いつかまた
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トントントン、と私の家にはあまりない音が響く。
マルコさんが後ろから心配そうに見ている。
・・・・・・・・・・そんなに心配しなくても。
「大丈夫ですよマルコさん!」
振り返って笑ってみせるけど、
「・・・・・料理、苦手じゃなかったのかい?」
じろ、と睨まれた。
「今までは1人だったから甘えてましたけど、いい機会です!栄養偏らないように!」
「心がけは立派だけどよい、アコ」
「はい!心だけでも!」
「・・・・手先は、駄目駄目じゃねェかよい」
「・・・・・・・はい、ですから心だけ!」
ぼろぼろの、ネギ。
焦げた卵焼き、のようなもの。
・・・・・・・・今日は休みだし、
ゆっくり料理でも、と思ったんだけど。
見事に失敗しまくり。
「俺がやるよい、見てられねェ」
「え、マルコさん料理出来るんですか?」
「海賊だからねい、適当には出来るよい」
「おおお・・・!すごい!」
「・・・・そんなんでよく料理するなんて言ったねい、アコ?」
う・・・・!
言えない・・・・・。
絶対言えない。
お金がないから節約なんです・・・!とは!
働いてるんだから大丈夫ですよーなんて気軽に言った私としては!
絶対!
「私は海賊にはなれませんねえ・・・・」
はあ、とため息交じりに呟いた言葉に、
「海賊になりたいのかい?」
意外そうにマルコさんが返してきた。
「うーん・・・・なりたくはないですが取材はしてみたいです」
「取材?」
「海賊の生活ってすっごい興味ありますから!!未知の世界!」
怖いけど、マルコさんが居るなら海賊の世界っていうのも行って見たい気がする。
「・・・そんなにいいもんでもねェよい?」
「うん、でも知らない世界なので。話しだけより見てみたいなーって。無理ですけど」
「こっちには海賊が居ないんだったねい」
「居なくはないですが、ほとんど見かけないですねえ」
「・・・・・・・平和でいいんじゃねェかい」
「まあ、事故も殺人も普通にありますけどね」
「・・・・・・そんなに平和でもねェってことか」
「ま、そんなもんです」
話しながらさくさくと手際良く包丁を動かすマルコさん。
「・・・・こんなもんかい?」
「す・・・素晴らしいです・・・!!」
ぐぅの音も出ない程素晴らしい出来。
2人で作った朝ご飯。
食卓に並べて、
「いただきまーす!」
ご挨拶。
そしてお箸を手にとって、マルコさんの作った料理をぱくり。
「・・・・・・おいし!」
目が覚める程美味しい。
何コレすごい。
「サッチの方が美味いけどねい」
「サッチ?」
にっちもさっちも?
「・・・・仲間で、コックだよい」
「へーすごいですね!マルコさんのも十分美味しいのにー」
美味しい美味しいと次々に口に運び、
「ご馳走様でしたっ!」
幸せな休日の朝食。
「そういえばマルコさん、似合ってますその服」
私が昨日買ってきた服たち。
男の人の服を買うのは初めてだったけど、
楽しかった!
マルコさん背高いしスタイルいいから。
子供に服を買う親の気持ちってこんなかなあ、なんて思いながら選んだ。
・・・・・・まあ、そのおかげでお金が消えて行った訳ですが。
「気を遣わせちまったねい」
「いえいえー本当は一緒に選んだほうが良かったのかもしれないですけど」
「いや、助かったよい」
マルコさんの身体には、
正面にでっかい刺青が彫ってある。
十字架っぽいもの。
うちに現れた時からずっと、前をはだけさせてるからにはきっと見せたいんだろうなあと思った。
もしくは、見ていたいのか。
とにかく大事なものなんだろうから、
今のファッションと変わらないようにする為に、
前が開くタイプの服を買ってきた。
それをマルコさんはとっても喜んでくれた。
「さて今日はどうしましょう、異世界に行けそうな場所行ってみます?」
「そんなところがあるのかい?」
「近くはないですけどね。異世界行けたとしてもマルコさんの世界に帰れるかどうかもわかんないですし・・・」
危険な賭け、になっちゃうんだけど。
「・・・異世界、ねえ」
うさんくさそうに呟くマルコさんは、
少しだけ考えるようにしてから、
「今日はやめておくよい。これ以上変な世界に飛ばされたくはねェ」
と言った。
・・・・・・・・・・ここ、変な世界ですかね。
マルコさんの世界ってどんななんだろう。
聞かない、けど。
聞いたらきっと、思い出しちゃうし。
寂しいと・・・・思うし。
「それよりこの間の本の続き、あるかい?」
「ありますよー。それっぽいの結構持ってるんで、どうぞどうぞ」
「片付け終わったら読ませてもらうよい」
「・・・・・・・・すみません助かります」
マルコさんの主婦力発揮。
片付けは当然のように、
料理も出来ちゃうんだもんなあ。
海賊ってすごいわ。
いやいや、私も一応女。
やってもらってばかりという訳にはいかない。
「マルコさん手伝いますー!!」
2人で片づけをして、
お昼ご飯前の読書タイム。
マルコさんはどうやら本を読むことが好きなようで。
ぼろぼろの座布団に並んで座って、
お互い無言。
・・・・・・・何か改めて考えると、
私の家に男の人が居て、
しかも海賊で。
一緒に住んでて。・・・・って。
変な感じ。
・・・・・ぜんぶ、夢、だったりして。
なんて考えてたら、
眠くなってきて。
気がついたら目を、閉じていた。
「・・・・・・・・・・は!」
ふ、と目が覚めた。
「・・・・・・・・私!今寝てました!」
こんなつもりじゃなかったのに!
慌てて叫んだら、マルコさんがククッ、と笑った。
「見てたからわかるよい」
妙に楽しそうにマルコさんに、
「・・・・・・よだれ垂らしてました?私」
「いや、ただ・・・似てると思ってねい」
「似てる?」
「エース・・・仲間、だよい」
「どの辺が似てます?」
「食ってる最中に寝ちまって、途中で起きるんだよい、今みたいにな」
そこまで言われて初めて気がついた。
もしかして私今・・・・マルコさんの肩に頭、乗せてた・・・!?
「ま・・・まるこさん?」
「何だい」
「もしかして今、私マルコさんの肩に・・・寄りかかって、ました?」
「重くはねェから大丈夫だい。気にすんな」
平然と返してくるマルコさんに、
私の頭は真っ白。
「いや頭って重いんですよ!だから肩こるんですよ!」
「・・・・変なこと気にするんだねい、アコは」
なんて苦笑するマルコさんが・・・・私にはよくわかりません。
+何が変か 終+