僕ときみと
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「アコ、私隊員の方々にお誘いを受けたの」
「え、エマ?」
「ごめんなさいね、代わりにアコエース隊長への謝罪お願いね」
じゃあね、とエマは2番隊の方々と軽やかに去って行った。
「あいつら・・・ったく、悪ィなせっかくエマと一緒だったのに」
「わわ私の方こそすみません・・・というかホントにあのっ何かさせて下さいお詫びに!」
勝手に後をつけてきた上にトラブルに巻き込んでせっかくエース隊長が用意した花を駄目にしてしまったんだから。
「そうだなァ・・・んじゃ付き合ってもらうか」
「はいっ何処までも!!」
ああっご迷惑おかけしたっていうのにこんな良い思いしていいの!?
「ま、あんまり気にすんなよ。怪我がなくて良かった」
「エース隊長もお怪我は・・・」
「あるように見えるか?」
「目に見える傷は御座いません、ですが・・・」
「心の傷?」
「・・・・お花を、新しいの買わないとです」
「・・・そうだな」
エース隊長は苦笑を浮かべて、
「でも花屋の前に飯付き合ってくれよ」
と、私の手を取った。
て・・・・・っ!!
「はひっ」
・・・・ごめんなさいエース隊長の好きな人。
もしかしたら貴女にあげるはずだったお花を私のせいで駄目にしてしまいました。
ごめんなさい、エース隊長の好きな人。
今だけは、この幸せを私に下さい。
「あ」
レストランに入ってそこで食事中、
エース隊長が寝てしまった。
・・・・でも、何だか寝顔が可愛い。
起きたら聞いてみようか。
あの花は誰にあげるつもりだったのか、なんて。
・・・・・・自分が傷つくだけってわかってるのに聞ける訳ない。
聞けないのに、顔も知らないその人にもやもやしてしまうなんて卑怯だとはわかってる。
そっとエース隊長の自由な髪の毛を撫でて愛しいと感じてることも、
我ながら気持ち悪いなぁと自負してる。
好きです、と。
口にしてしまえば終わるものがあるから、
言えない。
だから私が今言えるのは、
「ごめんなさい」
だけ。
ずるくてごめんなさい。
卑怯で、卑屈で。
・・・・それでもあなたを好きで、
ごめんなさい。
「・・・何に謝ってんだ?」
「うぇえええええエースたいちょっおおおおはよう御座います!」
「今、俺に謝ってたよな?」
覚醒したエース隊長はじっと私を見つめて来る。
「・・・・私、エース隊長に迷惑ばかりかけているので。というか」
迷惑しかかけてない気がしてきた。
「今日のことなら気にするなって言っただろ?他に何かあったか?」
「ありましたよ!」
そりゃあもう色々と!
興奮して叫んだら、
「ぶはっ、はははっ」
エース隊長は噴出して、笑った。
「・・・・エース隊長」
「そっか?俺には心当たりねェけどな」
「それは・・・エース隊長がお優しいからです」
「じゃあアコが俺にどんな迷惑かけたか言ってみろよ」
「え?えーと・・・アレです、幽霊騒ぎとか」
本当はたいして怖くなかったのにエース隊長を呼んだ、私。
「ああ、幽霊見たかったよな」
「・・・私任務でお役に立てませんでしたし」
「アコが居なかったらずっと閉じ込められたままだったかもしれねェな」
「私の我が儘でコロコロ海賊団の本船にまで乗り込ませてしまって・・・!!」
「スッキリしたな、アレ」
「エマのこと相談に乗って頂いたり!」
「俺も心配だったんだ、良かったよな解決して」
結局私たちが行った島はスルーされることになったけど。
「えーとえーと」
「ねェよ、俺が迷惑と思ったことなんて」
「それは・・・っエース隊長がお優しいからです・・・・っ」
「じゃあ俺が優しいから何も迷惑には思ってねェってわかったよな?」
