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「1番がマルコさん、エースさんが2番で3番がジョズさん。4番がサッチさん、ですよね」
「そうだ」
「5番がビスタさん、6番がブラメンコさんで、ドレッドヘアの方が7番のラクヨウさん」
「ん」
「それからナミュールさんにブレインハムさんで、うわあああもう覚えられませんっ!」
先ほど私の歓迎会、という名の宴が始まった。
そこでエースさんが、
隊長だけでも覚えとけ、と紹介してくれた各隊長さん達。
皆それぞれに特徴があるんだけど、皆特徴ある人ばかりだから逆に覚えにくい。
「和服の人は16番のイゾウさん、ですよね。ハルタさんが12番」
「はははっ、まあそこまで覚えられりゃいいんじゃねェか?」
「申し訳ありません・・・・!」
「いいって。こっちもたいした情報入らなかったしな」
「いえ、そんな」
エースさんは私を皆に紹介してくれながら、日本を知らないか、東京を知らないかと聞いてくれた。
けれど返って来る答えはNO。
唯一近い情報だったのは、
私の話を聞いて、「和の国に似ている」と言ってくれたイゾウさんの話。
でも和の国は私の知ってる日本とは違うところがかなり多かった。
・・・・・・というか、
侍とか、和服とか。
それは昔の日本だ。
一瞬過去に来てしまったのかも、と思ったりもしたけど、
それでも世界のどこかにグランドラインもレッドラインもあるなんて聞いたことない。
やっぱり全然違う世界に来てしまったと思うのが自然なのかも。
・・・・・・・・もしそうだとしたら。
私はどうしてこの世界に来たのか。
帰れるのか。
「ンな顔すんな。オヤジはすげェんだぜ?俺だってついてる。何とかしてやるよ、絶対」
「あ、」
不安がそのまま顔に出てたみたいで、
エースさんが元気付けるように笑いかけてくれて。
・・・・・・・うん、ほんとに元気出る。
「有難う、御座います」
「アコちゃーん食べてるー!?」
「お、肉か」
肉料理を持って来てくれたサッチさん。
けれどその手に持っていたお肉料理はあっという間にエースさんのお腹の中。
・・・・・・・相変わらず食べるの早いな。
「てめエース!お前の為に持ってきたんじゃねえぞ!」
「いいじゃねェか別に」
「よくねえってんだよ!これはアコちゃんの為に持って来たんだ!」
あ、何か不穏な空気。
「あの、サッチさん有難う御座います。私もちゃんと頂いてますから」
「アコちゃんいい子だ・・・!困ってることあったらいつでも言って!」
「やめとけよアコ。リーゼントだぜ」
「リーゼント関係ないだろうが!」
「ああ、えっとあの、じゃあ節約料理とかあったら教えて欲しいです!」
たぶんこれはこれで仲が良いとは思うんだけど、ちょっと対応に困るので話を変えないと。
「節約料理?いいけど何で?」
「私普段は貧乏学生なんですよ。なので自分の世界に戻った時に役立てたいな、と」
我ながらいいアイディア、と思ったんだけど。
何故か2人は一瞬固まった。
「え、あれ。サッチさん?エースさん?」
「あー・・・・・・・・いや、何でもねェ」
「なるほどなァ。苦労してんだ、アコちゃんは」
エースさんは怒ったように顔を背けて、
サッチさんはうんうんと頷く。
「じゃあ厨房で何か一緒に作るとしますかね」
「よろしくお願いします!あ、エースさん行って来ます」
「・・・・・・・・・・おう」
一応エースさんにも声をかけたんだけど、
何故かエースさんは不機嫌に短く返事をしてくれただけ。
・・・・・・・・・・・何か怒らせちゃったかな。
さっきまでは普通だったのに。
「アコちゃん?」
「あ、あの、サッチさん、私エースさん怒らせちゃったでしょうか」
「ああ、エース?気にしなくていいって」
「でも」
「2人で居る時はちゃんと優しいんじゃないの?」
「それは・・・・・はい」
「じゃあ大丈夫だって。で、節約料理ね」
「あ、はい」
厨房に着いた私はサッチさんに節約料理を教えてもらうことになった。
でも心の中はさっきのエースさんの態度にもやもやしたままで。
少し、胸が痛んだ。
まずかった。
アコの顔を見て思ったが、もう遅い。
