いつかまた
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「えっへっへえええ」
「・・・・・・・ご機嫌だねい、アコ」
今日のお休みは、とっても嬉しいお休み。
「昨日発売日だったんで、会社帰りに買ってきた雑誌があるんですよー」
「面白いのかい?」
「好きな俳優さんが載ってるんです!もーすっごいカッコ良くて!」
がさごそと鞄から取り出したるは、
輝く表紙。
「この表紙の・・・・この人です!」
「・・・・・・・アコはこういうのが好きなのかい?」
「大好きです!私の写真コレクションも見ますか!?」
「・・・・・・・・・・・・コレクション?」
怪訝な顔のマルコさんを他所に、
私のテンションはヒートアップ。
引き出しから取り出した私の、
愛する彼のアルバム数冊。
そして、キーホルダーにうちわに人形に・・・・とたくさんのグッズ達。
「じゃじゃん!」
「・・・・・・・・・・・・これは」
「これは去年のイベントの時でーこれはその前のファン同士のイベントで買ったやつです」
それからこれはーと説明しまくってるうちに、
気づいた。
マルコさんの困惑の顔。
冷めた視線。
「・・・・・・・・アコ、よい」
「はい?」
「無駄遣いしてんじゃねェかい」
「え」
む・・・・・無駄。
マルコさんは確かに今、そう言った。
「こんなもん買うより食費やら設備やらに回した方がいい気がするけどねい」
何処か呆れたようなマルコさんの顔に、
頭にずどんと隕石が落ちたような衝撃。
「む、無駄じゃないです!だって大好きなんですもん!」
「にしたってこりゃ買いすぎだろい?」
「でっでもでも・・・!」
「もっと健康に気を遣った飯買うとかした方がいいよい」
「・・・・・・でも私なんてまだ少ない方ですし」
「もう少し自分の環境を理解した方がいいんじゃねェのかい?」
「でも!私のお金ですから!」
ついかっとなってそう怒鳴って、
私はそのままトイレへと駆け込んだ。
・・・・・・・・・・正論過ぎる。
マルコさんのほうが、絶対正しい。
わかってるから、反論できなくて。
悔しかった。
・・・・・・はあ。
どうしよう。
マルコさんと、初めての喧嘩。
1人は・・・寂しいけど、
誰かと一緒っていうのも結構大変なんだなと思い知った。
・・・・いつまでもトイレにこもってる訳にはいかない。
本当にどうしよう、と迷ってると、
バタン、とドアの音がした。
少し迷ってトイレから出たら、
「・・・・・・・・・・まるこさん」
1人ぼっちに、なってた。
・・・・出てっちゃったんだ。
もう・・・・・・帰って来ないかな。
こんな、別れになるなんて。
どうしよう。ちょっと泣きそうだ。
ごめんなさい、って。
・・・・・・・・言えば良かった。
狭い狭い部屋で、
1人。
あんなに読みたかったはずの雑誌に手を伸ばしたのに、
ページをめくる気にはなれなかった。
・・・・・・・・・ついさっきまで、
あんなにカッコ良く見えたのに。
大好き、だったのに。
見る気、しない。
「・・・・・・・完全に自業自得じゃんこれ」
呟いた途端、がたん、とドアが開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・マルコさん」
玄関に立っていたのは、間違いなくマルコさん。
マルコさんは私と視線がかち合って、気まずさそうに視線を逸らした後軽く舌打ちをした。
「・・・・・・・・・・・・あの」
ごめんなさいって言わないと。
そう思った私の目の前に突き出された袋。
「・・・・・・何ですかコレ」
「さっきは・・・言いすぎたよい」
「え?」
「世話になってる身で余計なこと言っちまった」
「そそそそんな!私が悪かったんです!マルコさんは悪くないです!!」
「・・・・・俺が言いたかったのは、よい」
「・・・っはい」
「もっと自分を大事にしろってことだい」
「・・・・・・・・・有り難う、御座います」
マルコさんのあたたかくて優しい言葉にやっぱり泣きそうになったら、
「これ・・・侘びだよい」
「・・・・・・・・・あ。美味しそう」
コンビニの、プリン。
「え、あれでもお金」
「もらったやつ、使っちまったよい」
何かあったらこれを使ってください、と渡したお金。
使ってくれたらしい。
私の、為に。
「マルコしゃぁぁぁん!!」
涙がぼろぼろ零れて、
鼻水が垂れそう。
「・・・・・・・・・・鼻水」
「・・・・あい」
ティッシュをとって、ちーん。
「お見苦しいとこをお見せしました・・・ハイ」
「・・・・飯、作るよい」
マルコさんは笑って、台所に向かう。
「あああ!私がやります!今日くらい!」
「いいから、座ってろい」
・・・私こんなに甘やかされていいんだろうか。
申し訳なく思いつつ、マルコさんの料理をしてるとこを拝見。
「・・・・座ってろって言ったろい?」
「や、どんな風にしたらあんなに料理がお上手になるのかと思いまして」
参考までに。
「・・・・・・集中出来ねェよい」
「そこを何とか少しだけ・・・・・あっ」
マルコさんが視線を鍋から外した瞬間、
油が跳ねた。
そしてそれは、
マルコさんの腕に飛んだ。
「マルコさん水出して!冷やしてて下さい!!」
慌てて戸棚にかろうじてある救急箱を持って戻ってきたら。
「・・・・・・・・マルコさん?」
普通に、料理してる。
え、あれ。
「火傷なんてしてねェよい」
「・・・・・でもさっき」
「治った」
「・・・・・・・・・・・・・マルコさんて実は手品師だったんですか」
驚きのあまり自分でも何言ってるかわかんない。
そんな私にマルコさんは仕方なさそうにため息を吐いて、火を止めた。
そして、
「・・・・・・・これで、治るんだよい」
「・・・・・・・・・・・・・・きれ、い」
マルコさんの腕から青い炎。
「だからアコに心配されるようなこたァ・・・・アコ?」
炎が消えたのを見て、私は腕に絆創膏を貼った。
「人の話聞いてたかい?」
「おまじない、です」
「・・・・まじない?」
私の行動に驚くマルコさんに、私は笑った。
「もう火傷とか、怪我しないように」
「・・・・・・すぐに治るんだよい」
「それでも、私にとって目の毒です」
・・・・それに、すぐ治るんだとしても、一瞬は痛いはずだ。
だから。
「・・・・・・・アコ」
「睨んでも駄目ですよ。1日はしてて下さいね」
「・・・・・・・わかったよい。ありがと、よい」
照れくさそうに笑ったマルコさんが可愛くて。
・・・・・・・カッコイイなぁ、と思った。
「どういたしまして!じゃあ私もお手伝いします!」
ここで引いたら女が廃る!
「・・・・・・じゃあこれを、頼むよい」
「お任せくださーいっ!」
たまに面倒だけど、
辛いけど。
やっぱり1人じゃないって、嬉しい。
・・・・・・・楽しい。
+1人じゃないって 終+