いつかまた
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「今度のは期待出来ますよ!」
久しぶりにいい情報を見つけた。
マルコさんが帰れるかもしれない、方法。
「・・・・どんなだいそれは」
「海の近くにある神社なんですが、由緒ある神社で海に関することなら何でも御座れ!」
「・・・期待しないで行くよい」
興奮する私とは真逆の冷めた様子のマルコさんに苦笑しながら、
「あ、それでその場所遠いので今度の週末泊まりです」
「飛べばすぐだろい?」
「大騒ぎになりますので却下です」
「・・・ジンジャーってのは何だよい」
「しょうがじゃないです。神社・・・建物です。主にお祈りします」
簡単に説明すると、マルコさんは眉を顰めた。
「・・・祈るのは好きじゃねェよい」
確かにマルコさんは行動派だもんね。
海賊だし。
言うと思ってた。
「勿論ただ祈りに行くのではありません。鳥居をくぐるのです」
「またくぐんのかい」
「しかもただくぐるのでもありません!たくさんある鳥居の中に1つだけ、異世界に繋がる鳥居があるんです!」
「・・・・で?」
「それを見つけて夕方5時ぴったりにくぐるのです!」
「何処にそれがあるかわかって言ってんだろうねいアコ」
「あっはっは、わかってる訳ないじゃないですかー」
まあそこは突っ込まれるだろうなあとは思ってたけど!
正直に言えば、
ごつん、と頭を軽く小突かれた。
「ンな面倒なことは御免だよい」
「え、でももう予約しちゃいました」
「・・・・・何を」
「宿」
マルコさんの物凄く嫌そうな顔が、
とっても印象的でした。
という訳でやって来た週末。
電車を乗り継ぐこと数時間。
「アコ・・・よい」
「はい?」
「前にも言ったはずだろい、アコの家からの方が戻れる可能性はある」
「あ、大丈夫ですー鳥居くぐってもすぐに効果がある訳じゃないらしいんで」
「・・・・どういうことだい」
「お参りして鳥居くぐって、効果あるのは1週間以内だそうですよ」
神社まで徒歩で15分の道を歩きながら話す。
「・・・・アコには感謝してるが、行くのは俺1人で十分だろい」
その言葉に思わず足が止まった。
「・・・へーそれ言っちゃいますかマルコさん」
「・・・アコ?」
私がどういう気持ちで、マルコさんが帰れる方法を調べてたか。
・・・どんな気持ちで今、ここに居るのか。
マルコさんは全然わかってない。
「お前なんか関係ねェよいとでも言いたいんですか。そうなんですね」
「おい」
「わかりましたもうマルコさんなんか勝手にして下さい」
「アコ、」
「とか言うと思いましたか!」
「・・・・何だよい」
「わかってますよマルコさん海賊ですもんね、自由を愛する男ですもんね、どうぞ勝手になさって下さい」
呆れ顔のマルコさんに私は続ける。
「その代り私も勝手にさせて頂きます。文句は言わせません」
私も自由を愛する女ですからね!
ぎゅ、とマルコさんの腕を掴んで、引っ張って歩き出す。
「さあ行きますよ!」
マルコさんは私に引っ張られるがままで、
「・・・悪かったよい」
一言ぽつりと謝ってくれた。
・・・マルコさんのこういうとこ、好き。
「さあせいぜい後悔して下さい、こんな女と出会ったこと」
でもちょっと意地悪でそう言ってにっこり笑ったら、
「馬鹿な事言ってんじゃねェよい」
後悔なんかしねェよい、と言ってマルコさんが私の手を振りほどいて、
ぐっと私の腰を引き寄せた。
「・・・・暗くならないうちに行かないと、ですね」
「例の鳥居が見つかるかはわからねェよい」
「・・・何でそんなネガティブなこと言うんですか」
「事実だろい」
「前向きに行きましょう!きっと見つかります!」
ネットの情報を頼りに、何とかたどり着いた神社。
「・・・・・これは何と言うか」
想像以上に・・・・由緒ある、と言うか。
「ボロボロじゃねェかよい」
「・・・・ですね」
マルコさん言っちゃった。
「と、とにかくお参りしましょう!」
「俺はいい」
「・・・・じゃあ、私だけでも」
無理強いはしたくない。
出来るだけマルコさんの気持ちは尊重したい。
でも私は、したいから。
・・・・誰でもいいから、って言ったら失礼だろうけど。
でも本当に願うから。
マルコさんが無事に帰れますように、って。
そして同じくらい強く、
長くうちに居て欲しいとも。
・・・・よろしくお願いします、と心の中でお祈りして。
「よし、じゃあ鳥居を探し・・・・」
振り返った先にあった鳥居に、私は言葉を失った。
「・・・・諦める気になったかい?」
「・・・・・・・・・・全然!」
これくらいで諦めてたまるか。
例え、
終わりが見えない程みっしりと連なった鳥居の数だったとしても。
「ちなみに聞くが、アコ」
「はい?」
「その鳥居ってのは何が特別なんだい」
「どっかに何かの印があるらしいです」
「・・・・・まさかそれだけじゃねェだろうな」
「・・・・・えへ」
そのまさかです。
私の肯定にマルコさんは大きいため息を吐きながら、上に連なってる鳥居を見上げた。
「ひとッ飛びして見りゃわかるんだったら話しは早いんだがよい・・・」
「地道に探すしかないですね・・・」
言えるのは、
これだけ絶対違う!っていうのが1つだけあるらしいとのことだから。
「私頑張りますから!」
「無暗に努力しても仕方ねェだろい。噂があるってことは最初の方は調べられてる可能性がある」
「・・・おお、マルコさんさすが」
「・・・奥の方から手分けして探すよい」
「はい!」
見逃さないように、隅から隅まで探す。
何か違うとこはないか、
異変はないか。
・・・出来れば夕方5時までに探し出したい。
夢中になって探してて、何時間過ぎただろう。
マルコさん今どこ居るんだろう。
あ、どうやって落ち合えばいいんだっけ。
・・・呼べば来てくれるかな。
来てくれるといいな。
そう思って叫ぼうとした時、
後ろから口をふさがれた。
「・・・・っ!?」
何、と声を出すことも出来ず振り返れば、
見知らぬ男の子2人。
「お姉さんも別世界に行きたいのー?」
・・・うっわ、チャラい!
