鏡花水月、のように
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「マルコー航海士が呼んでんぞー」
「今行くよい」
・・・・・原因不明。
結局何がどうなってああなったのかはまったくわからねェまま。
どうして俺はグランドラインとはまったく違う世界に行ったのか。
なぜアコの家だったのか。
・・・・なぜ、戻って来れたのか。
そのタイミングがあの時だったのか。
全てわからないまま、モビーでの日常を取り戻した。
妙な女だったよい。
・・・・・1人で暮らしてたくせに、
家事全般苦手で。
寂しがり屋のくせに強がりで、
能天気で、
不器用で、
・・・・無駄遣いで。
ほっとけない女。
怖がりのくせに海賊に興味がある、と言っていた。
今頃何してるだろうかとふと思い出す。
怪我してねェだろうな、とか。
変な男に絡まれてたりしてんじゃねェか、とか。
もう会えることはねェだろうが。
・・・・もし会えるならあの間抜け面がいい、と思っちまうよい。
不思議なことに、
部屋にある鏡はたまにアコらしき姿を映す。
それは笑っていたりこちらを見ていたりいなかったり様々な姿。
それがあちらでのアコの姿なのか、
俺の願望を見せているだけなのかはわからねェが。
・・・・・たまに見せる泣き顔を見る度に思う。
ンな顔してるくらいならこっちに来やがれってんだい。
飯なら作ってやるし、話しだって少しなら聞いてやる。
・・・・・俺の側に、来いよい。
アコ。
「・・・・・アコ」
名前を呼んでも反応はない。
こっちの声は届かねェのかい。
・・・・・悔しいねい。
さて、航海士んとこに行ってくるか。
「女と2人きりで何もしなかったとか嘘だよなマルコ」
「・・・・・馬鹿か」
航海士との話しが思ったより長引いたせいで、
遅めの昼食はサッチの昼飯と重なった。
「あり得ねェだろ!?」
「あり得るだろい」
「ねェよ!何、そんなに魅力なかったのその女の子」
「・・・・・そんなんじゃねェよい」
魅力云々の問題じゃねェんだよい。
「じゃあ何だよ」
「世話になってる身だよい、恩を仇で返すような真似はしねェ」
「ってもなー俺なら我慢出来ない」
「お前と一緒にすんない」
・・・・笑った顔が見れて、
一緒に酒が飲めりゃそれで良かった。
それ以上も・・・・まぁ、したことはあったが。
「どんな子だったんだよ」
「・・・・料理が」
「最高に美味かった!?」
「最高に下手だったんだよい」
「あ・・・・・そーなの?」
「俺が飯作ってやってたからねい」
「おいおい、マルコが飯ってどんだけだよ」
「能天気だし海賊に興味持つ訳わからねェ女だよい」
「へーいいじゃん。あ、もしかして他に男・・・・居る訳ないか」
「俺が居た時は居なかったよい」
・・・・今は、わからねェが。
俺が居なくなって男の1人でも作っただろうか。
・・・・考えただけで苛々するのを止められねェ。
もう会うことも出来ない俺が何を言えることもねェってのによい。
「顔と身体はどうよ?」
「・・・・・普通だろい」
「お風呂場でドッキリ、とか」
「ねェよい!」
抱きたい、というよりは抱きしめたい。
そう思わせる女だった。
・・・・アコは。
「今頃マルコが居なくなって泣いてんじゃねェの?」
「・・・・泣いたって乗り越えるよい、アコなら」
「・・・・へーマルコが認めた女って訳だ」
「あんな女他にいねェよい」
「もし次会えたらどうしたい?」
「・・・・飯でも食わせてやるよい」
「うっわ俺の役目ナシー!!」
「・・・うるせェよい」
飯を食い終えて部屋に戻れば、
鏡にアコの姿が映っていた。
・・・今日はいつもよりはっきりとしている。
その表情は今にも泣きそうに見えた。
「・・・・何でそんな顔してんだよい」
そっちは自分の世界だろい?
俺が行く前と、同じだろい。
・・・・・何で笑ってねェんだよい。
そっちは楽しくないのかい。
怪我したのか、仕事でミスしたのか。
なぁ。
そんな顔してるくれェなら、
「・・・・こっちに来いよい」
心の問いかけに答えるようにアコの口が動いた。
会いたい。
そう言われた気がした。
アコの目から大粒の涙が零れ落ちた時、
思わず鏡に手を伸ばした。
伸ばしたら、
何かを掴んだ。
「・・・・・嘘だろい?」
確かに掴んだそれは何処か懐かしく柔らかく、
抵抗する様子もなく。
・・・・・・なら、
思い切り引っ張ってやろうじゃねェか。
引っ張られて、
こっちに来いよい。
+引っ張られて 終+