Thank you for...
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は、エースさんのことが好きなのかもしれない。
でもそれはまだ何となくで、
本当にそれが恋なのか自覚出来ないまま、
衝撃の発言を聞いた。
「海、ですか」
「ああ。そいつの場合は、だけどな」
エースさんが真剣な顔で、だけどとても興奮気味に私の部屋に入ってきて言うには、
前に見つかった例の、こちらから異世界へと行ってしまった人のことが詳しく分かったらしい。
そしてその人は海に飛び込んで居なくなったんだとか。
「その辺はわかってねェんだけど、誤って海に落ちたらしい。んで、その1ヵ月後に風呂場に戻ってきた」
「・・・・・・・・お風呂場?」
海じゃなくて?
「浴槽から急に出てきたんだとさ」
「・・・・・・不思議、ですね」
海に落ちて、お風呂場に戻って来た。
どういう関係なんだろう。
「アコ」
「・・・・・・・・・・はい」
「やってみるか?」
「え、」
「何処まで本当かはわからねェし、危険かもしれねェけどやってみる価値はあると思うぜ」
帰れる、かもしれない。
でもそれは・・・・エースさんとのお別れになるかもしれないことで。
迷う私に、
「心配すんな。何があっても何が出ても俺が守るから」
「・・・・・・・・・・海に、飛び込めばいいんですね」
「そうだ。泳げなかったらやめといた方がいいと思うけどな」
せっかく、エースさんが一生懸命に調べてくれたこと。
やらなきゃ。
「私、泳げます。やってみます」
覚悟を決めてそう伝えればエースさんも頷いてくれて。
そして2人で、甲板に立った。
「エースさん、あの、私・・・っはわぁ!?」
もしこのまま海に飛び込んだ私が、
自分の世界に戻ったとしたら、もうエースさんとは会えない。
だから何か伝えなきゃと、エースさんに向き合った瞬間強く腕をひかれた。
閉じ込められた腕の中。
いつの間にかそこは、私の中で安心する場所になってた。
あったかくて優しい場所。
「アコ・・・・・・アコ、」
エースさんは何か言おうとしていて、
でも聞こえてくる言葉は切なげに呼ぶ私の名前だけで。
・・・・・・・・だけなのに、胸が苦しくなる。
「エース、さん」
急すぎる事態の変化に戸惑う私も、
やっぱりエースさんの名前を呼ぶしか出来なかった。
だってこんな時何て言えばいいのかなんてわかんない。
「・・・・・海、冷たいですよねきっと」
「・・・・・・・・・・ああ、たぶんな」
「じゃあ、エースさんにお願いがあるんですけど」
「何でも叶えてやるよ」
冷たい海に飛び込んだ後。
「もし、私が自分の世界に戻らずに・・・このままここに残ったら」
「ああ」
「また、こうやってぎゅってしてくれませんか?・・・・風邪引かないように」
まだこの温もりが私の側に存在してるなら、
また感じることが出来るなら。
そう願った。
エースさんはいつもみたいに笑って、
「苦しい程ぎゅーってしてやるよ」
と言ってくれた。
「有難う御座います・・・・・じゃあ」
安心して進めます。
そっと、名残惜しそうに離れた身体。
精一杯の笑顔を向けて、
いざ。
私は海へ、飛び込んだ。
見つけた。
マルコが前に見つけた例の男の詳細。
どっかにあるはずだと必死に探していた結果、やっぱりあった。
何でそうなったかは書いてなかったものの、そいつは海に飛び込んで風呂場に帰ってきた。
もしアコが海に飛び込めば、
帰れるかもしれない。
・・・・・・・・・この事実をアコに伝えれば、アコは喜ぶだろうと思った。
ただアコが喜ぶことを考えて伝えに行ってみれば、
意外にもアコは喜んでいる、というより戸惑った様子で。
少しでもここから居なくなることを寂しいと思ってくれてるのか。
心の何処かで、
まだここに居たいと言ってくれることを望んでた。
しかしやってみるか、と聞いた俺にアコゆっくり頷いた。
だよな。
やっぱ帰れるなら帰りたいと思う、よな。
穏やかな波を前にして、何か言おうとしたアコの腕を引いて思わず抱きしめた。
もしこのまま、
アコが帰ってこなかったら。
そう考えたら、
行くな、と言いたいくらいだ。
・・・・・でも約束をしたのは俺だ。
何か言わねェと。そう思う。
なのに、
口から出るのはアコの名前ばかり。
情けねェ。
そしてアコからの、
「お願い」
何かと思えば、
『また、こうやってぎゅってしてくれませんか?・・・・風邪引かないように』
・・・・・・・・・・・そんなこと言われたらますます離したくなくなっちまう。
馬鹿、と言いたいのを抑えた。
それがアコの願いなら。
俺は全力で叶えてやるまでだ。
『苦しい程ぎゅーってしてやるよ』
そしてアコは満面の笑みを俺に見せて、
海に、
飛び込んだ。
+海へ 終+