いつかまた
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「働きたくないぃ・・・・」
心からの叫び。
「働かなきゃ生活していけねェだろい」
「・・・・海賊さんのお言葉とは思えませんね」
海賊ってなんかこう、もっとおりゃー!ってお金とか奪ってうっへっへ!って感じで暮らすんじゃないのか。
「現実はそんなもんだい」
「・・・・ですよね」
知ってました。
「・・・・何かあったのかい?」
「・・・・・何か、という何かがあった訳じゃないんですけど」
優しくされると罪悪感で胸が痛む。
「あったんだろい?」
「・・・・・ないですって」
朝食後のコーヒーをまったり飲みながら腕時計をちらりと見る。
ああ、もうすぐ準備して行かないと。
「珍しいねい」
「私・・・・贅沢に慣れてワガママになってるみたいです」
仕事行きたくない、なんて。
「贅沢?」
「マルコさんが居てくれて色々やってくれて、楽だから」
楽な方に流れたいと思うようになったんだろうなあと。
「本当にそうかい?」
「え?」
「疲れただけってこともある」
「・・・・・・う、んと」
思わず言葉に詰まった。
いやでも今までより格段に楽になってる訳で。
疲れる、なんてことは。
「休みてェって思うのはそういうことだろい?」
「・・・・そう、なんでしょうか」
「楽な方に流れるような女じゃねェよい、アコは」
「そんなこと・・・ないですよ?」
楽出来るならその方がいい。
「本当にそんな女なら俺は今ここに居ねェよい」
「・・・・と、おっしゃいますと?」
「面倒極まりねェだろい海賊と暮らすなんざ」
「や、最初はただ心配といいますかそんな感じでしたし・・・」
今はただ居てくれることが嬉しい。
「海賊を心配なんて聞いたことねェよい」
くつくつと声を出して笑うマルコさんに改めて恥ずかしさがこみあげる。
「今まで頑張って来たんだ、休みたいなら休めばいいよい」
その優しい笑みが、本当に嬉しい。
「・・・こんなに優しい海賊さんなんて聞いたことねェですよい」
「・・・・アコ」
「あ、ごめんなさい。仕事、行ってきますね」
口調を真似たらマルコさんの顔が強張ってかなーり低い声で名前を呼ばれたので、
慌てて謝って立ち上がった。
気を付けよう、口真似するとマルコさんは怒る。
「行くのかい?」
「行きます。明日、休みですし」
「頑張れよい」
「はいー行ってきますー!!」
行ってきます、と言える幸せを噛みしめて。
今日もただいまが言えますように、と。
願いをこめて。
つっかれた・・・・!!
今日は私もミスしたけど後輩もミス連発で、
後輩のミスもフォローしながら自分のミスも自分で何とかしなければいけない事態になった。
・・・すごく疲れた。
それでも何とか家にたどり着いて、
錆だらけの郵便受けを覗いたら、珍しく手紙が入っていた。
いつもチラシだけなのに。
宛先は勿論私で、
誰から・・・・と後ろを見て心臓が止まった気がした。
「・・・・・ただいま、帰りました」
「・・・・疲れてるねい」
帰る度にマルコさんが居ることにほっとする。
嬉しいんだけど、少し疲れた。
今日も居るだろうか、居なくなっていないだろうか、と。
心配しては、
家に着いて安堵することに。
・・・・やっぱり、疲れてるんだなあ私。
「ちょっと・・・・疲れちゃいました。でも、明日休みだし」
「・・・手紙、かい?」
「へ?」
「手に持ってんの、そうなんだろい」
「あ・・・・はい。両親、から」
実家の両親からの手紙だった。
「開けねェのかい」
「手紙は・・・怖いです。残る、から」
「・・・読みたくなきゃ今日でなくても、」
「読みません、捨てます」
「・・・・アコ」
マルコさんの呆れた声が突き刺さった。
「いいんです、これで」
「ほんとに、いいのかい」
「いいんです。ほっといて・・・ください」
「・・・ほっとけねェから言ってんだよい」
ずっと側に居てくれないなら優しくしてほしくない、
売り言葉に買い言葉でついそう言おうとして、
はっとなった。
・・・・それが、私の本音だきっと。
「あー・・・・・・・です、ね。ダメですね私」
認めたら何だか悲しくなってきて、涙がこぼれた。
「バカだねい」
はいバカです。
そう答えようとしたら視界が真っ暗になった。
何事!?
「素直に甘えろって言ったろい?」
そのぬくもりに、マルコさんに抱きしめられてるんだとわかった。
「ああああああの、でででででも!!」
「うるせェよい」
「はいぃ!?」
何その理不尽な優しさ!
「駄目だって自分で口にしたらダメになっちまう」
「・・・・・・・・う」
「アコは駄目じゃねェよい。立派にやってる」
「・・・こんなにマルコさんに頼ってるのに?」
「何処がだよい。・・・お前は、大丈夫だ」
・・・何でだろう。
マルコさんの声はいつも力強く、
すっと心に入ってくる。
「・・・・手紙、開けてみようかなあ」
「アコの好きな時に開けりゃいい」
「・・・マルコさんが居てくれる今、開けたいです」
「・・・・よい」
そっと離れたマルコさんに少し気恥ずかしさを感じながら手紙を見た。
「頑張るんだろい?なら応援するよい」
そしてまた、頭をぽんぽん。
優しく、2回。
・・・・そっか、これは応援の合図なんだ。
「出勤前にやったら怒りますからねそれ」
「早く開けろい」
「ぐ・・・・!」
悔しいやら嬉しいやらで、緊張しながら手紙を開けた。
中に書いてあったのは、
「・・・・・・・・・・ぽかーんって感じです」
『笑っていられるならそれでいい』
その一言。
「・・・どうせなら声聞かせてやったって恩売っとけば良かったのによい」
不服そうなマルコさんの声、
でも顔は笑ってて。
何か私も・・・笑いがこみあげてきた。
「あはははっ、ほんとですね。今開けて良かったです」
「・・・本当にバカだねい、アコは」
「マルコさん、褒めるかけなすかどっちかにしてくれませんかね」
「どっちも本当のことだろい」
「・・・・げふん。あ、マルコさん明日付き合って下さい」
「構わねェが、何処にだい」
「血の繋がってない母さんのとこ、です」
マルコさんのこと紹介したいから。
そしていつか、
本当の両親にも。
・・・・紹介出来たら、いいなと思う。
+バカです 終+