もう1つの家族
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「エースの服?」
「そ、あんた今日休みでしょ?駅前のショッピングモールで秋物セールやってるし」
それは朝、母が言い出した。
「エース君にぴったりな服選んであげなさいよ」
「おかーさんは?」
「私は町内婦人会の集まりがあるのよ。お父さんは急遽仕事だし」
朝ごはんのパンを咀嚼しながら私は考える。
確かにいつまでも兄貴の服じゃ可哀想だ。
ちら、と横に座ってるエースを盗み見る。
さっき突然顔を突っ込んでしまった。
・・・つまり寝ているわけで。
昨日の夕飯の時も寝たから見るのは二度目なんだけど。
「お金あげるから、お昼も一緒に食べといで」
「ん、わかった」
「あ、でもラーメンは却下よ」
「なんで?」
「顔面火傷するじゃない。エース君が」
「・・・・なるほど」
パンくずを口元につけて、幸せそうに眠るエースの横顔を見つめて、私は頷いた。
「エースはどんな服がいいの?」
「着たくねェ」
「着てください」
そこからかい。
「ははっ冗談だ。アコが選んでくれンなら何でも着るぜ」
「とりあえずエースに似合うなら赤かオレンジかなー」
そんなことを話しながらショッピングモール内をうろうろ。
一応エースには目深に帽子を被せた。
バレると色々面倒なので。
「アコ?」
ふと聞き覚えのある男の声に呼ばれ、声の方に振り返る。
「あ」
げ、と思わず声が出そうになった。
中学時代の、クラスメイト男子。
しかもヤンキー。
「久し振りじゃんアコ。何?お前オトコできたの?紹介しろよ」
言葉は至って親しげだが、ニヤニヤと嫌らしく笑うその顔は怖い。
紹介しろよ、と言われた当のエースはきょとんとしている。
え、何て紹介すればいいの?
従兄弟?友達?居候?
名前は?まさかエースっていう訳には!
私がパニックになっていると、
エースが先に口を開いた。
「俺ぁエースだ」
あ、エースって言っちゃった。
「へぇ。なあ、知ってるか?こいつのアニメ好き」
え、気にしないの?
ああ、ヤンキーだからワンピ知らないのか。
それでも私はエースがばれないかでドキドキで、
二人の会話が頭に入らない。
バレませんようにバレませんようにバレ、
「残念、コイツが今好きなのは、俺なもんで」
今のはさすがに頭に入った。
「ちょ、え!?」
「何だよアコホントのことだろ?おら、行くぞ」
言われて私は腕を引っ張られた。
ヤンキーはきょとん顔。
エース、って言っちゃった。
でもいっか。
ルージュさんがつけた大切な名前だもんね。
「・・・・何だよ、あいつともっと話してたかったのか?」
「や、そういう訳じゃないけど」
「じゃあいいだろ。早く買って飯にしようぜ」
あ、なんだお腹すいてたのか。
・・・少し、嫉妬してくれたのかななんて。
そんな訳ないですよね、ハイ。
それからさくさくっとエースの服+生活必需品を購入。
お昼ごはんはフードコートでステーキを食べた。
お肉好きだなあ。
帰り際、私好みの雑貨屋さんを見つけた。
エースの了承を得て、ウィンドウショッピング。
そこで見つけた、赤い玉の連なったネックレス。
これ、まるで、
「俺の持ってるのとそっくりだな」
「・・・だね」
買えばエースとお揃い。
でも本人の目の前で買えないし!
それに、エースが嫌かも、しれない、し。
欲しいけど諦めて置くことに、
「へ?」
置く前にひょい、とエースに取られてしまった。
しかもエースはそのままレジに持っていって。
ネックレスは袋に入れられて。
え、嘘。
「やるよ」
不敵に笑うエースに思わずドキリとした。
「え、エースお金持ってたの?」
食い逃げ常習犯のエースがお金を払うなんて!
しかも私にプレゼント、なんて。
「おふくろさんにもらった。アコとはぐれた時のためにって」
「へー・・・ってもし今後はぐれたらヤバイじゃん!」
「問題ねーよ」
「へ?」
す、と取られた手。
優しく握られた。
「こうすりゃはぐれねーだろ?」
「え、あ、う、あ、あぅ」
嬉しくて恥ずかしくて、言葉にならない。
「ははっ、どもりすぎだろ。可愛いなお前」
「かっ」
可愛いとか・・・エースに言われると照れる。
でもちゃんとお礼言わなきゃだ。
プレゼントのこと。
「・・・・・・・・・エース」
「ん?」
「これ、ありがと。大事にする」
「おう、どーいたしまして」
エースの能力はないはずなのに。
繋いでいた手が、やけに熱かった。
+一緒にお買い物 完+