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居ない。
エースさんの部屋にも、
食堂にも。
・・・・・・・・・エースさんが、居ない。
「あれアコちゃんどーしたの?」
途中廊下で顔を真っ赤にしたサッチさんに会った。
・・・・・・・あれからどれだけ飲んだんだろう。
「あ、サッチさん、あの、エースさん見かけませんでした?」
「エース?あいつ今日見張り当番だったはずだけど」
「見張り?」
「夜の見張り当番。不審な船とかが近づいてこないか見張る奴のこと。行くんなら差し入れ持っててくれる?」
「あ、はい」
サッチさんから珈琲と夜食を渡されて。
ここ登っていくと居るはずだから、と近くまで案内してくれた梯子を見上げる。
ヤバイ、すっごく緊張する。
さっきから心臓が飛び出てきそうな程鳴っていて。
落ち着かせる為に深く深呼吸をして、
私は梯子に手をかけた。
何段か登ると、見えた見張り台。
「アコ!?」
「あ、エースさんお疲れ様です」
私を見て驚いたエースさんは、でもすぐに手を伸ばしてくれた。
「何でここに・・・ほら手ェ出せ」
「・・・・・・・お邪魔、します」
2人分座ってちょうどいいくらいの見張り台。
「あの、これ。サッチさんから差し入れ、です」
「・・・・・・ああ、持ってきてくれたのか。サンキュ」
サッチさんからの差し入れを渡すとエースさんは何処か寂しそうに笑んでそれを受け取った。
「思ってたより高いですね・・・」
「怖いか?」
「いえ、高いとこは好きです。眺めも素敵ですし」
そして思っていたより普通に話せてる自分にほっとした。
「それで?何か俺に用だったんだろ?」
「あ。・・・・えっと、あの、まず先程のことを謝らせて頂きたく思いまして」
「さっき?」
「・・・・・・・私、酔っちゃって」
思い出すだけで恥ずかしい。
「記憶、あんのか」
「・・・・・・・あります」
「じゃあ、約束な。俺の前以外で酒飲むなよ」
「・・・・はいっ」
そして優しく笑ってくれたエースさんは、そのまま私をゆっくり抱き寄せた。
「ふあっ!?」
予想外の行動に驚いた私に、
エースさんは小さく声を出した。
「アコ。・・・・・聞いてくれるか?」
「え?」
「俺の・・・・本当の父親、海賊王なんだ」
「・・・・・・・・・え」
ああ、そっか。
いつも船長さんのことをオヤジ、って呼んでるから忘れてたけど。
本当の父親が、居るんだ。
「たくさんの人を傷つけた。鬼と・・・呼ばれた。だから俺は、鬼の子だ」
「鬼・・・・」
「・・・・・・だから本当は、人を好きになる資格なんてねェんだ。アコに好きだって言ってもらう資格も」
耳元で聞こえるエースさんの声は、本当に小さくて。
でも私は聞き逃すまいと必死に耳を澄ました。
「ごめんな、アコ」
・・・・・・・・エースさんが鬼の子。
それは、きっとエースさんの心の深いところにある傷、なのかも。
それでも私は言いたい。
「・・・・海賊王さんの船には、たくさんの船員の方々が居たんでしょうね」
「・・・・・居たんじゃねェか。わかんねェけど」
エースさんはそっと身体を離す。
戸惑ってるような顔で私を見つめる。
それでも、肩に置かれた手はそのままで。
「じゃあきっと、たくさんの人に好かれてたんですね」
「え?」
「だって尊敬も出来ない、好きでもない人の船に乗らないでしょう?」
「・・・・・・・・・ああ」
「だから皆好きだったんですよ。エースさんのお父さんのこと」
「・・・・・・・でも世間からは鬼だって言われてたんだぜ?」
「仲間を守る為に戦ったから、だと思います。大切な人たちを守る為に鬼になったなら、素敵です」
それはきっと、
エースさんが私を守る為に戦ってくれたように。
だから傍から見たら鬼のようだったんじゃないかな。
「嫌いな人も居るかもしれないけど、
少なくともここに居る皆と、私はエースさんのことが好きですし、好きって言わせて欲しいです」
だって好きなんだもん。
「・・・・アコ」
「嬉しいです。そうやって名前呼んで下さることも。・・・好きだって言ってもらえることも」
目の前のエースさんの、驚いたような泣きそうな顔が愛しい。
「あ、あと好きなのでずっとエースさんの側に居たいんですけど、いいですか?」
そして今度は、
純粋な驚きの顔に変わったエースさん。
「・・・・・・・・は?」
「・・・・・・・帰りたくないんです。ずっとエースさんの隣に居たいんです。好きなので」
何だか思ってたような告白にはならなかったけど、思いはちゃんと伝えることが出来た。
「アコ?」
「はい」
「・・・帰りたいんじゃねェのか?」
「はい、今までは。でも今はエースさんと一緒に生きて行きたいです」
生きていこうと、決めた。
それが許されることなら。
「・・・・・・・・・・・・・やっべェ」
「エースさん?」
呆然と呟いたエースさんを呼びかけると、
再び抱きしめられた。
さっきより、強く。
「ほんとに、いいんだな?今更嘘とか言うなよ?」
「言いません、よ」
「・・・・・・・・すっげェ嬉しい」
「大好きです、エースさん」
「愛してる、アコ」
酷く優しいエースさんの笑顔と、
声。
そしてそのまま唇が、重なった。
「・・・・・・・・・・っ」
「アコ、」
「あああわわわ私そろそろ行きますね!」
初めてのキスが何だか恥ずかしくて、エースさんの顔見れなくて、
そのまま降りようと立ち上がった瞬間、
「待て」
「ぎゃああ!」
腕を捕まれて落ちかけた。
「ああああ危ないですよエースさんっ」
「だから待てって。・・・・別にとって食ったりしねェから」
「だだだだって恥ずかしい!」
「恥ずかしい顔も可愛いから別にいいだろ。それより・・・俺も用があんだよ」
今エースさんさらっとすごいこと言った!
