もう1つの家族
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『だいじょうぶだからね、エース』
薄暗いお化け屋敷の中で、
アイツはそう言って確かに笑った。
『絶対、守るから』
俺はびっくりして。
立ち止まって。
動けなくなった。
アコはそんな俺に気づかず進んで、
俺の名前を、呼ぶ。
俺を探して、
俺の名前を呼ぶ、アコの声。
『今それどころじゃないっつーの!つか何処が幸せそうに見える訳!?お前の目は節穴か!』
突然耳に響いた怒鳴り声にハッとした。
守る、なんて。
そんなの。
・・・・・・そんなの、
俺の台詞だろうが。
思いながら、こみあげてくる笑いを堪え切れなかった。
声に出して笑ったら、アコは俺に気づいて戻ってきた。
繋いだ手が、
やけに熱く感じた。
「食べすぎたあああ」
「そっか?俺はまだ食えるぜ」
「何で!?ねえ何でそんなに食べてるのに細いの?」
今まで食べたもの。
ラーメンにうどん、焼きソバ、たこ焼き、チュロス、ホットドッグ、お好み焼き。
アイスにクレープ。
勿論私は全部食べた訳じゃない。
エースは全部食べたけどね。
食べながら寝ちゃって周りの人に見られたけどね!
「よっし、もう一回ジェットコースターっての乗ろうぜ!」
「更に追い討ち!?」
でもなんだかんだエースも楽しんでるようで私は内心ほっとした。
最近のエースは何処か落ち込んでるようにも見えたから。
あ、だから気分転換したかったのかな。
・・・・・・お財布すっからかんだけど、まいっか。
「大丈夫か?アコ」
「だいじょぶじゃない・・・」
あれからジェットコースター何回乗ったと思ってるんだ。
私はふらふらで。
エースは全然余裕そう。
基礎体力からして違うもんねえ。
うぐう。
「んじゃ休むか?」
「うん、そうさせて・・・あ、あれ乗ろ、観覧車」
観覧車といえば休めるアトラクションの定番ですよ。
「あー・・・・落ち着く」
「ぷ。何処のばーさんだよお前」
「失敬な!まだ10代です!」
他愛ない話をしながらあがっていく観覧車。
ふと景色を見ると綺麗な夜景が見えた。
「もうすっかり夜だねえ。もう一個くらい乗ったら帰ろっか」
「もうそんな時間か。・・・・・なあアコ」
「んー?」
向かい合って座る私達。
私は窓から見える夜景に夢中で。
「知ってるか?この観覧車に乗って、頂上で男と女がキスすると奇跡が起こるんだってよ」
「へー・・・・って、は!?」
私は驚いて思わずエースを見る。
エースはにぃ、と笑って続けた。
「奇跡起きたら俺は帰れるかもなァ?」
「いやいやいやいや!初耳ですけど!?」
「協力してくれるんじゃねェの?」
「そりゃ、帰れるように協力はするけど!」
「じゃあしようぜ」
エースはそう言って立ち上がる。
揺れる観覧車。
私の隣へ、腰を下ろすエース。
私は頭がついていかなくて、
何が何だかで。
そうしてる間にも頂上へ向かっていく観覧車。
「アコ」
「え、あ、の、えと」
近づくエースの顔。
心臓の音がうるさいくらいに響いて。
唇が、近づいてきて。
「・・・っ」
私はエースから目を逸らすことも出来ず。
ふ、と。突然エースの顔が離れた。
「なんつって」
「・・・な、」
からかわれた!
怒鳴ってやろうかと思った。
でも出来なかった。
ぷい、と窓の外に顔を向けたエースを見たら。
何考えてるんだろう。
観覧車の動く音だけがやけに耳についた。
もうすぐ、頂上だ。
「エース」
名前を呼ばれて振り向いたエースの、
口元のすぐ横に、
私は勢い良く口付けた。
「・・・・・・何も起きないじゃん」
観覧車は下がり始めた。
私はエースに不満を漏らす。
でも心の中では安心してる自分がいて。
「やっぱ唇同士でないと駄目なんじゃねェ?」
エースは驚いた顔をしながら答える。
「・・・・・・・・・・マジか」
せっかく頑張ったのに!
ていうか今すんごい恥ずかしい!
「でも、良かった」
「・・・あ?」
「エースまだここにいて良かった」
思わず口から出た本音。
でも、こういう時くらいは素直になってもいいかとも思う。
「・・・いいのかよ」
「いいんだよ」
少し怒ったように聞くエースに私はそう言って笑った。
それから地上に着くまで、
私達は何も話さなかった。
+体重計には乗りません 終+