いつかまた
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「あんたね」
「ごめんなさい」
案の定、早速先輩に突っこまれた。
お見合いのこと。
「・・・・まあ、無理にさせた私も悪かったけど?」
「とんでも御座いません・・・先輩の優しい御気持ちは理解している所存です・・・!」
「・・・・・・・もういいわよ。ほら、仕事しなさい」
「本当に・・・有り難う御座います」
先輩は話し方が少しきついから誤解されやすいけど、
本当はすごくいい人。
だから申し訳ないなあと思いつつ、
今の私には・・・・やっぱり誰かと結婚なんて考えられなくて。
でも、ほっとした。
想像以上に仕事がさくさく進み、
珍しく定時であがれた帰り道。
今日の夕飯なんだろうーなんてのほほんと考えられる幸せを噛み締めながら歩いていたら、
「あ」
私の好きな雑貨屋さん、まだ開いてる。
今日はちょっと寄ってみようかな。
・・・・・今度、マルコさんと一緒に来たいなあ。
心の隅でふと湧き出た気持ち。
・・・・・・いや、別に1人でも。
ていうか何故マルコさんが出たんだろう今!
あれ何か恥ずかしい!
確かにマルコさん優しいし寝顔も笑顔も可愛いし家庭的で料理めっちゃ上手だけど!
・・・・・だけど、おっさんだし!
海賊だし!
海賊ってことは海の男!
カッコイイよねえ・・・・・じゃなくて!
海賊すごい興味あるなあ怖いけど。
・・・・・・・・でもなくて。
・・・何か顔熱い。
いかんいかん、ショッピングに集中しよ。
あ、この置物可愛い。
・・・・・・あ。
何となく目についた、青。
まるで海を一角だけ切り取ったような、
四角い形の置物。
偽物だけど中に泡が閉じ込められていて、
まるで海中を眺めているような気分。
これ・・・・マルコさんに買って行こ。
マルコさんへのお土産。
喜んでくれるかなー。
そこまで考えて、
・・・・・・・・また、無駄遣いとか言われたりして。
とか考えてしまった。
でもやっぱり、と思い直して会計。
ちょ・・・・ちょっと緊張する。
家に帰るだけなのに。
さっきより少し重くなった足取りで、
無事帰宅。
「た・・・・ただいま帰りました」
「・・・・・何かあったかい?」
怖い!
私が挙動不審なことがバレている!
帰宅して3秒で!
「えーと・・・・・ですね」
「また何かやらかしたってとこだろい?」
「・・・・・・マルコさん、ひど・・・」
「アコはわかりやすいんだよい」
・・・・・これは褒められてるのかけなされてるのか。
でも・・・マルコさん笑ってるから、いっか。
「ポーカーフェイス苦手なんですよぅ」
「今日の夕飯はオムライスだよい」
「卵ふわっふわでお願いします!」
「・・・・俺にそんな器用な真似出来ねェよい」
とか何とか言いながら作ってくれたオムライスは、ふわふわで美味しかった。
「あー・・・・幸せ」
「・・・・安い女って言われたことあるだろい?」
にや、と笑うマルコさんは悪い顔。
「ないですよ!むしろ私ほど欲深い女はそうは居ないのではと自負しております」
「例えばどんなだい?」
「・・・・もっと広くて綺麗な家に住みたい」
「は、それだけかよい」
馬鹿にされた!
私もムキになって、
「シャンデリアとか素敵なインテリアに囲まれて、毎日お肉食べてお腹いっぱいになって」
それからそれから、
「毎日定時で帰れて、足が伸ばせるお風呂に入れて!!」
「それで?」
くつくつと肩を震わせながら笑いを堪えるマルコさん(もはや堪え切れてないけど)。
「それで・・・・誰かが側に居てくれたら、いいなと・・・ハイ」
「働きたくねェとは・・・言わないんだねい」
「働かなかったらお金もらえないじゃないですか」
「・・・・・・・・・楽して儲けてェとか」
「そんなお金後味悪くて使えないですよー」
働かなきゃお金もらえないに決まってるじゃないか。
「しょっちゅう食い逃げしてるバカに聞かせてやりてェよい」
「あはは、食い逃げは駄目ですねー」
・・・・・・・・・って和んじゃったけど。
このままじゃマルコさんにお土産渡せないじゃん・・・!!