そしてこれはやばい予感!
「大丈夫俺らが連れてってあげるからさー気持ちいい世界に」
「そうそう、合意の上でな」
絶対合意の上じゃないですよね!
どうしよう。
「・・・行きたい、のっ!私じゃないんで!」
何とか手を払ってしゃべれるようになった。
叫べばマルコさんに・・・聞こえるはず。
「ああ、連れのおっさん?あれなら今頃俺らの仲間がボコってる頃だぜ?」
・・・・マルコさんにまで手出したのか。
それはちょっと・・・ある意味命知らずかも。
でもそれならマルコさんもすぐには来てくれないかなあ。
マルコさんは海賊だし、
隊長らしいから心配はあんまりしてないけど。
たぶんこういうのよりはよっぽど強いだろうし。
・・・・・今1番危ないの私だね。
「いやー・・・・・ちょっとお断り願いたいんですがね」
「まあそう言うなって、可愛がってやるからさ」
ずり、と後ずさり。
1本道だから、下れば元には戻れる。
でもそれまでに追いつかれないという根拠はない。
・・・でもここで、何をされたって。
言えることは1つ。
「私が好きなのはパイナップル頭のマルコさんだけなんだからー!!」
思い切り叫んだら、
ごつん!とけっこうな痛みが頭に走った。
まさか暴力にくるとは思わなかった。
「痛っ・・・!暴行罪で訴えてやる!大人なめんな!」
その痛みに思わず怒鳴ったら、目の前の2人組は呆然と私の後ろを見つめている。
「お・・・俺らじゃねーよ」
「え?」
つられて振り返ったら、
物凄く不機嫌そうなマルコさんが立っていた。
・・・・・怒ってる。
「きゃあマルコさん!来てくれたんですねっ」
出来るだけ可愛らしく言ってみたんだけど、
「誰がパイナップル頭だよい」
マルコさんの怒りは完全に私に向けられている。
「わ・・・私はただマルコさんが好きですってことをですね・・・!」
伝えたかっただけで!
あばばば!
「おいおっさん!てめーあいつらどうしたんだよ!」
「あ?ガキならその辺で寝てんだろい」
「てめっ」
あちらさんもお怒りらしく、こちらに向かって突撃してきた。
マルコさんは私より前に出ると、
まず1人目の男の子の頭を掴み、地面に叩きつけた。
次に驚きと勢いのあまり止まれなかった2人目を足蹴にし、
「血ィ流したくねェならさっさと帰れ」
そのあまりの強さの差と、
マルコさんの怖い顔に、少年2人は怯えながら去って行った。
「・・・・マルコさん」
「・・・何だよい」
「・・・・カッコいい!」
「ああ?」
「惚れ直しました!」
「パイナップル頭をかい」
「・・・・・そんなに怒らなくても」
まさかのまだ怒っていたご様子。
「怒ってねェよい」
いや絶対怒ってる!
・・・・・でも、
「好きなのはパイナップル頭じゃないです。パイナップル頭のマルコさんです」
「・・・・嬉しくねェよい」
はあ、とため息を吐くマルコさんに、
「有難う御座いました、助けてくれて」
御礼を言ったら、
「んなことより例の鳥居はあったのかい」
頬を染めたマルコさんに睨まれた。
・・・・照れてる。ホント可愛いこのおっさん。
さっきとのギャップもいい・・・!
とか言ってる場合じゃなかった。
「・・・・なかった、です」
「もう暗くなる。諦めろい」
マルコさんの言うこともわかる。
でも、
「ご心配なく。こんなこともあろうかと懐中電灯を持ってきてます!」
「・・・・そこまでする必要ねェだろい」
「・・・駄目、ですか」
「もう十分だって言ってんだ」
それから優しくぽんぽん、と頭を叩いて、
「こっちは腹が減ったよい。飯行くよい」
とのこと。
・・・・確かに、今日はもう5時を過ぎた。
「じゃあ宿・・・・・行きましょっか」
新婚さんに間違えられたらどうしよう、うふふ。
なんて考えながら、
私たちは本日の宿に向かった。
+新しい道 終+