僕ときみと
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駄目だった。
大丈夫だと思ったんだけど・・・私にはまだ無理だった。
情けない自分にがっくりと肩を落としながら、
軽くため息を吐く。
この広いモビーディック号で・・・私はなんてちっぽけなんだろう。
ちょっと自信喪失。
・・・・でも今は喪失してる場合じゃない。
この状況を打破しなければ。
死活問題だ。
・・・・・・迷うなんて。
「ここ何処だろ・・・・」
この薬をマルコ隊長に届けなきゃいけないのに。
マルコ隊長の部屋がわからない。
エマに1人で行ける?と聞かれて、
大丈夫、と答えたはいいものの。
大丈夫じゃなかった。
・・・・・でもエマはマルコ隊長が苦手だし、着いてきてもらうには申し訳ないから。
・・・これで良かったんだ。
迷ってるけど!
もう思い切ってここから叫んでみようかしら。
マルコ隊長ー何処ですかーって。
一瞬本気でやってみようと考えたけど、
怒られそうだからやめとくことにした。
でもこのまま薬を届けられなくても怒られる。
・・・・どのみち怒られるんなら。
すぅ、と息を吸った。
「マルコたいちょー!!!」
そして思いっきり叫んだ。
「まーるこたいちょー!!」
・・・・しばらく待ってみるけど返事はない。
よし、もう1回。
再び息を吸い込んだ時、
「マルコ探してんのか?」
ガチャ、と音がして部屋から出て来たのは、
「エース隊長!?」
・・・・探し人ではないけど、
会いたかった人。
「ここ俺の部屋。もしかして迷ったか?」
うわあバレた!
迷ってることがバレた!恥ずかしい!
「も・・・申し訳ありません・・・迷っております・・・」
「広いからな、モビーは。・・・にしても、あんな大声でマルコの名前叫ぶ奴初めて見た。はははっ」
「あ・・・あはは・・・すみません・・・」
・・・・やっぱ叫ばなきゃ良かった。
「マルコの部屋ならまだ先だから、連れてってやるよ」」
「え!?いやいや、場所を教えて頂ければ大丈夫です!」
「1人で帰れんの?」
「・・・・・・・・・・・・よろしくお願いします」
「素直でよろしい。・・・・で、何でマルコ探してたんだ?」
「あ、このお薬を届けるようにと」
「薬?・・・ああ、オヤジのか」
「はい、大事なお仕事です」
「医務室、暇だろ?」
「・・・・はい、とっても」
毎日準備だけはしっかりしているけど、
今のとこ怪我人は1人も来ていない。
「変な奴とか来てねェか?」
「変な人・・・ですか?」
「・・・あーまァ、何だ。その・・・何でもねェ」
・・・モビーに変な人が居るんだろうか。
歩きながら考えてみるけどわからなかった。
実際まだクルー全員の顔と名前一致どころか、
顔すら覚えきれてないし。
「ここがマルコの部屋。一緒に行ってやろうか?」
「いえ、薬お渡しするだけですし・・・」
「怖くねェか、マルコのこと」
エース隊長の優しい気遣いにきゅんとなる。
「エマは怖がってるみたいですけど、私はまだ何とも・・・」
「ああ、だからエマが一緒じゃなかったんだな」
「はい・・・・あ!い・・・今の内緒にして頂けませんか・・・!?」
エマに内緒って言われてたんだった!
忘れてた!
