もう1つの家族
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お風呂はお父さんに見張らせた。
『一緒に入るか?』
なんて冗談じゃないっての。
お風呂あがって、次にエースに入るように言って、
私は部屋で漫画本を手に取る。
『ONE PIECE』
けれど本を開いて私は思わず声をあげた。
「えっ」
たくさんのワクワクが描かれていた筈の中身は、真っ白になっていた。
「なん、で」
エースが今この世界に居るから?
・・・ていうか、
エースお風呂から来たんだよね。
ってことはもっかいお風呂入ったら帰れるんじゃないの?
そしたらエースはもう、
「アコ!!どうだ!?」
「・・・・・・何が?」
私の予想に反して、
エースは戻ってきた。
濡れた髪を滴らせ、兄貴の服を着て。
子供のような笑顔で。
「これ、着てみたんだ。似合うか?」
にこにこにこ。
年上の人なのに可愛い、と思ってしまう。
「う・・・ん、何か不思議」
「不思議ってナンだよ?アコさっき似合うって言っただろ?」
あれ、何か怒ってる。
「アコが似合うって言ったから着たんだぜ?」
「だ、だってお兄ちゃんの着てた服をエースが着てるなんて」
「・・・・じゃあこの服、俺と##NAME2##どっちが似合ってる?」
「・・・・・・・・・・・・・はい?」
何この質問。
「なあ、どっちだよ」
サイズは合ってないけど。
でもいつも上半身裸なエースが服を着てるってだけても、
正直カッコイイ。
「・・・・エースのがいい」
「・・・そっか!」
答えた途端エースは眩し過ぎるほどの笑顔。
そして髪を拭きながら首を傾げ、
真面目な顔で私を見つめる。
「・・・・何?」
そして私の目を見据えたまま問う。
「アコは俺がここに居たら迷惑か?」
「エース?」
「実際の俺を見て幻滅したか?」
その瞳にドキッとした。
「・・・俺は何でここに来ちまったかもわかんねえし、帰り方もわかんねえ」
そうして話し始めたエースの声に、
私は静かに耳を傾けた。
「家ん中も外も全然俺の知ってる世界じゃねえ、海も見えねえ。でも、そんでも俺は」
不意にエースに右手をとられた。
そして私の前で足を折り、跪く形に。
「たどり着いたのがここで、アコに会えて良かったと思ってる」
それはまるで、
何かの映画のワンシーンのように。
ごく自然に、
することが当然かのように、
エースは私の手の甲に、
ちゅ、とリップ音が響いた。
「なあアコ。俺は・・・ここに居てもいいか?」
エースはいつも笑ってた。
だから気づかなかったけど。
・・・・・そうだよね。
白ひげ海賊団の皆と離れ離れになって、
しかも全然知らない世界に一人きり。
不安にならない訳ないよね。
ごめんね、気づいてあげられなくて。
そう言いたいけれど、口にする勇気がなくて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
私は静かに頷いた。
だって私は元々エースが好きだから。
嬉しくない訳じゃない。
ただ、戸惑っただけ。
今更言えないけど。
私が頷いたあとの、どの場面でも見たことのないエースの優しい顔が、
私はきっと、ずっと忘れられないと思った。
+言えない気持ちもあるもんだ 終