鏡花水月、のように
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「平和ですねえ・・・・」
おやつに、とサッチさんが持ってきてくれたクレープが美味しい。
「戦闘が起きて欲しいみたいな言い方だねい」
「や、そういう訳じゃないですけども」
マルコさんが書類から顔を上げてこっちを見た。
「やっぱり戦いは怖いかい?」
「怖いですよそりゃ・・・・誰かが傷つくんですもん」
「・・・・自分が傷つくのは考えねェのかい?」
「あ。いや・・・・・・・・考えてませんね」
マルコさんが居れば無敵、ってのは甘い考えかしら。
「爆音にすぐ隣に打ち込まれる銃弾砲弾、それが怖くないって言えるのかい?」
想像して、それだけで顔から血の気がさーっと引いていく気がした。
「・・・・・・ですね」
「・・・・これでわかっただろい?」
「はい。私鍛えないといけないですね!」
「・・・・はァ?」
「まずこのたるんだお腹をどうにかしないと駄目ですよねー・・・・・まず筋トレかなぁ」
のんびりクレープとか食べてる場合じゃない。
「おい、アコ」
「あと俊敏さ!?うわー自信ないかも。あ、見極めるには視力も必要ですか!?」
眼鏡こっちの世界で作れるかなぁ。
・・・・とりあえずは、
「マルコさん!」
「・・・・何だい」
「長い目で見て下さい」
「・・・・・・・何を」
「今スグに一石一兆で強く、とかは無理なので!」
長い目で見て欲しい。
マルコさんは額に手をやり、そのままぐぐっと身体を上に逸らした。
「・・・・・マルコさん?」
それから身体を戻したマルコさんは、
ぐわし。
「ちょっ」
私の頭を鷲掴み。
そして、わしゃわしゃわしゃ。
「ぎゃー!!!今まさに襲われてるんですけど!逃げられない!!」
「逃げてみろよい」
「に・・・・・・っ」
「・・・・に?」
「・・・・・・・逃げませんよ。髪は後で直しますもん」
よく考えてみればマルコさんが構ってくれてるのに、逃げるなんて勿体ないことは出来ない
。
だってマルコさんは敵じゃないもん。
髪ぐしゃぐしゃ攻撃は嫌だけども。
「へェ、こうしても、かい?」
「ほ?」
頭にあった手が突然下に降りた、と思ったら。
ぎゅう。
密着した身体。
マルコさんの鍛えられた胸がめめめめ目の前に・・・・・っ!!
マルコさんの腕は私の背中!
「これで完璧に逃げられねェだろい?」
「・・・・・甘いですよマルコさん」
「あ?」
「北風と太陽っていうのがあるんです」
「・・・・どういう意味だい?」
「ん」
「・・・・・・・っ!!」
上を向いて目を閉じて。
唇を軽く突き出してみた。
途端。
結構な力で身体を押されて、
私の身体は自由になった。
・・・・・・うーん。
「・・・・予想通り過ぎてつまんないですマルコさん」
「どういうつもりだいアコ!」
「逃げられちゃいましたよ、私」
指摘したらマルコさんは顔を真っ赤にして、
「・・・・好きにしろい」
拗ねたように呟いた。
「はーい好きにしまーす」
好きにしろ、というので。
させて頂きます。
今度は私からマルコさんの大きい身体にぎゅ。
しがみついた。
「んなっ、」
「・・・・マルコさん・・・・好き、です」
好きです。
ねえ、マルコさん。
私の気持ちに対する貴方の答え、
そろそろ聞いてもいいですか?
「・・・・アコ」
「・・・・・っはい」
どきどきどきどきどき。
ばっくん、ばっくん。
「俺は、」
コンコン。
丁寧なノックの音に私から離れた。
「・・・何だよい」
「オヤジが呼んでる」
そう言って顔を覗かせたのは和服美人。
でも確かこの人男の人なんだそうで。
「今行くよい」
「マルコ、お前さんじゃねェ」
「・・・・どういうことだい、イゾウ」
「アコを呼んで来い、とのことだ。保護者つきでもいいそうだ」
ククッと妖艶な笑みを残して、
じゃあな、とイゾウさんは行ってしまった。
「・・・・一緒に行きます?」
「・・・・行って来いよい」
「・・・はーい」
・・・・・ああ、いいところだったのに!
「いいところだったんですよ」
「グラララ、そりゃあ悪いことをした。顔が見たくなったのさ、可愛い娘のな」
「可愛いだなんてお父様・・・!」
「しかしそうだな、俺から言うことがあるとするなら、こういう言葉がある」
「お聞きします!」
「押して駄目なら引いてみろ、だ」
「あー・・・・・それはアレですね、引いて寂しさを味わえ、と」
確かに押しすぎてたかもしれないとは思うけど。
「ちったァ効果あるんじゃねえのか?」
「引いてもマルコさんが寂しいと言うとは思えないですけど・・・思わせたくも、ないんです」
「恋にゃ駆け引きも必要だろう」
「・・・好きな人には笑ってて欲しいです、ごめんなさい」
「駆け引きは苦手か」
「・・・・苦手です」
恋の駆け引き、なんて大人なことやってみたい。
・・・・もう、大人なのに情けない。
「グラララ・・・!あいつにゃそれくらいでいいのさ。お前らしく、まっすぐにぶつかってやれ」
「・・・・っはい!」
お父様大好き!
・・・・・それから、
呆れたマルコさんが迎えに来るまで。
お父様との恋バナは続いた。
ああ、楽しいなあ。
+恋の駆け引き 終+