どうする私!
「あ。えーと・・・・・その、素敵な家への第1歩、といいますか」
「第1歩?」
「いや、あの、」
素敵な家にかこつけて言おうとひらめいた私。
・・・・・・・が、
『ぴんぽーん』
・・・・・・・・何とタイミングの悪いチャイム。いや、来客。
「・・・・ここで待っててくださいね」
「・・・・よい」
「今行きますー」
走って玄関に行って、ドアを開けたら。
「お届けものでーす」
「あ、どうも」
宅配便だった。
「ここにサインお願いします」
「はーい」
ちら、と見たら送り主は実家だった。
「はい、確かに。有り難うございましたー」
「どうもー」
荷物を受け取ってくるりと振り返ったら、マルコさんが立っていた。
「マルコさん?」
「・・・何かあったら困るだろい?」
・・・・・・・・ちょっと驚いたけど、
その優しさがマルコさんらしくて嬉しかった。
「有り難う御座いますー。実家の両親から仕送りですね。中身は・・・・」
インスタントカレー。
インスタントラーメン。
野菜が少しと、お米5キロ。
そして・・・・・お肉。
「マルコさんお肉ぅぅ!!お肉が来ました!」
「見りゃわかるよい」
「お肉が食べられます!」
「良かったねい」
お肉をマルコさんに食べさせてあげられる!
「・・・ところでよいアコ」
「はい?」
「親御さんに言わなくていいのかい」
「お肉のことですか?」
「・・・・俺のことだよい」
あ。
「・・・・・・大丈夫、だと思います」
「男と一緒に住んでていいってのかい」
「電話・・・・します。明日、くらいに」
出来れば・・・したくないっていうのが本音。
マルコさんはそれに気付いたようで、
「・・・・まあ、色んな事情があるからねい。無理にとは言わねェよい」
・・・・やっぱり優しい。
「・・・・・・苦手なんです。少しだけ。でもやっぱり言わないとなので、明日ちゃんとしますね」
大人にならないと。
そう思って言ったら、
頭の上に危機を感じた。
「・・・・・まーるーこーさーん」
「褒めてやるよい」
マルコさんの手が、私の頭をかき回す。
「褒めてない!嬉しくない!」
「細けェことは気にすんな」
「気にします!・・・・・・あの、でも、その」
「アコ?」
「さっきの、続き・・・・・で」
あやうく忘れるとこだった。
マルコさんの顔見て思い出した。
「ああ、何か言いかけてたねい」
不思議そうなマルコさんから一旦離れて、
鞄から取り出した袋。
「これ・・・・お土産というかプレゼントといいますか・・・・」
「プレゼント?」
「・・・・・・どぞ」
マルコさんは驚いた顔でそれを受け取って。
「・・・・開けていいのかい?」
「はい」
どうしよう、何て言われるだろう。
どんな反応されるだろう。
色んな妄想が頭を駆け巡る。
そんな中マルコさんは、
ゆっくりと、丁寧にそれを開けた。
そして本当に嬉しそうに、微笑む。
「海・・・・・か」
「そうなんです・・・海を見てるみたいで綺麗だなって。あ、い・・・いらなかったら捨てちゃっても」
「大事にするよい」
嬉しそうなマルコさんを見て、ほっとした。
同時に、私の胸が温かくなる。
「有難う・・・御座います」
思わずお礼を言ったらマルコさんがくっ、と笑った。
「礼を言うのはこっちだい。・・・ありがとよい、アコ」
言いながらマルコさんはゆっくりと、
私の額に、
唇をくっつけ・・・・た。
「・・・・・・・・・・ま、っ!?」
「礼だよい」
「あばばばば!!!」
心臓が、爆発したかと思いました。
+プレゼント 終+