僕ときみと
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「エースに無視された?ああ、そりゃただ腹が減ってただけなんじゃねえの?」
「・・・・1回や2回じゃないんです。避けられてるっていうか」
サッチ隊長が元気ないな、と話しかけてくれたので相談してみる。
あれから1日が過ぎたけど、
明らかにエース隊長は私を避けている。
姿を見かけて声をかけようとすると必ず逃げられる。
・・・もし怒ってるなら謝りたいのに。
それすら出来ない。
それ程のことを私はしたんだろうか。
あんなに優しかったエース隊長を。
・・・・そこまで傷つけてしまったんだろうか。
「エースがねェ・・・・よし、じゃあこのサッチ様が一肌脱ぎますかね」
「・・・・・と言いますと?」
「今呼んでくるよ、エースの奴」
「いいんですか!?」
「ここで待ってな、アコちゃん」
「有難う御座います・・・!」
サッチ隊長に相談して良かった!
これで何とか・・・・何とか、なる?
サッチ隊長の背中を見送って、
不安になった。
・・・・私に会いたくない程のことをしてしまっておいて。
ごめんなさいの一言で許してもらうなんて私、おこがましいんじゃないだろうか。
むしろ、いつかエース隊長が許してくれるまでそっとしておいた方が。
そうだよ、今は同じ船に居る。
陰からそっと見守るだけでも。
顔が一瞬、見られるだけでも。
・・・・・・それで、いい。
辛くなんかない。
辛くなんか、ない。
しばらくして、サッチ隊長が1人で戻って来た。
「・・・悪い、エース見つけられなかった」
「そう・・・ですか」
言いながら少しだけほっとしてる自分が居た。
「ごめんなー役に立たなくて」
「いえ、いいんです。有難う御座いました」
もう医務室に行く時間。
サッチ隊長に一礼して、
医務室に向かった。
・・・・こんな時、エマが居たら良かったのに。
心からそう思った。
「アコちゃん今夜暇?」
「へ?」
医務室でいつものように雑談してたら、
指を切った、という人が来たので手当てしてたところ。
「俺の部屋来ない?」
「え、と・・・・」
「な、いいだろ」
「ごめんなさい、夜は大事な用が」
「え、男?」
「いえ・・・エマからの連絡を待ってるんです」
「エマちゃんかぁ、じゃあ仕方ないか」
「・・・すみません」
元々そういう気分でもないけど。
でもエマが、電伝虫で連絡するからね、と言ってくれてたから。
そろそろ連絡が来るんじゃないかなあと期待してる。
・・・・マルコ隊長が一緒じゃ難しいかな。
そう思ってたけど。
結局エース隊長とは話せないまま、
夜ご飯を食べ、部屋でエマの連絡を待つ。
「・・・・大丈夫ー?エマー」
私の独り言に答えるように、
『ぷるるるる・・・ぷるるるる・・・』
目の前の電伝虫が鳴った。
「エマっ!?」
『アコ?ごめんなさいね、連絡が遅くなってしまって』
「ううん、大丈夫。良かった、エマ無事で」
『今マルコ隊長の隙を見計らって電話しているの。だから少ししか話せないけど・・・変わりはなぁい?』
「あ・・・・う、ん」
『やあね、アコ嘘が下手。何があったの?』
本当は相談したかったけど、
今はエマだって辛いんだから、と言わないようにと思ってたんだけど。
心配してくれるエマの声に思わず泣きそうになった。
「・・・実は」
エース隊長との間にあったことを手短に話した。
『それは・・・・本当にエース隊長は怒ってらっしゃるのかしら』
「え、でも」
『怒っているんじゃなくて・・・他に理由があるんじゃない?』
「他に理由?」
『もしかしたら、だけど。エース隊長もお辛いのかもしれないわ』
「エース隊長も、辛い・・・・」
『アコが信じた人なんでしょう?』
「・・・っ有難うエマ!私頑張る!エマは大丈夫なの?」
『何とか、と言ったところかしら。大きな声じゃ言えないけどもう疲れたわ』
「何かされたら言ってね、エース隊長に協力してもらってマルコ隊長やっつけるから!」
『有難う、アコ。じゃあ、またね』
「おやすみ、エマ」
優しい笑顔の電電虫が、目を閉じた。
・・・やっぱり、私にとってエマは大きな存在だなぁ。
なんてしみじみと実感しつつ、
私は部屋を出た。
行く先は1つ。
