いつかまた
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「じゃかじゃん!」
「・・・・・・何だいこれは」
風邪が無事に治ったー!!
ということで、今日は仕事帰りにスーパーに寄ってきた。
そこで見つけた、
「油と鳥もも肉!大特売でしたので大量に買いました!」
1人で暮らしてると、
こんなに大量のお肉を買うことはないから不思議な気分。
「料理するのかい?アコが?」
「はい!この間友達の前で恋人のフリしてくれたお礼です」
「・・・・で、何を作るつもりだい」
「何と!から揚げでっす!」
マルコさんも喜んでくれるかな、と思ってたんだけど。
「・・・・・やめておいた方がいいよい」
マルコさんは何故か複雑な顔。
「え、から揚げお嫌いですか?」
「いや、そういう訳じゃねェけど・・・よい」
むしろから揚げは好きだよい、とマルコさんは言う。
じゃあ何故だ。
「アコが作るのは危険だってことだい」
「・・・・・・・危険、ですかね」
「油が跳ねて大火傷ってことになりかねねェ」
・・・・・・言われてみれば確かに。
揚げ物なんてもう随分やってない。
「いやあでも私ももういい歳ですし、まったく出来ない訳じゃ・・・」
ないですし!
でもマルコさんは首を横に振って、
「俺なら火傷してもすぐに治る。するなら俺がするよい」
・・・・・・・マルコさんの申し出は、
すごく嬉しい。
心配してくれてるってわかる。
でも、
「でもやっぱり・・・私作りたいです」
これはマルコさんへのお礼だから。
「痕が残ったらどうするんだい」
「慎重にやります。もし駄目でもいいです、覚悟出来てますから」
・・・・・・ってちょっと大袈裟かなあ、なんて思ってたら、
「仕方ねェよい」
ふ、とマルコさんが嬉しそうに笑った。
「俺が隣で教えるから、しっかりやれよい」
「よ・・・よろしくお願いします!」
・・・・・・・・という訳で。
「にんにくはたっぷり入れた方が美味いよい」
「なるほど!」
「小麦粉、片栗粉」
「・・・・・・・・・はい!」
「入れるときは怖がらずに滑らすように入れんのがコツだよい」
「・・・・いきます!」
「・・・・・・・・よい」
お肉を切って、タレにつけて、
油へ投入。
じゅわああ、といい音がした。
「あばばばば・・・・!!」
「落ち着け、アコ」
あまり料理をしない(加えて不器用)の私が、初めて作ったから揚げ。
何とかマルコさんの指導を受けながら。
「・・・・・・・・・・・・出来たー!!出来ましたよマルコさん!」
「アコにしちゃ上出来じゃねェかい」
「うわー有り難う御座います!熱々のうちに!頂きましょう!」
今日は私もマルコさんもご飯大盛りで。
2人で作って食べたから揚げは、
今までに食べたことがないんじゃないかっていうくらい美味しかった。
そして、次の日。
「では・・・・行きましょうか!」
「・・・・・・よい」
張り切る私に、
何てことない顔のマルコさん。
・・・・・・ドキドキしてるのは私だけなんだろうか。
「夜7時ちょうどにトンネルを通り抜けると異世界に行ける。・・・何処ですかね異世界って」
「行ってみねェとわかんねェだろい」
「・・・・・・・ですねえ」
くだらない、と言わんばかりのマルコさんの表情に苦笑する私。
・・・・単なるデマかもしれない。
でも、行けるかもしれない。
あードキドキする!
マルコさんが帰れるかもしれない、場所。
うちから電車で1時間の場所にある、トンネル。海も近くにある。
・・・今日はそこに、行く。
もしそこで、マルコさんが消えてしまったら。
一応夜7時とのことなので、そんなに早く行っても仕方ないってことで今は3時。
いろんなことが頭を過ぎって少しパニックだけど、
マルコさんが落ち着いてるから、
私も落ち着いていこう。
いつものように2人で家を出て、
・・・・・・・帰って来る時、
1人なのかもしれないなあって少し考えた。
2人で電車に乗って、
「・・・・・・・アコ」
マルコさんの怪訝な顔。
「はい?」
「・・・・・・その荷物は何だい?」
マルコさんの視線の先には、私が持ってる荷物。
ぱんぱんの、鞄。
「マルコさんの着替えとか食べ物とかです」
「・・・・何だってそんなもん」
「トンネル通る時マルコさんに持って行ってもらおうと思って」
「一応聞くが、何の為にだい」
「変な世界行っちゃっても困らないように、ですよー」
「・・・・・・・・俺が持つよい」
「え、でも」
私が勝手に持ってきたのに。
「いいから貸せよい。・・・ったく、お人好しにも程があるよい」
言いながら鞄はあっという間にマルコさんの手に。
・・・・マルコさんだって、お人好しだと思う。
空気も雰囲気もいつも通りなのに、
電車の中では一言も話さなかった。
そして着いた、
トンネル前。
「まだ5時前なんで、海辺の散歩でもしますか。夕飯はそこのレストランで!」
「ああ、いいよい」
「あそこめっちゃ美味しいんですよ!特にシーフードドリアが!」
「前にも来たことあんのかい?」
「はい、小さい頃に。迷子になって大泣きしたんでそれからは来てないんですけど」
「大泣き?」
「トンネルの中すっごい暗いんですよ」
「なるほどねい」
でもその時親と食べたドリアが本当に美味しかったことは覚えてる。
ざざん、ざざん・・・・と波打つ海を見ながら海辺を歩く。
もう薄暗いからか、人もほとんど居ない海辺。
「可愛い子連れてんじゃーん、おっさん」
いきなり後ろから力の抜けるような声。
振り向けばそこには予想通り、
やっぱり力の抜けるような格好(失礼)のオニイサン達2人組。
「女の子だけ置いて逃げたら?俺らに狩られる前にさぁ」
「へェ、俺を狩るのかい」
にや、とマルコさんが不敵に笑った。
まずい。
私は咄嗟にマルコさんの腕にしがみつき、
「ちょうどいいところに貴方達!あっちの方に飛び込もうとしてる女の人がいたの!」
「あ?」
「今警察呼んだから来るまで側に居てあげて!」
「・・・・・サツ待ちかよ、面倒くせェ」
ちっ、という舌打ちを残して彼らは去っていった。
「・・・・・・・・ふぅ」
安堵のため息を吐いたらマルコさんは、
「何処の世界にも馬鹿は居るもんだねい」
冷めた視線で彼らが居なくなった方を見てた。
「いろんな人が居るってことでいいじゃないですか。大人しく帰ってくれたし」
「・・・・何かあってからじゃ遅ェよい」
むすっとしたマルコさんに笑って、
「普段1人じゃこんなとこ来ないから大丈夫ですよ。それよりそろそろ夕飯行きませんか?」
「・・・・・・・・・飯はいいけどよい。・・・アコ、腕」
絡めたままだった、腕。
「あああああっすすすすみません!」
何処か不機嫌そうなマルコさんを宥めて、
食事に向かった。
昔と変わらないお店で、変わらない味で。
2人で、シーフードドリアを食べた。
そして。
「・・・・・・6時58分、です」
「・・・・・・・・・・よい」
「では・・・!」
顔を見合わせて、真っ暗なトンネルへ足を踏み入れた、その途端。
手が、
「・・・・マルコさん?」
「大泣きされても困るからねい」
「・・・・・昔の話ですからね?」
手が繋がれた。
真っ暗なトンネルで、
私は。
・・・・・・・・マルコさんは、
何を思うのだろう。
+何を思う 終+