僕ときみと
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「私、気づいてたんです。エマが変だって」
「それで何か聞いたのか?」
「・・・いいえ、聞けませんでした。聞いちゃいけないような気がして」
でも聞けばよかった。
今は本当にそう思う。
本当はこんなことしたくないって思ってたのかもしれない。
だから・・・気づいた時私が無理にでも聞き出していればこんなことにはならなかったのかもしれない。
「自分を責める気持ちもわかるけどあんま気にすんな。今アコがここにいることがエマにとって救いだと思うぜ?」
「・・・・・はい」
「それに・・・実を言うと俺も知ってた」
「え?」
「隊長各の奴らは皆知ってたんじゃねェかな。・・・マルコが1番に疑ってたみてェだけど」
「やっぱり・・・例の任務の時マルコ隊長とエマだったのも」
「マルコが指名したんだ。んで、どうだったか聞いたら黒だ、って言ってた」
エマが、マルコ隊長のこと怯えてたのも。
きっと、後ろめたい気持ちがあったから。
「でもエマあの時は何もなかったって・・・」
「監視してる時はな。動かなかったからあえて泳がせたら連絡してたそうだ」
「・・・・そう、ですか」
「でも・・・そん時1番に連絡してたのは敵船じゃなかったってよ」
「・・・・まっまさか恋人・・・・!?」
「違ェ。・・・アコだ」
「あ・・・・」
そういえばあの時、マルコ隊長の隙を見計らって連絡してるって言ってた。
大事な時間を、真っ先に私の為に使ってくれたってこと・・・・?
「・・・・やっぱりエマはエマですね」
「マルコもそれで信じかけたって言ってた」
ぽんぽん、と優しく頭を叩くエース隊長が笑った。
「私・・・っ頑張って見つけます!」
「あァ、絶対な」
絶対見つける、と気合を入れ直した時、
「エマから連絡ないな」
突然出て来たエマの名前にドキッとして、
思わずエース隊長と2人で隠れた。
「もうすぐ来るだろ?白ひげ海賊団制圧完了ってな」
はははっ、と楽しそうに笑うクルー2人。
今の状況も知らないで。
「エマのやつ上手いこと白ひげに近づいて薬盛れたんだろ?」
・・・・薬?
「鈍くさいから無理だろ」
「はははっ言えてら!」
「上手くやれるくらいなら母親の形見俺達にとられてねェってな!」
・・・・・っさっきから聞いてれば何なの。
「アコ、堪えろ」
「・・・・っはい」
エース隊長の辛そうな表情に口をぎゅっと結んだ。
上手くいけばブレスのありかを話してくれるかも。
黙って見守らないと。
「弱らせた白ひげを倒せばあんな海賊団すぐ終わるぜ、なぁ?」
「おお、名前だけだろ?」
その時ぴりっと肌が痛んだ。
隣のエース隊長を見たらものすごく怖い顔で。
ああこれが覇気だ、と実感した。
でもさすがにこれには、
「おい、何か・・・・」
「ああ」
2人も違和感を感じ始めた。
「エース隊長っ」
これ以上は駄目です、と抑えようと身体にしがみつこうとしたけど、
それより先にエース隊長が動いた。
「誰が何だって?」
あ。
・・・・・あー。
「・・・お前、火拳か!?」
「あァ、そうだ。お前らの計画は失敗したぜ」
「何だ、やっぱりエマのやつ失敗しやがったのか」
計画が失敗したとわかってなお2人はケラケラと笑った。
「随分余裕、ですね」
「火拳が居るとはいえもう1人は女だろ?楽勝じゃん、なぁ」
「・・・へェ、そうかい」
私は1人につかつかと歩み寄り、
へらへら笑ってるそいつの頬目掛けて拳を思いっきり突き出した。
「ぐぁ!?」
「女だから楽勝、とおっしゃいましたね?」
「ははっ、アコに先越されちまった。じゃ俺も」
とエース隊長も、どん。
「ぐはっ!?」
「ってめーら調子に乗ってると・・・」
そして目の前で炎が上がった。
「・・・・・乗ってると、何だって?」
「・・・う、そだろ」
「何かすぐ終わるとか言ってたな」
「うううう嘘です冗談です!なぁ!?」
「おおおおおう!」
「あんまり派手なことはしたくねェんだ。エマから奪ったものは何処にあるか教えろ」
「勿論教えます!・・・・誰だよ火拳なんて名ばかりで火なんか出せねーって言ったの!」
ぶつぶつ言いながら私たちを案内した場所は。
「船長室?」
「ここならエマは絶対手出せないから、ここに置いてるんだ・・・命令に背いた時に見せる為にもここに連れてきてた」
「・・・本当?」
「嘘じゃない!ほら、ドアを開けて見てみろって」
言われた通りこっそりとドアを開けて見たら、
確かにエマの言っていた真珠と珊瑚の綺麗なブレスが壁にかかってる。
「エース隊長間違いありません、あれです」
「今ここの頭は何処に居る?」
「船長なら甲板、だよな?」
「ああ、さっき居た」
「よし、じゃあ行くぞアコ」
「はい!」
ほっとしてドアを開けた瞬間、どん、と仲に突き飛ばされた。
え、何?