私が迷わないで行ける場所。
深い深呼吸を1回だけして。
「っ失礼します!」
意を決して叫んで、ドアを開けた。
・・・・エース隊長は、いた。
エース隊長は、机に顔を伏せて、寝ていた。
そっとのぞき込むと、机の上にはエース隊長の弟として(船内では)有名な麦わらのルフィの手配書。
・・・いいなぁ、弟君。
エース隊長にこんなに思われて。
今度はエース隊長の寝顔もっとよく見よう、と顔を近づけたら。
「入る時はノックくれェしろよ・・・アコ」
突然エース隊長が顔を上げた。
「うぎゃあああ!!」
驚いて悲鳴を上げた私にエース隊長も驚いた様子で、
「・・・驚いてんのはこっちだっつーの」
「す・・・すみません・・・」
「・・・俺、用事あるから」
でもすぐに立ち上がってドアへ向かったエース隊長に、私は慌てて背中にしがみついた。
「あのっ・・・!!少しでいいんです!お時間頂けませんか!?」
「・・・って言われてもな」
「そこを何とか!お願いします!!」
「わかった。・・・わかったから離せって」
「っはい!・・・・すみません」
・・・冷静になれば私ものすごいことしてた。
エース隊長がこちらを向いて。
・・・久しぶりに、目が合った。
「あ・・・・あのですねっ」
「悪ィ。・・・用事なんかねェんだ」
ようやく話せると口を開いたら、エース隊長がそう言った。
・・・でもその顔は、辛そうな、今にも泣きそうにも見える。
「やっぱり、私のこと避けてました・・・よね?」
思い切って聞いてみた。
「あァ・・・」
エース隊長がゆっくりと頷いたのを見て、胸がちくりと痛んだ。
「・・・・私、エース隊長のこと大好きです。お側に居られるだけで幸せなんです」
「・・・アコ?」
目頭が熱くなってきて、視界が滲む。
それでも言いたい。
「だから・・・毎日元気な姿が見られればいいと思ってたんです。でも」
「・・・・でも、何だよ」
「・・・・良くありませんでした。辛くない、って思おうとしたんですけど」
やっぱり辛かったです。
言い切ったらぼろぼろと涙がこぼれた。
「アコ・・・」
「エース隊長と今までみたいにお話ししたいです。避けないで、頂きたいんです・・・どうすれば、いいですか?」
その為なら私きっと何でもする。
エース隊長は困ったように顔を歪めた後、
片手で自分の顔を覆った。
「・・・・俺と?」
「はいっ!だびすぎなので!!」
ああ!大好きって上手く言えなかった!
「・・・ありがとな、アコ。ごめん」
「いえ、たぶん私が何かしちゃったんでしょうから・・・・」
「アコは悪くねェんだ。俺が・・・何つーか、気まずくて」
久しぶりにエース隊長が笑ってくれた。
少しだけ、だけど。
「気まずい、とおっしゃいますと・・・?」
「・・・襲撃、あったろ?」
「はい、ありましたね」
「怖くなかったか?」
「襲撃は海賊の日常と心得ております」
「・・・じゃなくて。俺、アコに・・・」
言いにくそうなエース隊長にピンと来た。
「催眠術で操られてたことですか?」
「・・・あァ。情けねェよな。あっさり操られてアコ襲っちまうなんてよ」
ぐっと唇をかみしめて、本当に辛そうな表情。
「でも私は無事ですし。それに操られてたんですから、病気みたいなもんですよ」
「・・・そうか?」
「はい。ですから病気を治すのは私のお仕事です!」
・・・とか言って私じゃ何も出来なかったんだけど。
「・・・・そっか、サンキュアコ」
「いいえー」
これでお悩み解決?と思いきや、
「・・・・最後に1つ、聞いていいか?」
「はいっ何なりと!」
最後に1つ残っているらしい。
心して聞かねば!
「あん時俺・・・へ・・・変なこととか、しなかった・・・・よな?」
変なこと・・・・?
あの時のことを思い出そうとして、
真っ先に蘇った、エース隊長に抱きしめられている感覚。
「・・・っはい、何もなかったです」
「そ・・・そっか。ならいいんだ」
「はい・・・」
・・・ドキドキしながら、言葉を紡いだ。
いいの、私だけの思い出で。
うん。
「ほんとに悪かった。・・・もう逃げねェ」
「はい、有難う御座います。その言葉で十分です」
「・・・・んじゃあ、これだな」
「・・・はい」
2回目の、エース隊長との握手。
仲直りの証。
+大きい手 終+