鏡花水月、のように
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「目ェ閉じろよい、アコ」
「はい・・・・っ」
柔らかな笑みを浮かべたマルコさんの手が私の頬に伸びる。
目を閉じてすぐに私の唇に触れたそれは軽く、優しい。
ちゅ、なんて可愛いリップ音を残して離れたと思ったら、
今度は優しく抱きしめてくれた。
「愛してるよい、アコ」
「私の方が愛してますけどね!」
「は、そういうことにしてやるよい」
ああ、幸せだなぁ私。
こんなに幸せでいいんだろうか。
・・・・・・夢なら、覚めないで欲しいなあ。
「・・・・・覚めちゃった」
「飯ならまだだろい?」
ベッドの中で目が覚めて思わず呟いたら、
マルコさんが呆れたように声をかけてきた。
・・・・ねえこの人もう着替え済ませてるんですけど。
早いなー。
「・・・・・いい夢だったんですよ」
「・・・・へェ、どんな夢だい」
「ふわっとしててー優しくてー」
「・・・・具体的に言えよい」
「でも私が望んでるのはもっと不愛想で力強い感じなので、夢なんだなあって感じです」
夢の中のマルコさんも素敵だったけど。
現実のマルコさんが好き。
愛想がなくても、
優しいキスでなくても。
・・・・・というか、
私の方が愛してますけどね!なんて言ったら、
現実のマルコさんには殴られそうだ。
「わかってるじゃねェかい、夢は所詮夢だよい」
・・・現実のマルコさんの冷たい言い方にちょっと傷ついた。
「・・・・マルコさん冷たいー」
「現実の飯も冷めるよい」
「大変っすぐ着替えます!」
「先に出てるよい」
「・・・・・はぁい」
別に居てくれてもいいのに。
・・・・って言っても毎回マルコさん居ないんだけど。
でも着替えを済ませて部屋を出るとちゃんと、
「まーるこさんっ」
ちゃんと私を待っててくれる。
まあまだ私が迷子になる可能性がゼロじゃないってこともあるんだろうけど。
「行くよい」
「マルコさんマルコさん」
「・・・・朝からうるせェよい」
腕を組もうとしたけどするりとすり抜けられてしまった。
「・・・・おはよう御座いますって言おうとしただけなのにー」
今日まだ言ってなかったから。
「んなの気にしてねェ」
「挨拶は大事ですよ!」
「顔見れりゃそれでいい」
・・・・・・・・マルコさんらしいなぁ。
いっそ私の方からおはようのキスとか仕掛けてみようかしら。
・・・・・スルーされるに100票。
あれ、でもなんか。
「・・・・マルコさんは悪い夢でも見ました?」
「見てねェよい」
マルコさん何だかご機嫌ななめ?
というか怒ってる?
「怖い夢とか!」
「見てねェって言ってんだろい」
「えー・・・・・」
納得いかない。
じゃあ何でこんなに冷たいの。機嫌悪いのさ。
昨日の夜は普通だったし、
朝起きた瞬間までもたぶん普通だった・・・・よね?
・・・・何でいきなり不機嫌に?
「私に会えなかった間私の夢見たり」
「・・・・してねェよい」
「私は見てましたけどね」
結構しょっちゅう。
食堂でご飯をもらって、
「くだらねェこと言ってるとホントに飯が冷めるよい」
「いただきます!」
今日はピザ。
うーん、美味しい。
紅茶も絶品。
「幸せ・・・このまま部屋戻ってまた寝たら夢の続き見れますかねえ」
「・・・・・そんなにいい夢だったのかい」
「そりゃあもう。マルコさんとラブラブでした」
「・・・・はァ?」
何言ってんだこいつ、みたいなマルコさんの顔にちょっと傷つく。
「マルコさんが優しくキスしてくれたんですよう。愛してるーって言ってくれたし」
「・・・・それが今朝の夢だってのかい?」
「そうですよ」
こくりと頷けば、
はぁぁぁ、とそれはそれは深いため息が聞こえた。
「阿呆くせェ」
「いいんです阿呆で」
恋する阿呆なんで。
ふんだ、と拗ねた私の頬にそっとごつい手が添えられた。
「え、マルコさん?」
「アコ」
ま・・・・っまさかキス・・・・!?
・・・・・いや、ないな。
マルコさんに限ってそんな期待に応えてくれる訳がない。
「・・・まさか、マルコさん」
とはいえ真剣なマルコさんの眼差しにドキドキ。
・・・・でもここで気づいてしまった。
「・・・・よい」
「・・・・・・食べカスついてます?私」
マルコさんの真剣な眼差しが私の頬に注がれていることに。
「・・・目閉じろよい」
「は、い!?」
「面倒なんだよい」
そう言ってマルコさんはそのまま私の頬を、
ぺろり。
と舐めあげた。
「・・・・・は」
「とれたよい」
「・・・・・・・・・・・・・・何ですか今の」
「食いカスをとってやったんだよい」
感謝しろ、と言わんばかりに偉そうなマルコさん。
いやでも・・・・でもさ!!
「唇にして欲しかったぁぁぁ!!」
「・・・・そこかよい」
「惜しい!!」
くっ、とマルコさんが噴出した。
「ったく、ほんとに想定外だねいアコは」
「・・・・てへ」
「夢の続きにはなったかい?」
「夢より現実がいいなって思いました!」
惜しかったけど!!
・・・・・・とりあえずマルコさんの機嫌も直ったし、
いっか。
・・・・愛してる、とは言ってくれなかったけど。
+現実と夢 終+