でもとりあえず御用、ということで大人しく再び座ることにする。
「・・・・・・・・はて、何の御用でしょうか」
エースさんは私が座ったのを確認すると、ポケットを探って、何かを取り出した。
「これ。・・・・・もらってくれるか?」
「え。・・・・ええええ!?」
これ、と差し出されたそれは、
デートの時に私が気に入った銀の懐中時計。
「あの場で買いに行こうと思ったけどアコが止めるだろ?だからあん時・・・買いに行ってたんだよ」
・・・・・・・・・・もしかして海軍に見つかった時?
「う・・・・嬉しいですすごく!」
「アコが遠慮してたから迷ったけど、好きな女には喜んで欲しいんだよ」
・・・・・・・・ああもうっ!
さっきから嬉しくて恥ずかしいことばっかり!
「エースさんのタラシぃ!」
「は!?」
そしてそのまま私は今度こそ立ち上がり、
梯子を降りた。
「おいアコ、逃げんな!」
上から聞こえたエースさんの声に、
「見張り・・・頑張って下さいっ」
それだけ伝えて部屋に走った。
まだドキドキと高鳴る心臓がうるさい。
「・・・・・・・・・はう」
手の中の懐中時計が、
コチコチと音をたてて時を刻んでいて。
ずっとその音を聞いていたいと思った。
+心の奥深く 終+
エースさんの部屋にも、
食堂にも。
・・・・・・・・・エースさんが、居ない。
「あれアコちゃんどーしたの?」
途中廊下で顔を真っ赤にしたサッチさんに会った。
・・・・・・・あれからどれだけ飲んだんだろう。
「あ、サッチさん、あの、エースさん見かけませんでした?」
「エース?あいつ今日見張り当番だったはずだけど」
「見張り?」
「夜の見張り当番。不審な船とかが近づいてこないか見張る奴のこと。行くんなら差し入れ持っててくれる?」
「あ、はい」
サッチさんから珈琲と夜食を渡されて。
ここ登っていくと居るはずだから、と近くまで案内してくれた梯子を見上げる。
ヤバイ、すっごく緊張する。
さっきから心臓が飛び出てきそうな程鳴っていて。
落ち着かせる為に深く深呼吸をして、
私は梯子に手をかけた。
何段か登ると、見えた見張り台。
「アコ!?」
「あ、エースさんお疲れ様です」
私を見て驚いたエースさんは、でもすぐに手を伸ばしてくれた。
「何でここに・・・ほら手ェ出せ」
「・・・・・・・お邪魔、します」
2人分座ってちょうどいいくらいの見張り台。
「あの、これ。サッチさんから差し入れ、です」
「・・・・・・ああ、持ってきてくれたのか。サンキュ」
サッチさんからの差し入れを渡すとエースさんは何処か寂しそうに笑んでそれを受け取った。
「思ってたより高いですね・・・」
「怖いか?」
「いえ、高いとこは好きです。眺めも素敵ですし」
そして思っていたより普通に話せてる自分にほっとした。
「それで?何か俺に用だったんだろ?」
「あ。・・・・えっと、あの、まず先程のことを謝らせて頂きたく思いまして」
「さっき?」
「・・・・・・・私、酔っちゃって」
思い出すだけで恥ずかしい。
「記憶、あんのか」
「・・・・・・・あります」
「じゃあ、約束な。俺の前以外で酒飲むなよ」
「・・・・はいっ」
そして優しく笑ってくれたエースさんは、そのまま私をゆっくり抱き寄せた。
「ふあっ!?」
予想外の行動に驚いた私に、
エースさんは小さく声を出した。
「アコ。・・・・・聞いてくれるか?」
「え?」
「俺の・・・・本当の父親、海賊王なんだ」
「・・・・・・・・・え」
ああ、そっか。
いつも船長さんのことをオヤジ、って呼んでるから忘れてたけど。
本当の父親が、居るんだ。
「たくさんの人を傷つけた。鬼と・・・呼ばれた。だから俺は、鬼の子だ」
「鬼・・・・」
「・・・・・・だから本当は、人を好きになる資格なんてねェんだ。アコに好きだって言ってもらう資格も」
耳元で聞こえるエースさんの声は、本当に小さくて。
でも私は聞き逃すまいと必死に耳を澄ました。
「ごめんな、アコ」
・・・・・・・・エースさんが鬼の子。
それは、きっとエースさんの心の深いところにある傷、なのかも。
それでも私は言いたい。
