空と海、そして君
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「グララララ・・・珍しい顔ぶれだと思ったらそういうことか」
豪快に笑ってそう言った白ひげさんは私の持ってきた料理に目をやり、
「美味そうな匂いじゃねェか・・・」
と目を細めた。
「食べてもらえますか?」
「ああ、もらおう」
「味は確かだぜ、オヤジ!」
白ひげさんは大きな手で持ってきたお皿を取ると、口に運んだ。
・・・うう、反応が怖い。
「お口に合うといいんですけど」
じ、っと見つめて数秒。
白ひげさんはにやりと笑った。
「・・・美味ェ」
「あ・・・有難う御座います!」
思わずエースと顔を見合わせて笑った。
すごく嬉しい。
「グラララ・・・!礼を言うのはこっちだ。こんな美味いもんを有難うよ。酒が欲しくなるぜ」
白ひげさんはあっという間に食べ終えて、改めて美味かった、と言ってくれた。
マルコさんも報告をして3人で白ひげさんの部屋を出た。
エースだけじゃなくて、マルコさんイゾウさん、サッチさん。
そして白ひげさんにも美味しいと言ってもらえたことで、私は皆の仲間になった気でいた。
その考えが甘かったことを次の瞬間に私は実感することになる。
どーん、というものすごい音。
そして大きく揺れた船。
「ほわああ!?何!?」
私の身体は突然の衝撃に倒れかけ、床が目の前になった。
けれど床に衝突することはなかった。
エースが抱きとめてくれたからだ。
「大丈夫か?アコ」
「あ、ありがと。・・ね、これって」
そう聞きかけた時、
「敵襲!」
そう声が聞こえて、一気に騒がしくなった。
そしてマルコさんが、
「今回は2番隊だったな?エース」
エースに向けてそう言った。
「・・・ああ、行ってくる。マルコ、アコは頼んだ」
話してる間にも止まぬ銃声。
砲撃の音。怒鳴りあう声。
揺れる、船。
「ヘマすんなよい」
「わーってるよ。・・・アコ、ごめんな」
あまりに突然のことで声も出ない私の頭に、ぽんと乗せられたエースの手。
そして走っていくエースの背中をただ見送った。
「ぼーっとしてんじゃねえよい。ナースの部屋まで送る」
マルコさんに軽く睨まれて、はっとした。
・・・・今、エースはどんな顔してたっけ。
「火拳!」
その声に上を見上げると、戦ってるエースの姿。
「えー・・・・す」
何で忘れてたんだろう。
ここは海賊の世界。
声がうまく出ない。
足が動かない。
「動けねえってんなら担いで行くよい」
けれどマルコさんのとんでもない発言に驚いた。
「ええええ!?それは嫌です!」
「は、少しは余裕があるみたいだねい」
「・・・余裕、は、ないんですけど」
「何だ」
「もう少しだけ、見てちゃ駄目ですか」
「・・・お前自分が何言ってるのかわかってんのかい」
「ごめんなさい、でも、もう少しだけ。好奇心とかそんなんじゃないんです。ただ」
「・・・ただ?」
「ただ、見ていなきゃいけない気がして」
暴れる心臓を押さえつけて、
それだけ言うとマルコさんは嫌そうにため息を吐いた。
「お前に何かあったらエースに言われんのは俺なんだがねい。・・・あと少しだけだ」
「っ有難う御座います!」
殺伐とした空気の中に、優しい炎。
人を殺しているハズなのに、優しいと思ってしまう私はおかしいのかもしれない。
・・・・・・改めて知る海賊の世界。
それを知らないで皆の、エースのことが
好きだなんて言えないから。
「・・・もういいかい」
「はい・・・有難う御座います」
転びそうになる私を時々支えてくれながらマルコさんはナースの部屋まで送ってくれた。
「ここから絶対出るんじゃねえぞ」
「はい」
厳しい口調だったけど、顔は少し笑ってくれていたマルコさん。
やっぱり優しい人だ。
「アコ!心配したのよ、今探しに行こうかと思ってたの」
「有難う、ミリア。私は大丈夫」
心配してくれたミリア達に私はそう返した。
私は、大丈夫。
今はただ、あの時のエースの顔を思い出せないのが悔しかった。
+この世界というもの 終+