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あと5枚。
・・・・・4枚、3枚、2枚。
よし、あと1枚っ!
「アコちゃん、それで終わり」
最後のお皿を洗い終えると、
サッチさんが優しく声をかけてくれた。
「有難う御座います!汚れとか残ってないですか?」
「全然!完璧だって!助かるよー」
「いえいえ、働かざるもの食うべからずですから」
そう、働かざるもの食うべからず。
ということで私に出来ることを考えた結果が、厨房のお手伝い。
と言っても料理の腕はないので、(多少は出来るけど)結果皿洗いに落ち着いた。
「下手な新人より安定してるから安心して見てられるねーアコちゃん」
「ここに来るまでレストランでバイトしてましたから。たまに皿洗いしてたんですよー」
なんてほのぼのと会話してると、
「いつまでアコと話してんだよサッチ。終わったんなら返せ」
エースさんが不機嫌な声を出す。
「返せってお前な。アコちゃんはお前のじゃないだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「え、何。まさか付き合ってんの2人?」
無言のエースさんをどうとったのかサッチさんが驚いて私を見る。
私は慌てて首を振って、
「つつつ付き合ってません!」
「じゃあ告られた?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
けれどこれには頷くしかなくて。
「とにかくあんまアコこき使うなよサッチ」
「へえ、そーいうこと」
「や、あの、私は別に!」
「いいっていいって。こっちはホントにもう大丈夫だからさ」
「あ・・・・・有難う御座います。それじゃお言葉に甘えますね」
何だか恥ずかしさでいっぱいだけども、とにかく皿洗いを終えたので、軽く手を洗ってエースさんのもとへ急ぐ。
ここだけの話、
ここまでこぎつけるのがものすごく大変だった。
何が、というとエースさんが、だ。
『皿洗いを手伝う?そんなことしなくていいだろ別に』
ただここにお世話になるだけ、という訳にもいかないので、その提案をしたところエースさんに即効で却下された。
『でも私船長さんのお金で服とか買っちゃいましたし、食費とかもかかるじゃないですか』
『この船に何人居ると思ってんだよ。1人くらい増えたって変わんねェって』
『え、でも』
『よく考えてみろアコ。厨房にはいつもサッチが居るんだぞ?』
『はあ、そうですね』
『何されるかわかったもんじゃねェだろ』
『ええ!?』
至って真面目な顔でそう言うエースさんに苦笑するしかない。
そりゃサッチさんは女好きらしいけど、
『こんな小娘相手にしませんて。サッチさんどっちかって言うとナースのお姉さんの方が好みですよ』
『あいつこないだアコのこと可愛いって言ってた』
『・・・・・・・・それは妹みたいって意味ですよ』
『忘れんなよアコ。ここは海賊船で、サッチも海賊だからな』
『んーでもサッチさんてナースさんの中に好きな人居るような気がするんですよね』
『・・・・・・・ナースん中に?』
ここ数日、サッチさんともよく話すようになって何となく感じてた。
食堂にナースさんが居るときに向けた視線とか、表情とか。
そんなものから本当に何となくだけど、
ナースさんの誰かが好きなんじゃないかなと思った。
『そういう訳なんで、皿洗いのお手伝い、しでもいいですよね?』
『駄目だ』
『・・・・・・・・・・・でも何かあってもエースさんが助けに来てくれますよね』
本当は言いたくなかったけど、
ここまで言わないと許してくれなさそうだったから。
エースさんは思い切り顔を顰めて、
それはもう深い深いため息を吐いた後、
『わかった』
と短く呟いた。
『やった!』
『その代わりアコが皿洗いしてる時は俺の見てる前でな』
『ええええええ!?』
喜びに小さくガッツポーズしたのも束の間。
予想外の台詞に驚いた。
『何だよ何か問題あるか?』
『ででででもエースさんだってお忙しいでしょうし申し訳ないです』
『俺はいいんだよ。側に居なきゃなんかあった時助けに行けねェだろ?』
『それは、そう、なんですけど』
戸惑う私にエースさんの口から出た、
トドメの言葉。
『俺がアコを見ていたいだけだ。悪ィか』
何処か拗ねたような口ぶりと表情にノックアウト。
『・・・・・・・・よろしくお願いします』
という訳で。
エースさんが側に居ることを条件に皿洗いのお手伝いが承諾された。
お手伝いを申し出ればサッチさんは喜んでくれたし。
それは、いいんだけど。
「お疲れ、アコ」
「エースさんも、お疲れ様です」
お疲れ、と言いながら優しく頭を撫でてくれるエースさんに心臓が爆発しそうになりながら、
平常心を心がける。
「エース隊長、アコ!ちょうどいいところに」
とそこへ話しかけてきたのはシンシアさん。
「シンシアさん、こんにちは」
「ねえアコ、これから一緒にお茶しない?サッチ隊長がケーキ焼いて下さる約束なの」
「ケーキ・・・・・!」
ごくりと喉が鳴る。
「良ければエース隊長も。とっておきの情報も手に入れたんですけど」
「それを早く言えよ。付き合うぜ」
ドキッとした。
とっておきの情報。
それは私が帰れるものかもしれなくて。
「サッチ隊長、ケーキと飲み物2人分追加お願いしますね」
「任せとけって」
「急にすみません、サッチさん」
「サッチ様に不可能はないってんだよ、アコちゃん」
あれ。
「どうした?アコ」
今一瞬感じた違和感。
「・・・・・・・・・・いえ、何でも」
でもそれはあまりにも一瞬過ぎてわからなかった。
「サッチ隊長のスイーツ美味しいのよ。アコも甘いのは好き?」
「はい、大好きです!」
3人で座って話しながらケーキとお茶を待つ。
「んなことよりシンシア、とっておきの情報っての教えてくれよ」
真剣な顔のエースさんに思わず胸が高鳴る。
絶対俺が家まで帰してやる、って。
言ってくれた言葉が、気持ちが本当なんだなって伝わってくる。
嬉しいような、少しだけ寂しいような。
「ええ、そうね。それじゃエース隊長、心して聞いてくださいね」
「・・・・・・・ああ」
私が帰れるかもしれない情報。
どんなものなのか。
どくんどくん、と心臓の音。
そしてシンシアさんの口から出た言葉は、
「明後日着く島に素敵なデートスポットがあるそうよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「え?・・・・・・シンシアさん?」
「あら。なあに?」
可愛らしく首を傾げるシンシアさんに思い切り困惑する私とエースさん。
「エース隊長がアコのこと口説いてるっていうから。エース隊長にとってはとっておきの情報でしょ?」
にっこり微笑むシンシアさんに一気に脱力するのを感じた。
「・・・・・・・・・・・・・覚えとく」
それでもぽつりとそう答えたエースさんに、
赤面を隠せない私は、
ただただケーキとお茶が到着するのを待った。
+お手伝い 終+