく口を開けて間抜け面のエースに私は更に続ける。
「だって好きなんだもん仕方ないじゃん!」
・・・・好きなんだから、
嘘でも嫌いなんて言える訳ないじゃない。
「おい、」
「ごめんね可愛くヤキモチも焼けなくてっ」
半分涙目になった状態で開き直る私。
ああ、ほんと可愛くないなあ。
ぷい、と横を向いた瞬間、強く腕を引かれた。
当然傾いた私の身体はすっぽりとエースの腕の中。
私を閉じ込めたエースは満足げに笑ってる。
「可愛いに決まってんだろ」
「は?」
「だから!アコは可愛いっつーの!」
「可愛くないってば」
「うるせェ、俺が可愛いって言ってんだから信じろ」
偉そうにそう言うエースの顔は、少し赤い。
「・・・・・何処が?」
「あの勢いでまさか大好き、って来るとは思わなかった。普通嫌い、って言うとこだろ?」
「・・・・言わないよ。言ったら絶対後悔する」
どんなに感情的になったって、何を言ったって、嫌いって言葉だけは使いたくないから。
それを言ったら全部終わっちゃう気がする、から。
「そういうとこ、すげェ可愛い」
「・・・・・・・・・・ありがと」
可愛いって言われたのはすごく嬉しい。
嬉しいんだけど。
「でもエースだってカッコいいしモテるんだよ?」
「んなこと言われてもなァ・・・・俺はアコしか見てねーし」
「エースあんまり好きとか言ってくれないし・・・不安になるっていうか」
エースと恋人同士になって初めて不安を伝えてみた。
重いって言われるならそれでもいい。
私はエースの次の言葉を待った。
心臓がばくばくと響く私の耳に聞こえてきたのは、
「っははは!」
・・・・・・・・・・・何故か、笑い声。
「やっぱお前可愛い。つーか不安なら不安ってもっと早く言えよ」
「え?何、どういうこと」
楽しそうな笑みを浮かべたエースは、言う。
「アコ全然妬かねェし、俺も不安になってた」
「えええ!?」
「悪かった。これからは気をつける。もっと側に居る」
そして目を細めて優しく微笑む。
「・・・・・・・・・・エース大好き」
そんなエースがカッコ良くて、思わず鍛えられた筋肉に抱きついた。
「俺は愛してる、だけどな」
「じゃあ私も愛してるっ」
「ははっやっぱ可愛い」
「・・・・・・・・・・・・・・ごほ」