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『明後日着く島に素敵なデートスポットがあるそうよ』
シンシアさんの言葉通り、
船は島に着いた。
・・・・・・・・・・昨日の夜エースさんから、
『明日、一緒に島回ろうぜ』
とお誘いがあった。
断る理由もなかったので頷いた、けど。
どうしよう。
今になってドキドキしてる。
これって一応デート、ってことになるの?
いやでも付き合ってないし。
・・・・・・・とりあえず着て行く服を決めなきゃ、と私は持っている服をすべて出してみた。
「アコ、行けるか?」
「はいっ行けます!」
待ち合わせ時間ぴったり。
エースさんが迎えに来てくれて、
ドアを開けて私は驚いた。
「・・・・・・・・・・・・・・エース、さん?」
「・・・・・どっか変か?」
不安そうに顔をゆがめたエースさんに私は思いきり首を横に振った。
変なんてことない。
ないけど、いつもと違うエースさん。
「・・・・・服、似合ってます。カッコイイ、です」
目の前で少し顔を赤くして居心地悪そうに立っているエースさんは、
いつもの上半身裸と違い、服を着ていた。
と言っても素肌に簡単な上着を羽織っているだけ、だけど。
・・・・・・・・・・・・・だけ、なのに。
「・・・・・・ん、行くぞ」
「あ、はい」
背を向けて足を進めたエースさんを慌てて追う。
・・・・・・・そのエースさんの見慣れない後ろ姿も。
そのエースさんの、耳が赤いことも。
すべてが私の目に焼きついて、離れない。
「あの・・・・・私エースさんにお願いがあるんですけど」
「お願い?何だ?」
エースさんと出掛けるということで、
心配なことが1つあった。
「今日は食い逃げしないで下さい」
これが結構切実。
けれどエースさんは私のお願いにがっくりと肩を落とした。
「・・・・・・・・・あのな、アコと居るのに食い逃げなんかしねェよ」
「え、あ、そ、そうですよね。私居たら逃げられないですもんね」
「逃げられるけどな」
「え!?でも私体力に自信ないですよ?」
「アコを抱えて逃げりゃいいんだろ?」
余裕、とでも言う風なエースさんの言い方に私の頭は真っ白。
「私重いですって!」
「そんな重く見えねェけどなァ。何なら今ここで抱えてやるよ」
「や!いいですいいです!」
「・・・・・・・・嫌なのか?」
「いいいい嫌とかではなくてですね!」
「じゃ遠慮なく」
「ぎゃあああ!嘘ですごめんなさいここでは嫌です!」
本当にやりかねないエースさんのぎらぎらした目に心臓がどうにかなりそうなほど跳ねて慌てて叫ぶ。
「ここでは、な。じゃあ2人きりの時ならいい訳か」
「ちがっ!言葉のアヤです今のは!」
でもエースさんはニヤニヤと楽しそうに笑う。
もう、心臓いくつあっても足りないんですけど。
「ま、何かあってもアコは絶対守ってやるから安心しろよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・よろしくお願いします」
この世界において私は最弱だ。
だからこればっかりはよろしくお願いするしかない。
「何か腹減ったな。飯食わねェ?」
「はいっ」
それから入った店では普通にご飯を食べて、(エースさん途中で寝てたけど)
エースさんがお金を払ってくれた。
・・・・・・・・・・ちゃんと、お会計してくれた。
「ご馳走様でした」
「結構美味かったな。・・・・どっか行きたいとこあるか?」
「ええと、特には」
というかそもそも私はこの島のことをほとんど知らないし。
「じゃあ適当にぶらぶらするか。・・・あとで行きたいとこあんだけど、いいか?」
「え?あ、はい」
それから2人でこの町の名物だという食べ物を食べたり、
雑貨を見たり。
「欲しいモンとかねェのか?」
「えーと・・・・・だいたいのものはこないだ買って頂きましたから」
「・・・・・・・・そういうんじゃなくてよ」
「靴はまだ履けますし、タオルも歯ブラシもあるしー」
「だからそういうんじゃねェって。・・・・指輪、とか」
「え!?そそそそんな、だだだ大丈夫です!」
エースさんの予想外の言葉に顔が一気に熱くなる。
ゆゆゆ指輪なんて!
