空と海、そして君
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エースが居なくなって冬休みも終わった。
学校でアサミに会って、エースが来てからのことを話すと、
驚きながらも信じてくれた。
「会ってみたかったな」
ぽつりとそう言ったアサミに、
私も会わせてあげたかったと思った。
いざエースが居なくなってみると、
うちに居たことが嘘みたいに思えてくる。
でも一緒に買い物したことも、遊園地に行ったことも鮮明に思い出せる。
抱きしめられた時のぬくもりも、手のあたたかさも。
エースが買ってくれたお揃いのネックレスだって確かに存在する。
夢でも妄想なんかでもない。
確かな証。
私はそのネックレスをつけることが出来ないまま、高校を卒業した。
明日から、大学生。
私は机の引き出しを開けた。
『アコ』
と呼んでくれたエースの声が脳裏に焼きついて離れない。
考えてみれば、すごいことだんだ。
エースがうちに来たことも、
一緒に暮らしたことも。
名前を呼ばれたことも。
エースに・・・・抱きしめられたことも、
キス、されたことも。
「それ、エース君からのプレゼントでしょ?つけないの?アコ」
「・・・お母さん、知ってたの?」
いつの間にか後ろに居た母。
エースにネックレスを買ってもらったと、母には言ってなかったはずなのに。
「エース君から直接聞いたのよ。もらった金使っちまった、って謝ってくれたわ」
「エース、が」
「何使ったの?って聞いたらアコの為に使ったって。謝ることないのにね」
「・・・・ね」
せっかくだからつけてみようかな。
そういう気持ちになった。
どうせならエースの前でつければ良かった。
私はそっと赤い玉の連なったネックレスを手に取り、ゆっくりとそれを首につけた。
その、瞬間。
『 』
声が、耳の中に入ってきた。
「お母さん今何か言った?」
「何も言ってないわよ?」
「そ、そっか」
そうだよね、と言おうとした。
『 』
「聞こえた」
「え?」
「声、また!」
『えーす』
「エース!エースって言った!』
「アコ?」
私は考えるより先に走った。
お風呂場へ。
バン、と勢い良くお風呂場のドアを開ける。
そこで見た光景はいつかのそれで。
そしてそれと同時に大きくなる声。
『 よい、エース!』
たくさんの声、エースの名前。
それは何処か切羽詰ってるような。
「アコ、どういうことなの?」
私を追ってきた母を振り返る。
ああ、まるでこれはあの時のエースと私みたい。
青く光ったうちのお風呂場。
あの時はエースにしか聞こえていなかった声。
「お母さん・・・今なら私あの世界に行けるかも。エースを助けられるかも」
「何・・・言ってるの?」
困惑する母、けれど私もさっきから心臓がうるさいほどに戸惑っている。
半信半疑。
「たくさんのエースの名前を呼ぶ声と、微かにだけどエースの声が聞こえる。もしかしたらまだ生きてるのかも」
「生きてる?エース君が?」
「世界の時間軸とかそういうのが違うのかも!今行けば助けられるよね?」
もし、エースを助けられることが出来るなら。
私は嬉しくなってそう叫んだ。
けれど、母は酷く怒ったような顔をした。
「・・・・あんた、行くつもりなの?」
「何で?だってエースを助けられるかもしれないんだよ?」
私はそれがすごく悲しくて。
お母さんだってエースのこと大好きだったじゃん。
家族だ、って言ってくれたじゃん。
「今そこに飛び込んだとして、絶対にエース君の居る所に行ける可能性はどれだけあるの?」
「・・・っ、それは!」
「もし違う所だったら?海賊の世界なのよ?わかってる?」
「・・・そう、だけど」
「あんたなんてものの1秒で殺される。それがわかってるのに行かせる訳にはいかないわ」
「でももしかしたらエースのトコに行けるかもしれない!声が聞こえるし!」
考えてなかった訳じゃない。
確かに無事にエースのところに行ける保障はない。
そして、
「もしもよ?エース君のところへ行けたとして。・・・・帰ってこれるの?」
私がまたこの世界へ帰ってこれるかどうかはそれ以上にわからない。
「わかん、ない」
「お父さんにもお母さんにお友達にも会えなくなるのよ?」
「それは、でも、もしかしたら」
「とにかく、行かせる訳にはいかないわ」
どんな時も私の味方でいてくれた母。
