僕ときみと
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「あら、もう戻って来ちゃったの?冷凍室に閉じ込めたって聞いてたのに」
・・・私の良く知るエマから、
私の知らない顔のエマが、
冷たくそう言い放った。
知らない。
こんなエマ知らない。
何で、エマが。
「鍵かけなかったのは失敗だったな。押したら出られたぜ?」
答えられない私の代わりにエース隊長が答えてくれた。
でも、本当に何が起きてるんだか全然理解出来ない。
「・・・海楼石で出来てたはずじゃなかったかしら」
「あァ、だからアコの力を借りた」
・・・・私たちと、仕掛けた人間しか知らないはずのことを知ってる。
まだわからない。
何で、何でと疑問だけが頭を巡る。
「やっぱりお前だったんだな、エマ。オヤジの情報盗もうとしたスパイってのは」
エース隊長の一言に、頭に石が落ちて来たような衝撃。
「・・・・スパイ?」
「一部の人間しか入れない部屋が荒らされてたことあっただろ?」
「・・・・・はい」
「あれの犯人はエマだ」
「・・・・う、そ」
淡々と告げられるエース隊長の言葉は、私の頭に入って来ない。
「この女入って来た時から妙だと思ってたんだい」
「・・・・・マルコ隊長、ホント・・・なんですか?」
「お前も聞いただろい?」
「エマ・・・」
私の呼びかけにエマは今まで見たことのない程怖い顔で私を睨みつけた。
「やめてよね、気安く呼ぶの」
鋭い視線に、きつい声。
「エマ、だったの?」
「聞いてなかったの?マルコ隊長のおっしゃる通りよ」
「嘘でしょ?」
「しつこいわね。何なら全部教えてあげましょうか?」
「全部?」
「あの部屋に入ったのは私、情報を盗む為に。あそこには船長の大事な情報があるって聞いたから」
「・・・・船長、の情報」
「それと幽霊騒ぎ。あれも原因は私よ。枕元に電伝虫を隠してたの」
「電伝虫?」
「隠れて報告するの大変だったのよ?貴女が来るまでは1人で楽だったのに」
・・・あの時のエマの顔。
『・・・・私のベッド、調べてみた?』
『あ、私が軽く。でも何もなかったし、残念ながら捕まえられなかったけど』
『・・・・そう」
ほっとしたような、気まずさそうな。
「面倒なことになったと思ったけど任務だったから我慢して仲良くしてたの」
「・・・・エマは他の、海賊?」
「コロコロ海賊団。白ひげ海賊団を壊滅させようと思って入り込んだの。要の白ひげの具合が悪いって聞いたからチャンスでしょ?」
・・・・好きな人は船長よ、と花が開いたように微笑んでいたエマが。
こんなこと、言うなんて。
「アコ、もう休め」
エース隊長の声が遠い。
「ねえアコ、知ってた?私たち2人とも疑われてたのよ」
「え」
「エマもう黙れ」
「疑いが私だけじゃなかったからやりやすかったことはお礼を言うわ」
何処か挑戦的に私を見つめるエマを、
私もじっと見返す。
「・・・エマ本当は私のこと、」
「大っ嫌いだったわよ、ずっと」
「アコ、聞くな」
エース隊長が強く抱きしめてくれたけど、
今はもうそれすら気に留めていられなかった。
・・・・・私はこのエマの言葉にどう答えればいいんだろう。
「大嫌いだったのに、仲良くしてくれてたんだ?」
ただエマを見つめ返す。
「・・・そうよ」
エマも私から視線をはずそうとしない。
・・・・昔、何かの本で読んだことがあったっけ。
「そっか、有難う」
「任務の為よ!あんたの為じゃない!」
「任務の為でも大嫌いなコと仲良くするの苦痛だったでしょ?大変だったよね」
「な・・・・っ」
「それに私エマに言ったこと、嘘じゃない」
「なんの、こと・・・・」
「エマが同室で良かった、エマに会えて良かった。エマのおかげで今の私が居ると思ってるから」
「・・・馬鹿じゃない?」
「何で?楽しかったのは嘘じゃないし、助けられたのも嘘じゃないもん」
さっきまで冷たかったエマの表情が崩れて来た。
「勝手に思ってれば?」
「アコ・・・大丈夫なんだな?」
エース隊長の確認に私はこくりと頷いた。
「マルコ隊長、もう少し話しててもいいですか?」
「・・・手短に済ませろい」
「有難う御座います」
「話すことなんかもうないでしょ?さっさと殺すなりすれば?」
「聞きたいことがあるんだけど、エマ」
「・・・・何よ」
「今日この船を襲撃するってことは知ってた?」
「当然でしょ?少しでも勝率を高める為にエース隊長が居ない時を選んだんだから」
「私も居ないってわかってたんだよね?なのにエマ・・・今そのヘアピンつけてる」
私があげたヘアピンを。
「たまたま髪が邪魔だったからよ」
「他にも持ってるよね」
「ったまたまこれが近くにあっただけ!」
「じゃあエマ。・・・エマの宝物は誰かに盗られたの?」
私のこの言葉にエマが面白いほどの反応を示した。
「っ、な・・・に、言って・・・」
声が震えて、
顔は引き攣ってる。
『宝物は誰にも盗られちゃ駄目よ』
脳裏に過るエマの言葉。
それとこの表情。
「教えて。エマの宝物って何?」
「・・・・そんなもの」
「探し出すから」
「海の底でも?」
「海の底でも」
「バッカじゃないの!?死ぬわよ!」
「心配してくれるの?」
「心配なんか・・・っ」
「仲間の為に命かけてナンボでしょ?海賊って」
「私はもう仲間じゃない」
「でも友達」
「友達ですらないでしょ?私は裏切ったのよ、理解してないの?」
「友達だと・・・私は思ってる。だから言ってエマ。宝物は、何?」
エース隊長やマルコ隊長が怪訝な顔で私たちを見てる。
「・・・・・・・・っ、母の・・・形見のブレスレット」
エマがゆっくりと口を開いた。
「どんなの?」
「真珠とか珊瑚で作られた・・・」
「何処にあるかわかる?」
「コロコロ海賊団の本船、だと思うわ。でも無理よ」
「何が無理なの?」
「居場所なんかわからないし、わかったって船の何処にあるか・・・」
でもこれではっきりした。
「エマやっぱり脅されてたんだ、ね」
私の問いにエマは初めて涙を流した。
「エース隊長、マルコ隊長。・・・行って来ていいですか?」
返事の代わりにエース隊長からは大きな手が頭に乗せられた。
マルコ隊長からは、
「はー・・・・・」
大きなため息と、
「何を見つけたところで処罰は免れねェよい」
厳しいお言葉を頂いた。
・・・・私は、
私の知ってるエマを。
エマの涙を信じようと、思う。
・・・・・・・・昔、何かの本で読んだことがあったっけ。
女は嘘をつく時相手の目を見ようとして、
視線をはずさない。
+仲間の顔 終+