「ははっ、言わねェよンなこと。じゃあ大丈夫か?」
「はい!むしろどれだけ怖いか体験してきます!」
「・・・・アコすげェな」
「そうですか?じゃあ行って来ます」
「泣かされたらすぐ俺に言えよ」
「はい!」
エース隊長が居てくれるというだけで心強い。
コンコン、と強めに2回ノックすると、
「開いてるよい」
と淡々とした声が返って来た。
「ナースのアコです、失礼します」
そっとドアを開けると、眼鏡をかけて書類に目を通しているマルコ隊長が居た。
「ああ、薬だろい?」
「はい、こちらに」
ちょっとドキドキしながらマルコ隊長の元に行けば、
つまらなさそうな目で私を見ながら薬を受け取ってくれた。
「ご苦労さん」
「いえ・・・・あの」
「なんだい」
「差し出がましいようですがよろしければ珈琲でもご用意しましょうか?」
マルコ隊長の方が大変そうだったので、
余計なお世話を承知で行ってみたら、
「・・・ありがとよい。だが、さっき飲んだばっかりだから心配ねェよい」
一瞬目を丸くした後ふ、と笑った。
「あ、そうだったんですね・・・失礼しました。お仕事、程々になさって下さいね」
「人の心配する前に、ちゃんと部屋覚えろよい」
どん。
・・・痛いとこ突かれちゃったなぁ。
「・・・・ですね。では、失礼します」
一礼して、部屋を出た。
「・・・・・はぁ」
まったくマルコ隊長の言う通りだ。
情けない。
「お、落ち込んでんな?」
エース隊長が待っててくれてた。
「あ、いえ。落ち込んではいないんですが・・・」
「じゃあ怖かったか?」
「いえ、とっても優しかったです」
感じたままを言ったら、エース隊長が変な顔をした。
「優しかったァ?マルコが?」
「ちゃんと目を見て話して下さいましたし、しっかり手で受け取ってくれましたし」
「睨み付けられただろ?」
「・・・少し。でも敵意は感じられませんでしたし」
「・・・・へェ」
・・・あれ、気のせいかな。
今エース隊長の声音が少し低くなった気がした。
「・・・エース隊長?」
「で、落ち込んでたのは何でだよ。怒られたりした訳じゃねェんだろ?」
心配そうにのぞき込まれたエース隊長の顔が嬉しい。
「えーと、お仕事大変そうだったので珈琲をお持ちしましょうか、とお聞きしまして」
「断られて落ち込んでンのか?」
「いえ、その後に頑張って下さいと言ったら人のことより場所を覚えろよ、と」
「うわ、酷ェ」
「いやーあっはっは、もう反論出来ませんで」
「じゃあマルコの代わりに俺に淹れてくれよ、珈琲」
「え、」
「駄目か?」
「いいえ!喜んで!」
迷子万歳!
という訳でやって来た誰も居ない食堂。
エース隊長と2人きりでティータイム!
ずっと憧れてた時間、だ。
「ど・・・どうぞ」
「ありがとな」
とっ・・・・隣の席!
距離!距離近い!ぎゃあああ!!
な・・・何話そう!?
思い切って聞いてみようかな・・・私のこと覚えてませんか、って。
・・・・・・よし。
「あ・・・・・・・・あの」
「ん?」
「・・・・・・・えっと・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・・・・人、居ないですね」
・・・・・無理でした。
勇気出なかった・・・!
結局口から出たのは周りを見て思ったこと。
「あァ・・・もうすぐ健康診断だろ?」
「それは存じておりますが・・・・」
1週間後に健康診断があって、
エマが『私が大活躍なの』と言っていた。
え、でもそれと人が居ないのと何の関係が?
首をひねる私に、
「たるんだ身体ナースに見せられねェってよ」
「・・・・・・はあ」
面白そうにエース隊長が言った。
「ということは皆様今頃お部屋で鍛えてらっしゃると」
「ま、ほとんどそういうことだと思うぜ」
・・・・憧れの白ひげ海賊団の皆様のイメージが少し壊れた気がした。
「エース隊長は気になさる必要ないですもんね」
「まァな」
エース隊長の鍛えられた筋肉。
ついまじまじと見てしまう。
「・・・アコ」
「はい?」
名前を呼ばれたので顔をあげたら、
エース隊長が何とも言えない顔をしていた。
「・・・・そんなに俺の身体に興味あるか?」
「はぅ!」
慌てて顔を逸らした。
「・・・申し訳ありません!!」
「いや、別にいいんだけどよ」
何だか気まずくなって、2人同時に珈琲をすすった。
あぁ・・・恥ずかしい!