「バーカ!船長は甲板なんかにいやしねーよ!いるのは」
「この部屋さ!」
どでんと目の前に構えるこの船の船長らしき中年太り男。
「エース隊長・・・・っ」
「ほー火拳のエースか・・・」
「俺たちは言うことがコロコロ変わるのさ!馬鹿め!」
「船長!やっちまってくだせえ!」
勝ち誇った顔の2人と妙に自信ありげな船長に囲まれた。
「・・・・アコ。あのブレスは間違いなくエマのなんだよな?」
「は、はいっ」
「じゃあ頼む」
エース隊長は落ち着いた様子で、私にそう笑いかけた。
「・・・・はい!」
私の返事とほぼ同時に空気が熱くなった。
でも私は、見ない。
私は私に出来ることをやるだけ。
エマのブレス目掛けて腕を伸ばした。
「させるかっ」
「させてよねっ」
途中邪魔しようと別の腕が伸びてきたけど、私はそれを何とか避けて、
「エース隊長取りましたっ」
エマのブレスを強く握りしめた。
「良くやった!アコ!」
そして今度はエース隊長が炎をかき分けて私の腕を掴んでくれて、
「ひゃっ!?」
「ブレス離すなよアコ!」
エース隊長が私を抱え上げた。
・・・・お、お姫様抱っこされてるぅぅ!!
「はいぃ!!こっこのまま逃げるんですね!?」
「俺たちの仲間泣かした奴らを許すと思うか?」
「え?」
私を抱えながらストライカーの乗り込んだエース隊長。
「すぐ終わるから、目閉じていられるか?」
「・・・・はい」
ストライカーで1人、言われるがまま目を閉じて、
どごぉん、という派手な音。
「目、開けていいぜ。あとはモビーに帰るだけだ」
・・・・あ。船、壊れてる。
そっか、エマのブレス取り返したから船に用はないもんね。
これくらいいい気味。
「怪我ねェか?」
「はい、大丈夫です。・・・エース隊長は大丈夫ですか?」
「アコが居たから簡単だった」
「私は、何も・・・」
ストライカーが走り出したのでエース隊長に掴まった。
「つーか、悪い。アコに堪えろって言っておきながら俺が無理だった」
「仲間の悪口言われたからですよね?お気になさらないで下さい」
「アコが1番傷ついてたのにな」
「でもエース隊長、エマのブレスのこと聞いて下さったじゃないですか。そういうところ・・・大好きです」
「言っただろ?・・・アコが居たからだ」
優しい空気に包まれて、
私たちは無事にモビーに着いた。
「・・・エマ」
「・・・・・嘘よ」
「これじゃなかった?エマの・・・宝物」
離さなかった、ブレス。
エマに見せたら、
「・・・・・・・・・絶対無理だと思ってた」
小さい声で呟いた後、
「っぅ、ぁ、ぁああああっ!!!」
泣いた。
大きな声で、顔をくしゃくしゃにして。
私はそんなエマを抱きしめるしか出来なかった。
「母親の形見盗られてうちに仕方なく乗り込んだだけだから見逃せってのかい」
エマの処分はマルコ隊長にかかってる。
だから頭を下げに来た。
当然マルコ隊長は納得してくれてないけど。
「裏切らせてしまった私にも責任はあります。・・・同室者として、私も一緒に罰をお受けします」
「そんな甘い世界じゃねェんだよい」
「マルコも同罪だもんな」
後ろからエース隊長が援護してくれた。
「・・・・訳わかんねェこと言ってんなよいエース」
「何日か一緒に居てなーんも気づけなかったんだろ?訳聞いてマルコが取り返しに行ってりゃそれで済んだのに」
「言っただろい、甘い世界じゃねェんだ。自分のことは自分でケリつけるもんだい」
「仲間を大切にされてるマルコ隊長のお言葉とは思えませんが」
「・・・・エマを呼んで来いよい」
・・・・・ごめんエマ、今これが私に出来る精一杯。
出来れば私も一緒に、と思ったんだけど、
エマをマルコ隊長の所へ連れて行ったら、
「出入り禁止。・・・わかってるな?」
・・・・・駄目だった。
ホント不甲斐ないな、私。
友達1人守れないなんて。
「エマに何があってもアコのせいじゃねェよ」
ドアの前で立ち尽くすしかない私の頭をエース隊長が優しく撫でてくれた。
「・・・・・・私、マルコ隊長のおっしゃることも理解出来ます」
「・・・・そっかァ?」
「でもやっぱりエマは友達なので。・・・・もし何かあったらその時は、お許し下さい」
「・・・・大丈夫だ、きっと」
「・・・・・・・・そう、ですね」
大丈夫、きっと。
やっぱりそう信じるしかない私は、
無力だ。
+私は 終+