もう1つの家族
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休みが明日で終わる。
4月からは私も大学生になる。
嬉しくない訳じゃない。
時が進む、ということ。
生きているということだから。
「それじゃ、留守番お願いねー」
「はーい」
冬休みが終わる前の日。
夕方、母は婦人会の新年会に出かけて行った。
父は会社の新年会で遅くなる。
久し振りのエースと2人きりの夜、か。
「今日何食べたい?」
「肉」
「・・・・聞いた私が馬鹿だった」
年が明けてからもエースは何処となく変で。
でも少しずついつも通りに戻ってたから、いいのだと思ってた。
「今日はうちにあるものでいっか」
「俺、アコの作る飯好きだぜ」
「・・・・ありがと。どしたの急に」
母の時も私の時も、いつも美味しいと言ってご飯を食べてくれるエース。
でもそんなこと言われたことはなくて。
好き、と言う言葉に妙に反応してしまう自分がいる。
「俺大盛りで頼むな!」
「・・・・りょーかい」
にしし、と笑うエースに私は内心どぎまぎ。
ありあわせの材料で炒め物と、煮物を作った。
煮物はまだ母には敵わないんだけどね。
それでもエースはいつも通り、
「アコ、これうめェなーおかわり!」
「はいはい」
本当に美味しそうに食べてくれて。
私はそれが嬉しい。
こんな日が続けばいいと何処かで少し思ってた。
ご飯を食べ終わって、エースは寝てしまっていた。
いつもは食べてる途中で寝るのに。
食べ終わってから寝るなんて珍しい。
思いながらテレビに出ているお笑い芸人に目を移した、その瞬間。
隣で寝ていたエースが起きた。
がばっ、と勢い良く起きたエース。
「あ、エース起きた。珍しいね食べ終わった後に寝るなんて・・・・エース?」
けれど起きたエースの様子がいつもと違うようで。
「・・・・呼ばれてる」
「え?」
酷く真剣な顔をして、誰に言うでもなくそう呟いたエースに、どきりとした。
「・・・アコ、俺もしかしたら、」
言いながらエースは立ち上がり、迷いなく歩き始めた。
私も急いで後を追う。
その場所、は。
「・・・・・お風呂場が、光ってる?」
青く光っているうちのお風呂場。
「・・・声が聞こえるか、アコ」
「え、何も聞こえないけど」
「・・・・アコ、俺」
エースの言いたいことが、
わかってしまった。
それがこんなにも悲しくて寂しい。
「うん、今なら、帰れる、かもね」
「・・・・・ああ」
「よ・・・・良かった、このまま何も起こらないんじゃないかって思ってた、か、ら」
「アコ・・・・」
やめて、そんな顔しないで。
エースがこの世界に居る限りどんな顔でも見ていようと決めたのに。
そんな・・・・切なそうな顔されたら、
見るの辛い。
そんな苦しそうに私の名前を、呼ばないで。
「アコ、俺は・・・っ・・!?」
「エース!?」
吸い込まれるようにエースの身体はバスタブの中へ。
「時間がねえ!アコ、すっかり世話になっちまったな・・・おふくろさんと親父さんによろしく言っといてくれるか」
「・・うん」
「アコにも、感謝してる。会えて良かった。・・・これからはちゃんと野菜も食えよ!」
手すりに捕まりながら叫ぶエース。
まだこんなに近くに、いるのに。
「それから・・・あの時の答えな」
「え?」
「好きだ、アコ。すげえ好き・・っ!」
その言葉を言ってすぐ、エースの手は手すりを離れた。
エースの身体はバスタブの光る水の中へ。
私は声が出ない。
ばしゃん、と水の音がして。
エースも見えなくなって。
思い出すのは、
『え・・・エースはどうなの?私のことどう思ってるの?』
『さァ・・・どうだと思う?』
『ええ・・・何それずるい』
『ま、そのうち言ってやるよ』
ニヤリ、と不敵に笑うエースの笑顔と声。
ああそっか、その答えを言ってたんだ。
「・・・・・・・・・そのうち、って」
ようやく搾り出した自分の声は掠れてて。
「何で今なのよ・・・馬鹿・・・っ」
ぽた、と私の目から落ちた涙がバスタブに落ちた。
それから泣くだけ泣いて、
空白になっていたせいで久しく読んでいなかった本を開いた。
『ONE PICEC』
本の中でのエースは、
インペルダウンで捕まったまま。
そして更に、後に発売されたコミックスでエースが死んだことを私は知った。
エースの父親が、海賊王ゴールDロジャーということも。
「こんなことになるって、わかってたら・・・絶対帰らせなかったのに・・っ!」
「でもね、アコ。大切な弟を守れたエース君の死は、悲しいけど無駄じゃないわ」
「わかってる、けど!でも・・・悔しいよ・・っ!!」
堪え切れなかった涙が頬を伝う。
エースがいなくなったあの日、
帰ってきた父と母にそれを伝えた。
『良かったわね・・寂しいけど』
母はそう言って、
『寂しいな。・・・でもエース君は確かに、うちの家族だ』
父がそう言った。
「ねえアコ?貴女もエース君の家族なんだから。その名に恥じぬ生き方をしなくちゃ駄目よ」
「・・・・うん、そだね」
悔しさも寂しさも、
抱えて、
生きる。