「あ・・・あの私!頑張って色んな場所覚えたいと思います!」
話題を逸らす為に叫んだら、
「おう、とりあえず俺の部屋だけ覚えろよ」
「え、でも」
「少しずつ覚えていきゃいいんだ、1度にたくさん覚えようとするから覚えられねェんだよ」
「はあ、なるほど」
「だから何かあったら俺の部屋に来れば助けてやるから。な?」
「・・・いいんですか?」
「ああ、遠慮しねェで来いよ!」
そう言って、
ゆっくりと優しく、私の頭を撫でてくれた。
「がっ頑張ってエース隊長の部屋覚えます!」
「俺の部屋来るのにも迷ったら今度は俺の名前呼べよな」
「っはい!」
ああ、迷子万歳。
+道に迷い 終+
大丈夫だと思ったんだけど・・・私にはまだ無理だった。
情けない自分にがっくりと肩を落としながら、
軽くため息を吐く。
この広いモビーディック号で・・・私はなんてちっぽけなんだろう。
ちょっと自信喪失。
・・・・でも今は喪失してる場合じゃない。
この状況を打破しなければ。
死活問題だ。
・・・・・・迷うなんて。
「ここ何処だろ・・・・」
この薬をマルコ隊長に届けなきゃいけないのに。
マルコ隊長の部屋がわからない。
エマに1人で行ける?と聞かれて、
大丈夫、と答えたはいいものの。
大丈夫じゃなかった。
・・・・・でもエマはマルコ隊長が苦手だし、着いてきてもらうには申し訳ないから。
・・・これで良かったんだ。
迷ってるけど!
もう思い切ってここから叫んでみようかしら。
マルコ隊長ー何処ですかーって。
一瞬本気でやってみようと考えたけど、
怒られそうだからやめとくことにした。
でもこのまま薬を届けられなくても怒られる。
・・・・どのみち怒られるんなら。
すぅ、と息を吸った。
「マルコたいちょー!!!」
そして思いっきり叫んだ。
「まーるこたいちょー!!」
・・・・しばらく待ってみるけど返事はない。
よし、もう1回。
再び息を吸い込んだ時、
「マルコ探してんのか?」
ガチャ、と音がして部屋から出て来たのは、
「エース隊長!?」
・・・・探し人ではないけど、
会いたかった人。
「ここ俺の部屋。もしかして迷ったか?」
うわあバレた!
迷ってることがバレた!恥ずかしい!
「も・・・申し訳ありません・・・迷っております・・・」
「広いからな、モビーは。・・・にしても、あんな大声でマルコの名前叫ぶ奴初めて見た。はははっ」
「あ・・・あはは・・・すみません・・・」
・・・・やっぱ叫ばなきゃ良かった。
「マルコの部屋ならまだ先だから、連れてってやるよ」」
「え!?いやいや、場所を教えて頂ければ大丈夫です!」
「1人で帰れんの?」
「・・・・・・・・・・・・よろしくお願いします」
「素直でよろしい。・・・・で、何でマルコ探してたんだ?」
「あ、このお薬を届けるようにと」
「薬?・・・ああ、オヤジのか」
「はい、大事なお仕事です」
「医務室、暇だろ?」
「・・・・はい、とっても」
毎日準備だけはしっかりしているけど、
今のとこ怪我人は1人も来ていない。
「変な奴とか来てねェか?」
「変な人・・・ですか?」
「・・・あーまァ、何だ。その・・・何でもねェ」
・・・モビーに変な人が居るんだろうか。
歩きながら考えてみるけどわからなかった。
実際まだクルー全員の顔と名前一致どころか、
顔すら覚えきれてないし。
「ここがマルコの部屋。一緒に行ってやろうか?」
「いえ、薬お渡しするだけですし・・・」
「怖くねェか、マルコのこと」
エース隊長の優しい気遣いにきゅんとなる。
「エマは怖がってるみたいですけど、私はまだ何とも・・・」
「ああ、だからエマが一緒じゃなかったんだな」
「はい・・・・あ!い・・・今の内緒にして頂けませんか・・・!?」
エマに内緒って言われてたんだった!
忘れてた!