サッチに連れてかれたアコの後姿を見て軽く舌打ちをした。
『自分の世界に戻った時に役立てたいな、と』
アコがそう言った時、聞きたくなかったことを聞いた気がした。
出かけた時だって、
聞きたくなかったから聞かなかったのに。
わかってたはずだ。
当然だ。
自分の居るべき場所に戻りたいと思うのは。
アコは悪くない。
悪いのは・・・・・どう考えても、俺だ。
「エースさん?」
「・・・・・・・・アコ?」
サッチと厨房に行ったはずのアコが目の前に居て、少し驚いた。
やべェ、気づけなかった。
「これ、食べてもらえませんか?」
「・・・・・・野菜炒め?」
「サッチさんに教わって作ったんです。でも私もうお腹いっぱいなので」
「・・・・・・・・・・頂きます」
アコはさっきのことなんか何もなかったかのようににこにこと笑みを浮かべて話しかけてくる。
少し戸惑ってから、目の前に差し出された野菜炒めを口に入れた。
「美味い」
「ほんとですか!?やった!」
「これが節約料理か?」
「はい!節約レシピの他にもクッキーとかいっぱい教えてもらいましたー!」
そう言ってはしゃぐ姿は子供っぽくて、
可愛いと思うのに胸に残るもやもやした、何か。
「そっか。良かったな」
「有難うございます。他の皆さんにも配ってきますね!」
言いながら背を向けたアコに、
「・・・・・・・・・・・・何で他の奴にも作ってんだよ」
俺だけでいいだろ、と自然と呟いていた。
アコの姿が見えなくなって何分たったか、目の前にサッチが見えた。
「サッチ、アコは?」
「アコちゃんなら疲れたから今日は部屋に戻るってよ」
「・・・・・・・・・・あ、そ」
あーイライラする。
何で俺に声かけねェんだよ、とか。
・・・・・・・考えてみりゃそんな必要ないのはわかるのに。
アコの部屋は俺の隣だったな、と頭の端で考えた。
今日は疲れたので部屋に戻りますね、とサッチさんにお礼を言って部屋に戻ってきた。
・・・・・・・・・・・ここが私の部屋。
宴、楽しかったな。
最近は1人で居ることに慣れてたから、
余計に。
外はまだ騒がしくて、でも全然嫌な喧騒じゃなくて心がほんのりあったかい。
でもここでは私の知らないことが多すぎて、まだ戸惑う。
部屋に戻ってくる時エースさんに声をかけようかと思ったけど、
何となく声をかけられなかった。
・・・・・・・・・・・・・・駄目だな。
私。
いつの間にかエースさん頼りっぱなしにしてた。
甘えちゃ駄目。
自分でも出来る限りのことはしなければ。
そう、思うのに。
わからないことが多すぎて、
不安で頭がいっぱいで、
心が、痛い。
「・・・・・・・・・・・・・っ」
目に溜まった涙はそのまま流れて。
でもどうせ1人だし、いいかとそのままにしていた。
「アコ、入るぜ」
「え!?」
何ですと!?今!?
コンコン、と軽いノック音の後返事も聞かずに入ってきたエースさんは私の顔を見て目を見開いた。
私はといえば、急に涙を止められるわけもなく。
「・・・・・・・・・・・・泣いてたのか?」
「や!あの!泣いてない・・・・こともないです、が」
泣いてないですよ、と言おうとしたけど、こんな状態で言ったところでバレバレで。
途中でやめた。
「誰かに何かされたか?・・・・・つーか、俺のせい、か?」
「ちちち違いますよ!何となくです!」
俺のせい、と聞くエースさんの顔が何だか切なくて慌てて否定するけど、
「じゃあ何で泣いてんだよ」
エースさんは信じてくれてない。
「それは、その。・・・・・本当に、何となくです」
「嘘つくな」
突き刺さる鋭い視線に、
再び零れてくる涙。
「あの、その、ですねっ、不安がやっぱり、ありまして!・・・・だから、その」
それ以上何て言っていいか言葉に詰まった私は、不意に温かいぬくもりに包まれた。
「え、あ、え、えええええエースさん!?」
心臓がどくんと跳ねて、ドキドキと暴れだす。
「・・・・・・・・・・・・悪かった」
その言葉は優しくて。
落ち着かなかった心音はゆっくりと、段々と落ち着いてきた。
頑張らなきゃ、と思う気持ちと裏腹に、
私はエースさんの腕に身体を預けた。
+聞きたくなかった 終+