僕ときみと
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「アコ・・・・」
「おかえりエマ。・・・・・どしたの?」
ある日エマが顔面蒼白で部屋に戻って来た。
「どうしよう私・・・」
「・・・何があったの?」
かと思えば涙目で、今にも泣きそう。
「私・・・選ばれちゃったみたいなの」
「選ばれた?何に?」
「アコは知らないわよね・・・あと何週間後かに島に着くの」
「うん、それで?」
「この船では行ったことのない島に着く時やオヤジ様の島を見て回る時、隊長とナースの2人で見に行くの」
「そうなの?」
「・・・今回、私が選ばれたの」
「・・・・嫌なの?」
「わかってるわ、本来ならとても名誉なことって」
「珍しいね、エマがそんなに嫌がるなんて。まるで・・・・・あ」
・・・・気づいてしまった。
言ってる途中で。
「・・・・気づいたのね、アコ」
「もしかして・・・マルコ隊長と2人で?」
「・・・・ええ」
がっくりと肩を落とすエマ。
・・・確かにこの間のことで少しは苦手意識が減ったかもしれないけど、
いきなり2人きりはきつい。
「私代わってあげようか?」
「嬉しいけど決定されたことは覆らないわ。それにそんなことしたらマルコ隊長の不興を買うこと間違いなしだもの」
うわあ、可哀想。
「・・・・どれくらい?」
「1週間」
「・・・・で、でもほら、マルコ隊長お1人が好きみたいだし!」
「基本的に2人で行動しなきゃいけないの」
「・・・・ご愁傷さま」
「今まではそれで恋人になったりとかもあったみたい。・・・泣きそう、私」
「でもマルコ隊長が本当は優しい人ってこの間でわかったでしょ?」
「・・・わかってはいるけど、気まずいことに変わりはないわ」
ふぅ、とエマにしては珍しく重いため息。
・・・嫌なんだなぁ。
「明日からしばらくはアコ、この部屋で1人ね」
「あ、そっか。寂しくなっちゃうね」
「他の人、部屋に入れないでね?」
「勿論」
「・・・エース隊長は例外でもいいわ」
「え!?」
突如出たエース隊長の名前にドキリ。
「ふふ、アコったら。チャンスでしょう?」
「ちゃ・・・チャンス?」
「私が居ないから寂しいんです、って言って連れ込んでしまえばいいのよ」
「・・・・エマって大胆だね」
「そう?普通だと思うけど」
・・・さすが海賊船のナース。
度胸ある。
・・・って私もナースだけど!
「私も頑張るから、アコも頑張るの。ね?」
「・・・・うん」
「私が帰って来た時何も進展なかったら怒るわよ」
「頑張りマス・・・!」
その日の夜、エマは本当に憂鬱そうに荷物の支度をして、
次の朝。
深い深いため息を残して出て行った。
・・・・・頑張れエマ。
私には心でそう祈るしか出来ないけど。
でも。
・・・・今回みたいなことがあるんなら。
私もいつか。
エース隊長と2人で何処かの島に、ってことがあるのかなぁ。
なんて想像してちょっとドキドキした。
・・・でも、すぐに寂しくなった。
医務室に居る時は平気でも、
お昼ご飯や、部屋に戻った時。
ふとした瞬間にエマの顔が脳裏に過る。
今頃何してるだろう、大丈夫かな。
夕飯を食べながら色々考えてしまう。
泣いてないといいんだけど・・・。
「お、今日は1人か」
「あ・・・エース隊長」
「そっか、エマ居ねェもんな」
「はい・・・すごく心配です」
「心配?何で」
エース隊長は私の言葉にきょとん。
「・・・マルコ隊長と2人、ですし」
「あァ、なるほどな。やっぱそう簡単には意識変わんねェか」
でもすぐに理解してくれて、きょとん顔は苦笑に変わった。
「マルコ隊長には失礼ですけど、あんな辛そうなエマ初めて見ました」
「・・・そんなに苦手なのか?」
「みたいですね。でもやっぱりマルコ隊長にも歩み寄って頂かないと、エマが可哀想です」