「・・・・海賊王さんの船には、たくさんの船員の方々が居たんでしょうね」
「・・・・・居たんじゃねェか。わかんねェけど」
エースさんはそっと身体を離す。
戸惑ってるような顔で私を見つめる。
それでも、肩に置かれた手はそのままで。
「じゃあきっと、たくさんの人に好かれてたんですね」
「え?」
「だって尊敬も出来ない、好きでもない人の船に乗らないでしょう?」
「・・・・・・・・・ああ」
「だから皆好きだったんですよ。エースさんのお父さんのこと」
「・・・・・・・でも世間からは鬼だって言われてたんだぜ?」
「仲間を守る為に戦ったから、だと思います。大切な人たちを守る為に鬼になったなら、素敵です」
それはきっと、
エースさんが私を守る為に戦ってくれたように。
だから傍から見たら鬼のようだったんじゃないかな。
「嫌いな人も居るかもしれないけど、
少なくともここに居る皆と、私はエースさんのことが好きですし、好きって言わせて欲しいです」
だって好きなんだもん。
「・・・・アコ」
「嬉しいです。そうやって名前呼んで下さることも。・・・好きだって言ってもらえることも」
目の前のエースさんの、驚いたような泣きそうな顔が愛しい。
「あ、あと好きなのでずっとエースさんの側に居たいんですけど、いいですか?」
そして今度は、
純粋な驚きの顔に変わったエースさん。
「・・・・・・・・は?」
「・・・・・・・帰りたくないんです。ずっとエースさんの隣に居たいんです。好きなので」
何だか思ってたような告白にはならなかったけど、思いはちゃんと伝えることが出来た。
「アコ?」
「はい」
「・・・帰りたいんじゃねェのか?」
「はい、今までは。でも今はエースさんと一緒に生きて行きたいです」
生きていこうと、決めた。
それが許されることなら。
「・・・・・・・・・・・・・やっべェ」
「エースさん?」
呆然と呟いたエースさんを呼びかけると、
再び抱きしめられた。
さっきより、強く。
「ほんとに、いいんだな?今更嘘とか言うなよ?」
「言いません、よ」
「・・・・・・・・すっげェ嬉しい」
「大好きです、エースさん」
「愛してる、アコ」
酷く優しいエースさんの笑顔と、
声。
そしてそのまま唇が、重なった。
「・・・・・・・・・・っ」
「アコ、」
「あああわわわ私そろそろ行きますね!」
初めてのキスが何だか恥ずかしくて、エースさんの顔見れなくて、
そのまま降りようと立ち上がった瞬間、
「待て」
「ぎゃああ!」
腕を捕まれて落ちかけた。
「ああああ危ないですよエースさんっ」
「だから待てって。・・・・別にとって食ったりしねェから」
「だだだだって恥ずかしい!」
「恥ずかしい顔も可愛いから別にいいだろ。それより・・・俺も用があんだよ」
今エースさんさらっとすごいこと言った!
でもとりあえず御用、ということで大人しく再び座ることにする。
「・・・・・・・・はて、何の御用でしょうか」
エースさんは私が座ったのを確認すると、ポケットを探って、何かを取り出した。
「これ。・・・・・もらってくれるか?」
「え。・・・・ええええ!?」
これ、と差し出されたそれは、
デートの時に私が気に入った銀の懐中時計。
「あの場で買いに行こうと思ったけどアコが止めるだろ?だからあん時・・・買いに行ってたんだよ」
・・・・・・・・・・もしかして海軍に見つかった時?
「う・・・・嬉しいですすごく!」
「アコが遠慮してたから迷ったけど、好きな女には喜んで欲しいんだよ」
・・・・・・・・ああもうっ!
さっきから嬉しくて恥ずかしいことばっかり!
「エースさんのタラシぃ!」
「は!?」
そしてそのまま私は今度こそ立ち上がり、
梯子を降りた。
「おいアコ、逃げんな!」
上から聞こえたエースさんの声に、
「見張り・・・頑張って下さいっ」
それだけ伝えて部屋に走った。
まだドキドキと高鳴る心臓がうるさい。
「・・・・・・・・・はう」
手の中の懐中時計が、
コチコチと音をたてて時を刻んでいて。
ずっとその音を聞いていたいと思った。
+心の奥深く 終+