いつかまた
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・・・・前にも思ったことだけど。
写真を撮りたい。
マルコさんとの・・・写真。
マルコさんだけでもいい。
とにかく、この世界にマルコさんが確かにこの家に居たっていう証が欲しい。
でも、そんなこと言えない。
・・・・マルコさん写真とか嫌いそう。
あくまで予想だけど。
何とかこう、自然にシャッターチャンスを狙えないもんか。
考えてはみるけど、
日常ではなかなかそんな機会ない。
かといって非日常は金がかかるし。
絶対上手くいく保障もないし。
「・・・・何唸ってんだいアコ」
「あ、いえ。何でも」
「何でもねェ奴がそんな難しい顔で唸るかよい」
「・・・・マルコさん」
駄目もとで頼んでみようかしら。
「・・・何だい」
マルコさんをじっと睨みつける。
マルコさんは少し驚いた顔で、でも見つめ返してくれる。
マルコさんの世界には一応写真があるらしい。
前に聞いた話によると、手配書があるんだとか。
「手配書って今持ってませんか?」
「・・・・手配書?俺のかい」
「そうですそうです。マルコさんの手配書」
期待をこめて聞いてみるけど、
「持ってねェよい」
「・・・ですよねー」
自分の手配書を持ってる訳ないよね。
「何に使うつもりだったんだい?」
「いや、使うと言いますか・・・ですね」
「・・・怪しいねい」
「いや全然怪しくないです、ハイ」
やばいちょっと恥ずかしい。
・・・・マルコさんのことが好きだと気付いたこの間。
でも、告白なんてするつもりはないから。
・・・・せめて写真はあきらめない。
「目が泳いでるよいアコ」
「怪しくないです!ほんとに!」
「正直に言えよい」
「何も御座いませぬ!」
ぎゅ、と手を掴まれた。
「なああああ!!」
「うるせェよい」
一気に上がる熱。
暴れてみるけど、離れない。
力はそんなに強くないはずなのに。
「お放し下されぇぇ!!」
「さっさと白状しろい」
「・・・・っ、う・・・ぅっ」
嗚咽を漏らしたら、ぱっと手が離れた。
「・・・・悪い、よい」
「ふぅ。危ないとこで御座いました」
かいてない汗をぬぐうポーズ。
「・・・・アコ?」
黒い笑顔。
そう呼ぶのに相応しいマルコさんの笑顔。
「・・・・・はいぃ」
「嘘泣きとはいい度胸してるねい」
・・・私は人よりちょっとだけ、嘘泣きが得意だ。
「だってマルコさん離してくれないからですよー」
「・・・・そんなに嫌だったのかい」
今度は少し傷ついたようなマルコさんの顔に、
思わず胸が痛んだ。
「ちがっ、・・・・くてですね」
「それで嘘泣きかい?」
「・・・・ドキドキ、するから・・・です、ハイ」
小さく言って、マルコさんの反応を見る。
・・・・と、
「そういや顔も赤いよい。・・・・熱が出たか?」
「ぐっ・・・・!」
そう来ますか!
マルコさんそこらへんの乙女より鈍感?
・・・・いいけどさ。
「や、風邪じゃないですよ」
更に顔を近づけてきたので、
爆発する前に手で遮った。
・・・ほんとに、もう。
「・・・・ハイ、ってのは口癖だねい」
「へ?」
いきなり何のことだか、マルコさんが私をドヤ顔で見つめて言ってきた。
「よく言うだろい?ハイ、って」
「あー・・・・言うかもしれない、ですね」
「覚えておくよい。嘘泣きが得意ってこともねい」
・・・ぎゃふん。
思わずそう出そうになった。
「・・・アレですよね、マルコさんの口癖はよい」
「・・・・悪いかい」
「私も使おうかなあ・・・・と思いますよい?」
「喧嘩売ってんなら買うよい?」
「やだなあ私がマルコさんに勝てる訳ないじゃないですか」
好きな人、なのに。
「・・・・ったく」
呆れたように笑うマルコさんも、
愛おしい。
・・・・ああ、この顔も写真に残しておきたい。
今は携帯にカメラがついてて、
簡単に撮れるのに。
・・・・なのに、こんなにも難しいなんて。
写真1枚、撮ることが。
「で?」
「・・・・・で、とは?」
マルコさん今度は憤慨したお顔で睨み付けてくる。
「何悩んでたんだい」
「あー・・・・」
戻っちゃいますか。
忘れててくれて良かったのに。
・・・素直に言えればいいんだけど。
今まで長い間人と話すことに慣れてなかった私には相当勇気が必要で。
会社では必要なことしかほぼ話してないし。
「・・・言いたくねェならいいよい」
そう言って背中を向けてしまったマルコさんに無性に寂しくなって、
「でもマルコさん絶対怒ると思いますし・・・!」
慌てて声をかけたら、
にっこり笑顔で振り返った。
・・・・あれ、寂しそうなマルコさんは何処に。
「言ってみろい、アコ」
「・・・・騙された」
「さっきの仕返しだよい」
さっき以上のドヤ顔。
「・・・・・マルコさん実はものすごく怒ってます?」
「怒ってねェし、怒らねェから言ってみろい」
「・・・・・マルコさんがにっこり笑った顔の写真が欲しいです」
や、ほんとは別に笑ってなくてもいいんだけど。
ドキドキしながら言ってみたら、
「んなもんねェよい」
光の速さで即答された。
「じゃあ撮らせて下さい。それはもう幸せな笑顔を」
「・・・何で笑顔限定なんだよい」
「・・・・じゃあ笑顔じゃなくていいです」
「・・・・ここで撮るのかい」
「いいんですか!?」
「別に写真撮るくらい問題ねェ」
「ほんとですか!?」
「・・・よい」
言ってみるもので。
結構あっさり、マルコさん承諾してくれて。
2人、並んで家の中。
「・・・・撮りますよ?」
「早くしてくれ・・・」
「1足す1は・・・・・よい!」
「おい」
カシャ。
念願の、マルコさんとの写真。
私はこれをずっと、大事にしよう。
+思い出に 終+