いつかまた
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「一生の不覚・・・・」
「大袈裟だよい」
いいから寝てろい、と。
マルコさんの優しい言葉が胸に沁みる。
今日は・・・・マルコさんの帰れる手がかりを見つけに行きましょうね、って言ってたのに。
・・・・・・・・なのに。
「37℃もありゃだるいだろい?」
「・・・・・・・・・・あい」
なのにマルコさんは、
怒りもせず私の面倒をよく見てくれる。
「本当は医者に診せてェが・・・」
「大袈裟です。風邪薬飲めば治りますから!」
「風邪じゃなかったらどうすんだい」
「・・・・・・・いや風邪ですよ」
たぶん。
「似た症状でとんでもねェ病気ってこともある」
「んー・・・・・じゃあ、これ以上悪化したら、病院、行きます」
「・・・医者は来ねェのかよい」
「あははっ、呼べば救急車は来てくれますねえ」
「ンなもん呼んでる時間が惜しいよい。俺が運ぶ」
「・・・・・どうやって」
「飛んでいく」
「・・・・・・・いいですねえ、それ」
そっか、マルコさん飛べるんだっけ。
鳥になって。
・・・・・そしたら、
「私が・・・・大変なことになったら、よろしくお願いします、ね」
ほんとはマルコさんが鳥になった姿見てみたい。
言わないけど。
「・・・・任せろい」
マルコさんが敷いてくれた布団に横になって、
マルコさんが隣に居てくれる。
・・・・・・安心、するなあ。
「食欲はあるかい?」
「・・・・あんまり」
「今は睡眠とった方がいいかもしれねェよい」
「・・・・・・・はい」
確かに眠いんだけど、
なんだかマルコさんが居ると緊張して。
眠るに眠れない感じだ。
「じゃあ俺は向こうの部屋に行ってるよい」
「有り難う御座います・・・」
マルコさんもそれを察知してくれたのか、
ぽん。
1回だけ私の頭に手を乗せて、
優しい目で私の顔を覗きこんでから、
隣の部屋に行った。
・・・・・・・・・・・何か熱上がった気がするんですけど。
急に静かになった部屋。
今までもたいしてうるさかった訳じゃなかったけど。
・・・・・・しん、とした空間に、
コチコチ。と響く時計の音。
外で走る、車の音。
そんな音がやけに耳に残って。
・・・・・・・・・・・・寂しくなった。
具合、悪いのに。
眠いのに。
・・・・・・寂しいとか言ってる場合じゃないだろ私。
本当ならマルコさんだって居ないんだから。
本当なら・・・・1人、だったんだから。
頑張って寝よう。
ぎゅっと目を閉じて、
・・・・・・・考えるのは、やっぱりマルコさんのことだった。
何とか、帰してあげたいなあ。
海賊の世界に居たマルコさんがこんなとこで生活っていうのも本当は退屈なんだろうなあ。
マルコさん向こうではどんな生活してるのかなあ。
どんな人と暮らしてるんだろう。
どんな顔、してるんだろう。
・・・・・こんな汚いアパートで、
こんな狭い部屋で。
こんな私の世話を焼くだけの生活なんて。
可哀相だ。
「・・・・・・・・・まるこさん」
自然と、口から出てた名前。
小さい声だったし、聞こえてないと思ってたのに。
「アコ?」
「・・・・・ぉおう?」
「呼んだかい?」
マルコさんが来てくれた。
私の声を・・・・・聞いてくれた。
「・・・・・・・マルコさん、マルコさん」
「どうした?」
「・・・・・・ごめんなさい」
寝たまま謝るなんて失礼だよねえ、と思いながらも起き上がる気力はなくて。
「・・・・いきなり謝られても困るんだがねい」
マルコさんの困惑した顔が可愛い。
・・・・ああ、熱で頭おかしくなってるな私。
「今ね、マルコさんのこと考えてたんです」
「・・・・・・・で、ごめんなさいってのは何だい」
「何か、申し訳ないなあって」
「・・・・・・・寝ぼけてんのかい、アコ」
「部屋広くないし綺麗じゃないし・・・私も、美人でもグラマーでもないし」
こほ、と咳が出た。
「別にそんなこと望んじゃいねェよい」
「風邪・・・・ひいちゃうし」
「気にしてねェって言ってんだろい?」
「私・・・・駄目だなあ」
熱のせいで弱気になってるようだ。
「・・・・・・・・寝ろよい、アコ」
「・・・・・ごめんなさい、本当に」
「ごめんなさい、はもういいよい」
馬鹿だねい、とマルコさんの声。
呆れてるのか、笑ってるのか。
「・・・ごほ、ごほっ、でもわたし、」
「いいから喋んなよい」
「・・・・・・何か私死ぬみたいじゃないですかソレ」
血は吐いてないですよ!?
「死なせねェよい」
冗談で言ったつもりだったのに、
マルコさんの真面目な表情と、
力強いはっきりした声が妙に嬉しかった。
「・・・・・それで、何だい」
「へ?」
「何か言おうとしたんだろい?」
「・・・・・・・・・・あ。忘れちゃいました」
私・・・・何言おうとしてたんだっけ。
「・・・・ったく」
「すみませんです・・・ハイ」
マルコさんは軽くため息を吐いて、
「・・・・・食欲はなくても、少しは腹に入れといた方がいいよい。粥、作っといたからよい」
「・・・・作ってくれたんですか?」
「食ったら薬飲んで寝てろい」
「・・・・はーい」
それからマルコさんが持って来てくれたお粥はすごく美味しくて、
食欲はあんまりなかったんだけどぺろりと食べきった。
「ご馳走様、でした・・・」
「薬」
「・・・・・飲みます」
しっかり用意された薬と水。
2錠を口に入れて、水を含みごっくん。
それから再び布団に横になった。
「邪魔なら向こうに行ってるよい」
どうする?と聞いてくれる優しいマルコさん。
「邪魔なんかじゃ、ないです。でもマルコさんの好きなように、してて下さい」
「寂しい、って顔に書いてあるけどいいのかい?」
「・・・・・・寂しくなんか、ないです。だってマルコさん居てくれるし」
「ここにいなくても?」
「呼べば来てくれます。それってすごく嬉しいです」
心強い、とっても。
「・・・さっき、言いかけたこと思い出しました」
「・・・・・・何だい」
薬のせいか眠くなってきて、
目が半分閉じかけてきてる。
「マルコさんがうちに来てくれて、いてくれて私嬉しいんです。でもマルコさんにとってはいいことなんかないし」
申し訳、ないなあって。
思って。
1人じゃないこと、側に居てくれるのがマルコさんであることが。
本当に良かったと思うから。
「・・・言ってなかったかい?」
「・・・・へ?」
マルコさんは優しく私の髪を撫でて、
「俺も・・・・思ってるよい。この家の主がアコで良かった」
その言葉は私の心にすっと入ってきて。
「・・・ありがとう、ございます」
このお礼を言った途端、
何だか安心して気が抜けたのか、
私の意識はそこで途切れた。
+ごめんと有り難う 終+