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サービスカウンターの人に呼ばれて行ってみれば、
「アコさん同じ商品2回打ってたから、気をつけてね?」
「す・・・すみません!」
まさかの誤登録。
ちょっと慣れてくるとミス連発するから気をつけて、ってナミさんにも言われた。
気をつけなきゃ、だ。
けれどどんなに気をつけても悪いことは続くもので、
「アコさん、店長が話があるって」
仕事が終わってナミさんと話をしながら着替えていると、入ってきた部門の人からそう言われた。
「・・・・・どっどうしよう」
店長からの話ってたぶん良いものではないと思う。
「ドンマイ」
「ナミさぁん・・・・!」
いい笑顔で見送ってくれたナミさんに泣きそうになりながら事務所へ行くと、店長が苦笑しながら待っていた。
「お疲れ様。・・・・心当たりある?」
「まったくないです」
だって今日は本当に普通に仕事してただけで。
睨まれたりとか怒られたりとか、そんなのなかった。
少なくとも記憶にはない。
「まあたいしたことではないんだけど、クレームの電話があってね」
「・・・・・・・・はい」
やっぱり悪いことだった。
「お会計終わった後にお釣りを入れてたお客様が、急かされた、って言うことなんだけど」
頑張って記憶を遡ってみるもまったく思い出せない。
・・・・・なんか泣きそう。
「まあその後駐車場でお客様同士の喧嘩があったから、それで嫌な思いをされたのが1番だと思う」
「はい」
「でも一応レジでも嫌な思いをした、ということで電話があったから。アコさんはそんなつもりなかったと思うけど」
「・・・・・・すみません」
「うん、これからはまあ気をつけて。大丈夫だから」
「はい・・・すみません、でした」
笑ってくれる店長に頭を下げて、更衣室へ戻った。
「何だった?店長の話」
「なっ・・・ナミさぁぁん・・・・」
「・・・・・・クレーム?」
泣きそうな私の様子を見て察してくれて、
「レジ終わった後私が急かしたらしくて・・でも私全然記憶にないい!」
「ま、クレームなんてそんなもんよ」
話してたら目頭が熱くなってきて、涙が溢れてきた。
「今日誤登録もしたし、私最悪だ・・・!」
レジ向いてないのかも、なんて思ったりした。
でもナミさんはカラカラと笑って、
「何言ってんのよ。これでアコもやっと1人前になったってことじゃない」
「・・・・1人前?」
「誤登録もクレームも皆経験してるわ。こんな仕事してたらいくらでもあるっての」
「・・・・・・・・そう、かな」
「それにあんたのクレームなんか軽いもんよ。私なんかもっとすごいことしたし。ま、上には上が居たけど」
「上、って」
「あんたの彼氏」
・・・・・・・・笑えない。
でも確かに以前エース君からそんなようなことを聞いた気もする。
「とにかく気にすることないわよ。店長だって怒ってなかったでしょ?」
「・・・・・うん」
ナミさんに励まされて家に帰ったけど、やっぱり気は晴れない。
食欲も出なくて、夕飯もあまり食べられなかった。
こんな時に思い出すのは、エース君の笑顔。
そして、
「・・・・エース君どんなことやらかしたんだろ」
本部にもクレームがいった、とか言ってた。
なのに今あんな風に笑えてるって、すごいなあと思う。
・・・・・・・・・・会いたい。
ちら、と部屋の掛け時計を見れば時間はもう夜の10時半。
今頃何してるかな。
仕事はもう終わってる、よね。
もうそろそろ家に着いてるかな。
「アコー!お客さん!」
「お客さん?」
突然呼ばれた名前に玄関へ行ってみれば、
ご機嫌のお母さんとエース君が居た。
「あがっていいのよエース君」
「いえ、ここで大丈夫です」
「エース君?」
私の姿を確認すると、お母さんはにこにこと嬉しそうに「あら。じゃあ後は2人でごゆっくりー」
と行ってしまった。
「ごめんな夜遅くに」
「ううん、大丈夫。どうしたの?」
「あー・・・・その、今日アコにクレームがあって落ち込んでるって聞いたから」
エース君は少しだけ言いにくそうにそう言うと、
「そんで、これ」
目の前に出されたのはビニール袋。
「・・・・・・ケーキ?」
それは駅前のコンビニの袋で、
中にはチーズケーキが1つ、プラスチックのフォークと一緒に入っていた。
「ほんとはちゃんとした店で買おうと思ってたんだけど、もう閉まってたから・・・悪ィ」
駅前にケーキ屋さんは1つしかない。
・・・・もしかして今日ナミさんと話してたこと、覚えててくれた?
「・・・・・・・いいの?」
「アコは真面目だから落ち込むと思うけど、気にすることないぜ?」
「・・・・ん」
「よくあることだからな、ホントに」
「ありが、と・・・・」
今度は、
嬉しくて泣きそう。
「だから・・・辞めるとか、言わねェよな?」
心配そうなエース君に、泣きそうになりながら私は思い切り笑った。
「辞めないよ。部門は違ってもエース君と一緒に働いていたいし、エース君が居てくれるから」
励ましてくれる、ナミさんが居て。
エース君が居て。
こんなあったかい職場きっと他にない。
だから、大丈夫。
「そっか!なら良かった。・・・安心した」
「・・・・ほんとに、ありがとねエース君」
「アコ」
「ん?」
名前を呼ばれて、腕を引かれた。
「え、」
「また、明日、な」
ぎゅう、っと優しい力で抱きしめられて。
すぐに離れた。
「じゃ、お疲れ!」
「え、あ、うん」
うまく返事が出来なくて、耳が真っ赤なエース君の後姿をただ見送った。
+仲間と恋人 終+