大好きな、お母さん。
私はどうしたらいいんだろう。
+聞こえた声 終+
学校でアサミに会って、エースが来てからのことを話すと、
驚きながらも信じてくれた。
「会ってみたかったな」
ぽつりとそう言ったアサミに、
私も会わせてあげたかったと思った。
いざエースが居なくなってみると、
うちに居たことが嘘みたいに思えてくる。
でも一緒に買い物したことも、遊園地に行ったことも鮮明に思い出せる。
抱きしめられた時のぬくもりも、手のあたたかさも。
エースが買ってくれたお揃いのネックレスだって確かに存在する。
夢でも妄想なんかでもない。
確かな証。
私はそのネックレスをつけることが出来ないまま、高校を卒業した。
明日から、大学生。
私は机の引き出しを開けた。
『アコ』
と呼んでくれたエースの声が脳裏に焼きついて離れない。
考えてみれば、すごいことだんだ。
エースがうちに来たことも、
一緒に暮らしたことも。
名前を呼ばれたことも。
エースに・・・・抱きしめられたことも、
キス、されたことも。
「それ、エース君からのプレゼントでしょ?つけないの?アコ」
「・・・お母さん、知ってたの?」
いつの間にか後ろに居た母。
エースにネックレスを買ってもらったと、母には言ってなかったはずなのに。
「エース君から直接聞いたのよ。もらった金使っちまった、って謝ってくれたわ」
「エース、が」
「何使ったの?って聞いたらアコの為に使ったって。謝ることないのにね」
「・・・・ね」
せっかくだからつけてみようかな。
そういう気持ちになった。
どうせならエースの前でつければ良かった。
私はそっと赤い玉の連なったネックレスを手に取り、ゆっくりとそれを首につけた。
その、瞬間。
『 』
声が、耳の中に入ってきた。
「お母さん今何か言った?」
「何も言ってないわよ?」
「そ、そっか」
そうだよね、と言おうとした。
『 』
「聞こえた」
「え?」
「声、また!」
『えーす』
「エース!エースって言った!』
「アコ?」
私は考えるより先に走った。
お風呂場へ。
バン、と勢い良くお風呂場のドアを開ける。
そこで見た光景はいつかのそれで。
そしてそれと同時に大きくなる声。
『 よい、エース!』
たくさんの声、エースの名前。
それは何処か切羽詰ってるような。
「アコ、どういうことなの?」
私を追ってきた母を振り返る。
ああ、まるでこれはあの時のエースと私みたい。
青く光ったうちのお風呂場。
あの時はエースにしか聞こえていなかった声。
「お母さん・・・今なら私あの世界に行けるかも。エースを助けられるかも」
「何・・・言ってるの?」
困惑する母、けれど私もさっきから心臓がうるさいほどに戸惑っている。
半信半疑。
「たくさんのエースの名前を呼ぶ声と、微かにだけどエースの声が聞こえる。もしかしたらまだ生きてるのかも」
「生きてる?エース君が?」
「世界の時間軸とかそういうのが違うのかも!今行けば助けられるよね?」
もし、エースを助けられることが出来るなら。
私は嬉しくなってそう叫んだ。
けれど、母は酷く怒ったような顔をした。
「・・・・あんた、行くつもりなの?」
「何で?だってエースを助けられるかもしれないんだよ?」
私はそれがすごく悲しくて。
お母さんだってエースのこと大好きだったじゃん。
家族だ、って言ってくれたじゃん。
「今そこに飛び込んだとして、絶対にエース君の居る所に行ける可能性はどれだけあるの?」
「・・・っ、それは!」
「もし違う所だったら?海賊の世界なのよ?わかってる?」
「・・・そう、だけど」
「あんたなんてものの1秒で殺される。それがわかってるのに行かせる訳にはいかないわ」
「でももしかしたらエースのトコに行けるかもしれない!声が聞こえるし!」
考えてなかった訳じゃない。
確かに無事にエースのところに行ける保障はない。
そして、
「もしもよ?エース君のところへ行けたとして。・・・・帰ってこれるの?」
私がまたこの世界へ帰ってこれるかどうかはそれ以上にわからない。
「わかん、ない」
「お父さんにもお母さんにお友達にも会えなくなるのよ?」
「それは、でも、もしかしたら」
「とにかく、行かせる訳にはいかないわ」
どんな時も私の味方でいてくれた母。
大好きな、お母さん。
私はどうしたらいいんだろう。
+聞こえた声 終+