いつかまた
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朝ご飯は、一緒に食べたんだ。
たいしたことは話さなかったけど、
いつも通りに、食べた。
今日何処に行くとか、そんなことは話してなかったけど。
・・・・・・・・・・何だか突然過ぎて、
胸にぽっかりと穴が開いた気分。
朝ご飯終わって、片づけを一緒にして。
ちょっとお風呂に入ってる間に、
マルコさんは居なくなってた。
この家の何処にも、居ない。
・・・・・・急だけど、マルコさんこっちに来たのも急だったから。
どっかの部屋に行こうとした瞬間に戻っちゃったのかな。
案外そうなのかもしれない。
そっか・・・・・そっかぁ。
良かったねえマルコさん。
良かったよ、うん。
大事なお仲間さんのところに帰れたんなら。
何より、だ。
あー・・・・・・今日からまた、1人ご飯かあ。
また冷凍物でいいかなあ。
半額セール次いつだっけ。
・・・・・・・・・思い出に写真の1枚くらい撮っておくんだったかな。
・・・・・・・・・・・・今日、何しよう。
呆然とする私の耳に、
「ああ、もう出たのかい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
もう聞き慣れた声、聞き慣れた語尾。
「早かったねい」
「・・・・・・・・・まる、こさん?」
「何だい?」
「・・・・・・・・いなく、なっちゃったかと」
呆然としたまま呟く私にマルコさんは苦笑した。
「海を見に行ってたんだよい」
「うみ・・・・・海って、え!?だって近くても片道30分はかかりますけど!?」
「そりゃ歩いたらの話しだろい?」
「まさかのタクシー!?」
駅まで歩いて行って電車で行ったってこの時間じゃ帰って来れない。
「飛べばたいしたことねェからよい」
「・・・・・・・・・・・・・ぱーどぅん?」
「・・・・・・・アコは時々わからねェ言葉を使うねい」
いやいや、わからないのはマルコさんだと思いますハイ。
「・・・・・・・飛ぶんですか?」
「飛ぶよい」
「・・・・・・・誰が?」
「俺が」
「何処を」
「空に決まってんだろい」
・・・・・・・・・そういえば前にそんなこと言ってた、ような。
「海賊って空飛べるんですかぁ!?」
「俺は不死鳥だからよい。目立たねェようにはしたから大丈夫のはずだよい」
「不死鳥・・・・・・?」
鳥?マルコさんて鳥なの?
「マルコさん人間じゃなかったんだ・・・!」
驚きのあまり素直に口にしたら、
軽く頭を小突かれた。
「いたっ」
「人間に決まってんだろい。・・・まあ、呪われちゃいるがねい」
そう言ってマルコさんは、少し悪い人の顔。
「ま・・・・・まさかき・・・・キスで人間に戻るとかですか!?」
「・・・・何言ってんだいアコ」
今度はマルコさん呆れ顔。
「あれ、でも今は人間・・・いやでも最初会った時からずっと人間だったし・・・」
キスされると鳥になるの?
・・・・どっちにしても、
「すごいんですねーマルコさんて」
「・・・・・・・・そうかい?」
「海賊だし家事も得意だしその上飛べるなんて!」
「戦闘には便利だねい」
「おお・・・・」
海賊っぽい発言にちょっと感動。
・・・・・・っていうか、
さっきまでの胸の喪失感が一気に消えた。
マルコさんと、話しただけで。
「することもねェし海でも行ってみようかと思ったが・・・悪かったねい、黙って行っちまって」
「いえいえ、ご無事で何よりです」
「心配かけちまったみたいだねい」
「あ。・・・・えーと心配はしてなかった、です。帰れたのかな、良かったなって。・・・・でも」
でもそうだよね、別の世界に行っちゃう可能性だってあったんだよね。
でもそんなこと考えなかった。
ただぼんやり良かったなあ、っていうのと、
「寂しいな、ってちょっと思っちゃいました」
「・・・・やっぱりアコは変わってるねい」
マルコさんと一緒、楽しいから。
本当はそう言いたかったけど、言ったらマルコさん気にさせちゃうと思ったので言わないでおく。
・・・・マルコさん、真面目で優しいから。
海賊なのに。
「ちなみに何か掴めました?」
「いいや、何も」
「・・・・・・そう、ですか」
「ただ海がねェのが落ち着かないんだよい」
「あー・・・・なるほど」
でもさすがに海のあるとこに引っ越す訳にはいかないしなあ。
「あ、じゃあ水族館行きますか今日!」
「水族館?」
「海とは違うけど、気分転換になるかもですし」
思い出しちゃって寂しいんじゃないかと思ってたけど、そういうことなら。
ということでやって来ました水族館。
といっても地元のそんなに広くないとこだけど(入場料も安い)。
「こんなところがあるんだねい・・・・」
マルコさんは感慨深そうに、でも何処か嬉しそうにそれなりに大きい水槽を眺める。
「海で泳いでたらこんな感じなんですかねえ」
「・・・俺は泳げねェから、わかんねェよい」
「・・・・・前言ってましたもんね」
「悪魔の実食ってるからよい」
「悪魔と契約交わしたんですか!?」
「・・・・・・・まあ、似たようなモンだい。能力を得る代わりに海に嫌われる」
そう言ったマルコさんは寂しそうに見えた。
・・・・・海、大好きなのに、
海に嫌われるなんて辛いんだろうなあ。
「・・・・海は、何でも受け入れてくれます」
「・・・・アコ?」
「体質的には駄目でも、マルコさんの海を好きって気持ちは受け入れてくれますよ!」
「・・・・・・面白いことを言う、ねい」
「私も海のように広い心で!マルコさんを受け入れますからね!」
寂しいとか、悔しいとか苦しいとか。
そういうのも、全部。
受け止めてあげたいなあ。
「・・・・・そんなお人好しだといつか大変な目にあうよい」
「大丈夫ですよーちゃんと受け入れる人は選びますから」
「こんな得体の知れねェ海賊受け入れていいのかい?」
「マルコさんの作ってくれるご飯美味しいからいいんです」
「・・・・・・・そんな理由でいいのかい」
「ご飯を美味しく作れる人に悪い人はいません!たぶん!」
家事もきっちりこなすし。
「・・・・・・・・お前さんは、まったく」
くくっ、と笑うマルコさんに、
「どんと来いです!!」
お金はないですけどね!
と言って、2人で笑った。
私達の後ろで、ペンギンがどぼん、と水の中に入った音がした。
水のように、
海のように。
マルコさんを癒せたら、いいなあ。
と思う。
+海に 終+