「でもあれがマルコだからなー」
「わかってはいるんですけど・・・」
「・・・・アコはマルコのこと苦手じゃねェんだろ?」
「今はそんなに・・・・でもエマに冷たい態度とる人は好きじゃないです」
エマは私の大切な友人だから。
「マルコなら、大丈夫だろ」
「・・・・はい、信じてます。でももし万が一、エマが泣いて帰って来た時は」
ぐ、っとスプーンを握る手に力が入る。
「・・・時は?」
「マルコ隊長といえど、ぶん殴ります」
「・・・すげェなアコ」
目を丸くするエース隊長に、
「・・・その時は協力してもらえませんか?」
・・・ちょっと情けないお願い。
そしたらエース隊長は笑って、
「殴るよりもっと面白ェこと手伝ってやるよ。その方がスカッとするぜ?」
「面白いこと、ですか?」
「酒に色々混ぜるとかな?」
「・・・・わお」
「背中にパイナップル描いた紙を貼るとか」
「あははっ、それ本当に出来たらエース隊長カッコいいですね!」
「な、そっちの方がいいだろ。それでも満足出来なかったら俺が殴ってやる」
「っ有難う御座います・・・!」
やっぱりエース隊長は優しくて、カッコイイ。
エース隊長のおかげで楽しい夕飯を終えて、
部屋に戻った。
1人の部屋。
・・・この船で1人って初めてかも。
・・・明日の準備、しよ。
今日寝れるかな。
お酒、飲んでおけば良かった。
・・・・寂しい。
ふと脳裏に過るエマの言葉。
『寂しいんです、って言って連れ込んでしまえばいいのよ』
・・・・いやいや。
そんなこと出来る訳、
「おーいアコー」
突然ドアの外からエース隊長の声が聞こえて驚いた。
「はい!?」
慌ててドアを開けたらエース隊長がお酒の瓶を持って立っていた。
「エマ居ないから暇だろ?一緒に飲まねェ?」
「え・・・いいんですか?」
「さっき飲んでなかっただろ、アコ。俺も飲み足りねェし」
「う・・・嬉しいです!」
予想外の出来事に心臓が暴れ出す。
「部屋・・・はまずいか、食堂戻るか?」
「あ・・・・っあの、エマが・・・エース隊長なら入れてもいいよって」
・・・言ってました。
そう言ったら、
「俺なら?」
エース隊長が首を傾げる。
・・・そりゃそうだ。
何でエース隊長だけ特別だって思われるよね・・・!
「や!ああああの!この間マルコ隊長とのことがあったので!!」
「ああ、そっか。気にすることねェのに。じゃあ、遠慮なく」
エース隊長は私の言葉を疑いもせず無邪気に笑って、それから深々とお辞儀した。
「お邪魔します」
・・・こういう変なとこで礼儀正しいとこ、好きだなぁ。
「どうぞ・・・!」
「へへ、実はツマミも持ってきてんだ」
「相変わらずよくお召し上がりになりますね・・・」
「アコも食えよ、美味いぜ?」
「頂きます・・・」
さっき夕飯食べたんだけどね・・・!
「美味いだろ?コレ」
「美味しいですけど・・・太りそうで」
「アコなら少しくらい太っても平気だろ?」
「そうでもないです・・・どうしましょう私のせいで船沈んだりしたら!」
「ぶははっ!面白いこと考えんなー」
「面白くありません・・・!」
「絶対ねェから安心しろって。それより眠くなったら言えよ」
「はいー大丈夫ですー」
エース隊長と2人きり!
こっ・・・・これは確かにチャンス!
あの時のことを、聞くチャンス。
でも・・・・!
「何なら一緒に寝てやろうか?」
「っえ・・・・エース隊長!?」
エース隊長のこの一言で頭からそんなこと飛んだ。
「寂しくて寝れねェだろ?」
エース隊長の顔を見れば、にやにや。
「・・・いいん、ですか?」
「・・・え?」
「お願いしても、いいですか」
エース隊長は2、3度瞬きをした後、
「・・・いいぜ」
優しく、笑った。
どくんと大きく心臓が跳ねた。
・・・おかしいな。
そんなに飲んでないはずなのに、
こんなに大胆な自分、
私は知らない。
+知らない自分 終+