最期に笑って死ねるよう。
エースの、『もう1つの家族』として。
+あの時の答え 終+
4月からは私も大学生になる。
嬉しくない訳じゃない。
時が進む、ということ。
生きているということだから。
「それじゃ、留守番お願いねー」
「はーい」
冬休みが終わる前の日。
夕方、母は婦人会の新年会に出かけて行った。
父は会社の新年会で遅くなる。
久し振りのエースと2人きりの夜、か。
「今日何食べたい?」
「肉」
「・・・・聞いた私が馬鹿だった」
年が明けてからもエースは何処となく変で。
でも少しずついつも通りに戻ってたから、いいのだと思ってた。
「今日はうちにあるものでいっか」
「俺、アコの作る飯好きだぜ」
「・・・・ありがと。どしたの急に」
母の時も私の時も、いつも美味しいと言ってご飯を食べてくれるエース。
でもそんなこと言われたことはなくて。
好き、と言う言葉に妙に反応してしまう自分がいる。
「俺大盛りで頼むな!」
「・・・・りょーかい」
にしし、と笑うエースに私は内心どぎまぎ。
ありあわせの材料で炒め物と、煮物を作った。
煮物はまだ母には敵わないんだけどね。
それでもエースはいつも通り、
「アコ、これうめェなーおかわり!」
「はいはい」
本当に美味しそうに食べてくれて。
私はそれが嬉しい。
こんな日が続けばいいと何処かで少し思ってた。
ご飯を食べ終わって、エースは寝てしまっていた。
いつもは食べてる途中で寝るのに。
食べ終わってから寝るなんて珍しい。
思いながらテレビに出ているお笑い芸人に目を移した、その瞬間。
隣で寝ていたエースが起きた。
がばっ、と勢い良く起きたエース。
「あ、エース起きた。珍しいね食べ終わった後に寝るなんて・・・・エース?」
けれど起きたエースの様子がいつもと違うようで。
「・・・・呼ばれてる」
「え?」
酷く真剣な顔をして、誰に言うでもなくそう呟いたエースに、どきりとした。
「・・・アコ、俺もしかしたら、」
言いながらエースは立ち上がり、迷いなく歩き始めた。
私も急いで後を追う。
その場所、は。
「・・・・・お風呂場が、光ってる?」
青く光っているうちのお風呂場。
「・・・声が聞こえるか、アコ」
「え、何も聞こえないけど」
「・・・・アコ、俺」
エースの言いたいことが、
わかってしまった。
それがこんなにも悲しくて寂しい。
「うん、今なら、帰れる、かもね」
「・・・・・ああ」
「よ・・・・良かった、このまま何も起こらないんじゃないかって思ってた、か、ら」
「アコ・・・・」
やめて、そんな顔しないで。
エースがこの世界に居る限りどんな顔でも見ていようと決めたのに。
そんな・・・・切なそうな顔されたら、
見るの辛い。
そんな苦しそうに私の名前を、呼ばないで。
「アコ、俺は・・・っ・・!?」
「エース!?」
吸い込まれるようにエースの身体はバスタブの中へ。
「時間がねえ!アコ、すっかり世話になっちまったな・・・おふくろさんと親父さんによろしく言っといてくれるか」
「・・うん」
「アコにも、感謝してる。会えて良かった。・・・これからはちゃんと野菜も食えよ!」
手すりに捕まりながら叫ぶエース。
まだこんなに近くに、いるのに。
「それから・・・あの時の答えな」
「え?」
「好きだ、アコ。すげえ好き・・っ!」
その言葉を言ってすぐ、エースの手は手すりを離れた。
エースの身体はバスタブの光る水の中へ。
私は声が出ない。
ばしゃん、と水の音がして。
エースも見えなくなって。
思い出すのは、
『え・・・エースはどうなの?私のことどう思ってるの?』
『さァ・・・どうだと思う?』
『ええ・・・何それずるい』
『ま、そのうち言ってやるよ』
ニヤリ、と不敵に笑うエースの笑顔と声。
ああそっか、その答えを言ってたんだ。
「・・・・・・・・・そのうち、って」
ようやく搾り出した自分の声は掠れてて。
「何で今なのよ・・・馬鹿・・・っ」
ぽた、と私の目から落ちた涙がバスタブに落ちた。
それから泣くだけ泣いて、
空白になっていたせいで久しく読んでいなかった本を開いた。
『ONE PICEC』
本の中でのエースは、
インペルダウンで捕まったまま。
そして更に、後に発売されたコミックスでエースが死んだことを私は知った。
エースの父親が、海賊王ゴールDロジャーということも。
「こんなことになるって、わかってたら・・・絶対帰らせなかったのに・・っ!」
「でもね、アコ。大切な弟を守れたエース君の死は、悲しいけど無駄じゃないわ」
「わかってる、けど!でも・・・悔しいよ・・っ!!」
堪え切れなかった涙が頬を伝う。
エースがいなくなったあの日、
帰ってきた父と母にそれを伝えた。
『良かったわね・・寂しいけど』
母はそう言って、
『寂しいな。・・・でもエース君は確かに、うちの家族だ』
父がそう言った。
「ねえアコ?貴女もエース君の家族なんだから。その名に恥じぬ生き方をしなくちゃ駄目よ」
「・・・・うん、そだね」
悔しさも寂しさも、
抱えて、
生きる。
最期に笑って死ねるよう。
エースの、『もう1つの家族』として。
+あの時の答え 終+