鏡花水月、のように
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「来ないんですか?」
「ああ、来ないよい」
海軍は攻めてこない、とマルコさんが言った。
「良かった・・・・・・でもなんでわかるんですか?」
「さっき聞いて来た」
「・・・・・・さっき?」
「潜入はしたが盗むような情報はなかったからねい」
「いやいやそういう問題じゃないです。さっきて」
「飛べば時間はかからねェからよい」
いやいやいやそこでもないです問題は。
海軍の船にそんな簡単に行って帰れるなんて・・・・!!
さすがマルコさん。
私は恐ろしい人を恋人にしてしまったらしい。
「でっでももう情報集める必要なくなりましたね!?」
「油断はしないでおくにこしたことはねェ」
「・・・・海軍じゃなくて」
「他にあったかい?」
「・・・・私を帰す方法」
おずおずと伝えればマルコさんが笑った。
「いや・・・・まだ探す」
ガン。
大きな衝撃を受けた。
「・・・・・・・・・・・ひどいですマルコさん」
やだちょっと泣きそうよ。
「勘違いするなよい、アコ」
マルコさんは変わらず楽しそうに笑ったまま、
私の髪をくしゃくしゃに撫でた。
「・・・・・私を怒らせたいんですか泣かせたいんですかどっちですか?」
「もう帰れとは言わねェ」
「・・・・・え、でも、じゃあ」
何で。
「念の為だよい」
念の為て。
「アコがこっちに来たのは俺が引っ張ったからだが・・・・俺がそっちに行った原因もわかってねェだろい?」
「そう・・・・ですね」
「また誰が何処に行くかわからねェままじゃまずいんだよい」
ああ、確かに。
「また俺が何処かに行くことにでもなったらアコを泣かせちまうからねい」
「そうですね。泣きますね、大泣きです」
大号泣ですね。
「そうならない為に調べ続ける必要があるんだい」
「・・・・なるほど。さすがマルコさん」
常に先のことまで考えてるんだ・・・!!
「アコには敵わないよい」
「・・・・え、そうですか?」
どのへんが?
私めっちゃ頭悪いんですけど。
「たいしたもんだい」
・・・・・マルコさんの誇らしげな顔が嬉しくて。
「・・・・好きです」
って思わず呟いたら、
「知ってるよい」
・・・・そっけないよね。
もう両想いだっていうのに。
「・・・・俺も好きだよいって言ってくれないんですか?」
「前に言っただろい?」
「今」
「・・・・・そんな簡単に言われて嬉しいかい?」
「マルコさん限定で嬉しいです」
「好きだ、アコ」
「・・・・・・・ふぐぅ」
・・・・幸せそうな笑みで、
よい、もなく。
名前を呼ばれて。
・・・・・・・・・・やっぱりマルコさんの大勝利じゃないか。
「・・・・マルコさん」
「何だい」
「・・・・ずっと、好きです」
「そりゃ光栄だねい」
「・・・・・・・・ずっと、一緒に居たいです」
「居ればいい」
「・・・・・・・・・マルコさん」
ああ、駄目だ私。
「・・・泣くなよい、アコ」
マルコさんが困ったように笑った。
・・・・零れ落ちた涙は温かくて。
しょっぱい。
「だって・・・・マルコさんが優しくて・・・・っ」
思わず溢れた気持ち。
が。
ごつん。
いきなり頭に軽い衝撃。
「いつも優しくないみたいな言い方だねい?」
「・・・・・・・いつも優しいですけど」
「けど?」
「優し過ぎるから」
「・・・・そうかい?」
とぼけるマルコさんに私は思いっきり笑って思い切り抱き着いた。
抱き締め返してくれた腕が、嬉しい。
「いつも優しいマルコさん。いつも大好きなので、いつも・・・・いつまでも側に居て下さいね」
「・・・ああ、離さねェよい」
あの時、私の家に来てくれたのがマルコさんだったから。
腕を引っ張ってくれたのがマルコさんだったから。
今ここにいてくれるのが、マルコさんだったから。
私は今笑っていられる。
鏡花水月、のように。
ずっと幻のような人だと思ってた。
・・・・触れると確かにそこにいて。
ぬくもりがあって。
花も月も。
幻じゃない。
今ここにいると私と、
マルコさん。
・・・・今確かに、ここに幸せがある。
+確かにここに 終+