「欲しいのあったら、俺に言えよ」
そう言ってさわやかに笑うエースさんに私はただこくりと頷くだけで精一杯。
そしてそのままエースさんの行きたい、というところへ向かうことに。
「・・・・・・・・・エースさんあの、行きたいとこ、って」
「もう少し先だな」
「・・・・・・・・・・・はい」
いたたまれない。
木々に囲まれた細い道のところどころに置かれているベンチ。
そこに必ずと言っていいほど存在するカップルさん達。
・・・・・・しかも、ラブラブで。
手を繋いでるのなんか当たり前。
抱き合っていたり、キスしていたりとやりたい放題で。
そんな光景に気が散ったせいか、
「わ!?」
足元にあった小さい石につまづいてしまった。
「っと」
あわや地面に顔面衝突、というところでエースさんに支えてもらい、避けることが出来た。
「大丈夫か?」
「す・・・・・・・・・・すみません」
「疲れたら言えよ」
「いえ、まだ大丈夫ですよっ」
「ならいいけど。・・・・この間も思ったけどよ、アコって歩きやすいな」
「・・・・・・・・・・はい?」
エースさんから突然に、歩きやすいとの評価を頂いた。
・・・・・・・・・歩きやすい?
「ナースと歩いてるだろ?そうするといつの間にか居なくなってんだよな」
・・・・・・・・それはエースさんの歩き方が早いのでは。
「でもアコとだと歩きやすい」
「・・・・・・有難う御座います?」
と言っていいものか。
ふとエースさんが、
「いいこと思いついた。アコ」
「え?・・・・って、え、あ、あの!?」
ニヤリと不敵に笑ったエースさんの手が私の手と絡んだ。
「この方がもっと歩きやすいだろ?転ぶこともねェし」
「は、い」
繋がれた手に心臓が爆発してしまうのではないかと思った。
「もしかして・・・・・・・ここ、ですか?」
たくさんのカップルの中を歩くこと数十分。
「ああ、そうだ」
目の前に広がる光景に私は思わず自分の状況を忘れた。
時刻はもう夕方で。
オレンジに染まる空。
夕日が、落ちていく。
その先に海。
「う、わあ・・・・・綺麗、ですねえ」
思わず呟いた言葉に、繋がれた手にぎゅっと力が入ったのがわかった。
「エースさん?」
「アコ。俺は約束する」
「・・・・・・・・・約束?」
真っ直ぐに前を見たまま話を続けるエースさん。
「明日からアコのことを考える。大切にする」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
どういうことかまったくわからない。
「シンシアに怒られた。自分の気持ちばっかり押し付けるなって。アコの気持ちも考えろってよ」
「そんな、」
「確かに今まで俺の気持ちを押し付けてたかもしれねェし、そこは反省した。だから明日から大事にする」
・・・・・・今日からじゃなくて明日からってとこがエースさんらしいかも。
でも、
「でもエースさん今までも大切にして下さってました。私、そんな押し付けられてたなんて思ってないです」
「いいから聞けって。・・・・まあだから、今日までは許してくれよ、ってことで」
「へ?」
こちらを向いたエースさんの顔が夕日に照らされてオレンジだな、と何となく思った瞬間の出来事。
あっという間に顔が近づいて。
頬を掠めた一瞬の熱。
ちゅ、という音と一緒に離れたエースさんの、顔。
「な!?なななな!!」
「よし!帰るか!」
手を繋いだままそう笑ったエースさんの顔は、
やっぱりスッキリした顔をしていた。
+明日からの約束 終+