「ははっ、言わねェよンなこと。じゃあ大丈夫か?」
「はい!むしろどれだけ怖いか体験してきます!」
「・・・・アコすげェな」
「そうですか?じゃあ行って来ます」
「泣かされたらすぐ俺に言えよ」
「はい!」
エース隊長が居てくれるというだけで心強い。
コンコン、と強めに2回ノックすると、
「開いてるよい」
と淡々とした声が返って来た。
「ナースのアコです、失礼します」
そっとドアを開けると、眼鏡をかけて書類に目を通しているマルコ隊長が居た。
「ああ、薬だろい?」
「はい、こちらに」
ちょっとドキドキしながらマルコ隊長の元に行けば、
つまらなさそうな目で私を見ながら薬を受け取ってくれた。
「ご苦労さん」
「いえ・・・・あの」
「なんだい」
「差し出がましいようですがよろしければ珈琲でもご用意しましょうか?」
マルコ隊長の方が大変そうだったので、
余計なお世話を承知で行ってみたら、
「・・・ありがとよい。だが、さっき飲んだばっかりだから心配ねェよい」
一瞬目を丸くした後ふ、と笑った。
「あ、そうだったんですね・・・失礼しました。お仕事、程々になさって下さいね」
「人の心配する前に、ちゃんと部屋覚えろよい」
どん。
・・・痛いとこ突かれちゃったなぁ。
「・・・・ですね。では、失礼します」
一礼して、部屋を出た。
「・・・・・はぁ」
まったくマルコ隊長の言う通りだ。
情けない。
「お、落ち込んでんな?」
エース隊長が待っててくれてた。
「あ、いえ。落ち込んではいないんですが・・・」
「じゃあ怖かったか?」
「いえ、とっても優しかったです」
感じたままを言ったら、エース隊長が変な顔をした。
「優しかったァ?マルコが?」
「ちゃんと目を見て話して下さいましたし、しっかり手で受け取ってくれましたし」
「睨み付けられただろ?」
「・・・少し。でも敵意は感じられませんでしたし」
「・・・・へェ」
・・・あれ、気のせいかな。
今エース隊長の声音が少し低くなった気がした。
「・・・エース隊長?」
「で、落ち込んでたのは何でだよ。怒られたりした訳じゃねェんだろ?」
心配そうにのぞき込まれたエース隊長の顔が嬉しい。
「えーと、お仕事大変そうだったので珈琲をお持ちしましょうか、とお聞きしまして」
「断られて落ち込んでンのか?」
「いえ、その後に頑張って下さいと言ったら人のことより場所を覚えろよ、と」
「うわ、酷ェ」
「いやーあっはっは、もう反論出来ませんで」
「じゃあマルコの代わりに俺に淹れてくれよ、珈琲」
「え、」
「駄目か?」
「いいえ!喜んで!」
迷子万歳!
という訳でやって来た誰も居ない食堂。
エース隊長と2人きりでティータイム!
ずっと憧れてた時間、だ。
「ど・・・どうぞ」
「ありがとな」
とっ・・・・隣の席!
距離!距離近い!ぎゃあああ!!
な・・・何話そう!?
思い切って聞いてみようかな・・・私のこと覚えてませんか、って。
・・・・・・よし。
「あ・・・・・・・・あの」
「ん?」
「・・・・・・・えっと・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・・・・人、居ないですね」
・・・・・無理でした。
勇気出なかった・・・!
結局口から出たのは周りを見て思ったこと。
「あァ・・・もうすぐ健康診断だろ?」
「それは存じておりますが・・・・」
1週間後に健康診断があって、
エマが『私が大活躍なの』と言っていた。
え、でもそれと人が居ないのと何の関係が?
首をひねる私に、
「たるんだ身体ナースに見せられねェってよ」
「・・・・・・はあ」
面白そうにエース隊長が言った。
「ということは皆様今頃お部屋で鍛えてらっしゃると」
「ま、ほとんどそういうことだと思うぜ」
・・・・憧れの白ひげ海賊団の皆様のイメージが少し壊れた気がした。
「エース隊長は気になさる必要ないですもんね」
「まァな」
エース隊長の鍛えられた筋肉。
ついまじまじと見てしまう。
「・・・アコ」
「はい?」
名前を呼ばれたので顔をあげたら、
エース隊長が何とも言えない顔をしていた。
「・・・・そんなに俺の身体に興味あるか?」
「はぅ!」
慌てて顔を逸らした。
「・・・申し訳ありません!!」
「いや、別にいいんだけどよ」
何だか気まずくなって、2人同時に珈琲をすすった。
あぁ・・・恥ずかしい!
「あ・・・あの私!頑張って色んな場所覚えたいと思います!」
話題を逸らす為に叫んだら、
「おう、とりあえず俺の部屋だけ覚えろよ」
「え、でも」
「少しずつ覚えていきゃいいんだ、1度にたくさん覚えようとするから覚えられねェんだよ」
「はあ、なるほど」
「だから何かあったら俺の部屋に来れば助けてやるから。な?」
「・・・いいんですか?」
「ああ、遠慮しねェで来いよ!」
そう言って、
ゆっくりと優しく、私の頭を撫でてくれた。
「がっ頑張ってエース隊長の部屋覚えます!」
「俺の部屋来るのにも迷ったら今度は俺の名前呼べよな」
「っはい!」
ああ、迷子万歳。
+道に迷い 終+