もう1つの家族

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「掃除をしたとか」

「してないわね」

「入浴剤を使ったとか」

「使ってないわ」

「・・・・だよねえ」

母とエース、そして私は、3時のおやつを楽しみながらどうやったらエースが帰れるのかを討論中。

そして行き着いたのが、そもそもエースが来た時変わったことをしなかったか、ということだ。

でも母の方はどうやら心当たりがないらしい。

「エースは?何か変わったことなかった?」

おやつのホットケーキを頬張っていたエースは、私の質問に首を傾げた。

「んー?ほふにふぁんもあふぁっふぁほ?」

「・・・・飲み込んでから喋って」

「いっぱい食べてねーエース君」

何言ってるかわからないエースに私は苦笑い、母はほのぼの。

ごっくん、とエースは口の中のものを飲み込んで、話し始めた。

「特に何もなかったぞ?マルコに悪戯すんのも追いかけられるのもいつものことだしな」

「んー・・・・進展なし、かあ」

「エース君がうちに来てからもう2週間になるのねえ」

感慨深げに母が呟く。
そうだ、もう2週間。でもまだ2週間という気がしないでもない。

「やっぱ寂しい、よね」

「まあ任務とかで結構船空ける時もあるからなー。でも海に落ちてこっち来てるから死んだことになってるかもな、俺」

「・・・・それかなりマズイんじゃないの?」

「ま、来ちまったもんは仕方ねェよ」

エースは何処までものんきだ。
表面上は、だけど。

「でもご家族の方は心配してらっしゃるわね」

「・・・・そーかァ?」

「特にお父様は心配だと思うわ」

「・・・親父が?」

「そりゃそうよ、子供を心配しない親なんて居ないもの」

母がそういうとエースは頬をぽりぽりとかきながら嬉しそうに笑った。

「そ、そっか」

その顔から本当に白ひげさんが好きなんだなあとわかる。

「でも居たかったらうちにはいくらでも居ていいのよエース君。アコが喜ぶから」

ニヤニヤ、と母は私を横目で見る。

うう、お母さんめ。

「ほんとに、いいのか」

「エース?」

エースの顔はすっと真面目な顔になって。

「俺がいて、いいのか?」

「食費のことなら気にしなくていいのよ?」

「そうそう、私も払ってないしさ」

「そうじゃねェ、俺は」

辛そうに顔を歪めた。

「俺は・・・・・、なのに、」

初めて聞いたエースの弱弱しい声音。
途中何て言ったのかさえわからなかった。

そんなエースを見て母が口を開いた。

「エース君が何を気にしてるかはわかんないけど、エース君もうちの家族なんだってこと忘れちゃ駄目よ?」

「かぞく・・・・」

「エース君が来てくれて嬉しいの。アコも喜んでるしね?アコはね、エース君みたいなお兄ちゃんが欲しいー!って言ってたのよ」

「ちょ、お母さん、あんま言わないでよ」

「本当のお兄ちゃんがいるのにねえ?」

「や、まあ、事実だけども!」

「実際エース君がいてアコは嬉しそうだし」

にこにこと話す母にエースは少し戸惑っているようだった。

「俺は・・・・俺にはそんな資格はねェんだ」

「そしたらさ、どんな人なら資格あることになるの?」

私は少し悲しくなって。

「大人しくてちゃんと服着てて爽やかで少食な人?うわ、私そんなエースやだ」

「そうね、お母さんも作ったご飯を美味しそうにいっぱい食べてくれるエース君がいいわ」

「エースが嫌なら仕方ないけど、そうじゃないならいいじゃん、うちはもう一つの家族ってことで。大丈夫だよいつかは帰れるから」

「あんたホントにのんきよねー。エース君の身になって考えてる?」

「考えてるし!エースは私が守るから大丈夫なんだって」

更に母が文句言いたげに口を開いたところで、エースの声がソレを遮った。

「ありがと、な」

少しだけ照れたように微笑んで。
それからエースは頭を下げた。

「・・・改めて、世話になる」

私は母と顔を見合わせてほっとため息を吐く。

エースが何を言おうとしたのかは今はまだわからないけど。

エースは、家族だ。





     +家族だ 終+
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