いつかまた
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「じゃあ、行ってきますね・・・・?」
玄関で泣きそうになっている自分が、すごく不思議だ。
「大丈夫だって言ってるだろい?」
私はこれから仕事に行かなければならない。
昨日はサボった訳だし(有給だけど)、
今日は休む訳にいかない。
「お腹すいたら冷蔵庫とか戸棚にあるの食べていいですからね!」
「ああ、そうさせてもらうよい」
「誰か来ても開けなくていいですから、ちゃんと鍵かけておいて下さいね」
「わかってるよい」
「暇だったら本は好きに読んで下さい、テレビ見方わかります?」
「・・・・・アコ」
「はい?」
「時間、大丈夫なのかい?」
「・・・・・・・・・・・・行ってきます」
「・・・・よい」
苦笑するマルコさんに、
最後に一言。
「時間見て電話しますね。・・・・じゃあ、ほんとに行ってきます!」
ばたん、とドアを閉めたら胸が締め付けられた。
うう、大丈夫かなあマルコさん。
下手にガスとかいじって火事とかならないよね?
包丁いじって大怪我・・・とか。
あああああ!
心配だよう!
見送ってくれる、というマルコさんに断って1人職場までの道を行く。
子供を置いていく親ってこんな気分なんだろうか。
と、我ながら阿呆らしいことを考えてしまった。
でもマルコさんの住む世界と、
こちらの世界はだいぶ違うみたいだから。
・・・・・・・心配、なんだよう。
マルコさんは大人だけど、
まるで子供みたいだから。
「おはよう御座いまーす・・・・」
恐る恐る会社に入ったら、
「あぁら、御機嫌よう?」
それはそれは恐ろしい笑顔の先輩に出迎えられた。
「ご・・・御機嫌ようで御座いまする」
「昨日は楽しかったかしら?」
「柿ピーが美味しかったですぅ」
てへ、と出来るだけ可愛く、を心がけて笑ってみたけど。
「仲良く食べたのねえ、うふふー」
氷の微笑は消えない。
「ちっ違うんです!恋人とかじゃないですよあの人は!」
「とーっても楽しそうだったわねえ、アコちゃーん?」
ああっ先輩!いつもそんな口調じゃないのに!
「あ、あのっ!実はすっごい訳ありでして!」
「どういう訳」
「詳しくは言えないんですが次元が違う迷子なんです!」
「はぁ?」
「何だか今日も幼子を置いていく母親の気分でした・・・・」
「・・・・よくわかんないけど今日はちゃんと仕事しなさいよ!」
「はいッス!」
真剣に訴える私をどう思ったのか、
先輩はそれ以上何も聞かずにいてくれた。
お昼休み、こっそり家に電話。
昨日のうちに電話の使い方を教えておいたから、
何かあったら電話下さいとも言っておいた。
コール数回でマルコさんは出てくれた。
『これで、いいのかい』
「あ、マルコさん。大丈夫ですーちゃんと通じてますよ、良かった」
『仕事はちゃんとしてんのかい?』
「してますって。今お昼休憩ですー。マルコさんご飯食べました?」
『適当にやってるよい』
「あ、あと今日帰りちょっと遅くなるかもしれないです」
『・・・迎えに行く、よい』
「え、でも」
『することもねェんだ、それくらいさせろい』
「・・・・・じゃあ、駅着く前に電話します」
『わかったよい』
そんな話しをして、通話を切った後。
何だか、声を聞いたら顔が浮かんで。
・・・・・・・無性に会いたくなってしまった。
よし、今日は絶対定時であがろう。
気合いを入れてコンビニのパンを食べて、
早めに仕事に戻った。
「お疲れ様でっす!」
挨拶もそこそこに私は会社を飛び出した。
ちゃんと定時であがれた!
本当は早く帰ってあげたいけど、
今日は行くところがある。
えへへ、楽しみだなあ。
+秘密の 終+