そう言ってぽんぽん、と私の頭を優しく叩いてくれた。
・・・・ああ、好き。
心から湧いてくるこの温かい気持ちはそれ以外に言い表せない。
「・・・っはい」
「よし、納得したな?じゃあ花買いに行くか」
「行きましょう!」
ちゃんとお会計を済ませて、
てくてくと歩きながら勇気を出してみる。
「・・・エース隊長はお花がお好きなんですか?」
「いや、別に」
「あの、薔薇は・・・」
「・・・女に花やるなら薔薇だってあいつらが言うからよ」
「・・・・・・薔薇でなくても、嬉しいものだと思います」
平然を装いながらも内心どん底に突き落とされた気分になった。
やっぱり女性にあげるつもりだったんだ。
「そっか?・・・っても1輪だけじゃ何にしても喜んでくれやしねェか」
「いえっ素敵だと思います!!」
「アコも好きか?」
「へ?」
「薔薇」
「すすす好きですっ!」
「薔薇でいいと思うか?1輪で」
「良いと思います!」
・・・・・エース隊長の好きな人なら、きっと喜んでくれると思います。
そんな幸せな人。
・・・・いいなぁ。
・・・・・・・・・・・・いいなぁ。
「アコ?」
「あ、はいっ」
いけないぼーっとしてた。
エース隊長が心配そうに私の顔をのぞき込んでくる。
「・・・・今にも泣きそうな顔してるってわかってねェだろ」
「私がですか!?」
「やっぱわかってなかったか。具合悪ィか?・・・俺が何か言ったか?」
「いえっ!!・・・・大丈夫、です。ちょっと、考え事を」
「多いな、考え事」
「そ・・・そうですか?」
「でもって俺に言えねェんだろ?」
「う・・・・・はい・・・・」
「言いたくなったら・・・言えよな」
「・・・・っはい」
エース隊長がここまで言ってくれるなら。
・・・・心の準備として、聞いてしまおうか。
「じゃああの・・・聞いても、いいですか?」
「あァ、何でも聞けよ」
「薔薇のお花は・・・好きな女性に贈るものですか?」
私の決死の質問にエース隊長は真顔になって、
少しの沈黙があった。
「・・・そのつもりだ」
「そっ・・・・その女性って、どんな方、ですか」
心の奥で馬鹿、と言う自分の声が聞こえる。
聞くことないのに。
わざわざ自分で自分を傷つけるようなことしなくていいのに、って。
ちくちくと痛みだした心臓は、
「そうだな・・・すげェ可愛い」
この言葉で完全に砕け散った。
「・・・・美人さんは多いですよね」
「美人っつーか、可愛い。あと真面目だな。普段前向きなのにたまに変なとこで後ろ向くのも面白ェ」
・・・・誰。
誰誰誰!?
「年下の方・・・・ですか?」
「あァ」
エース隊長より年下って言うと、
私と同年代のエマでしょ、
それからアンジーでしょ、エレーナも居るよね。
「アコ、花屋着いたぜ」
「うぁはいすみませんっ」
「ここで待っててくれるか?」
「私お金出しますっ」
「いいって、ここまで付き合ってくれただけで感謝」
「あ・・・・」
花屋に入って行ったエース隊長の後ろ姿を見つめてますます泣きそうになった。
・・・・私のお役目もここまで、かぁ。
きっとこれからエース隊長はその好きな人のところに行って告白するんだ。
しなくても会いに行くに決まってる。
・・・・・・帰ろ。
「おーいアコ、何処行くんだよ」
くるりと背を向けた瞬間呼び止められた。
振り返れども顔を見る勇気はなくて(見たら泣きそうだったから)俯いたまま。
「あ・・・あの私はお邪魔かと」
「何で」
「これからその方にお会いになられるでしょうし・・・・!」
「ああ、だから手間が省けた」
「・・・・・・とおっしゃいますと?」
ぱっと顔をあげれば少し照れたような、
はにかんだ様子のエース隊長が1本の薔薇を手に、
「好きだアコ」
確かに私の名前を、呼んだ。
+私の名前を 終+