何度でも、君と
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「お酒、そろそろ終わりにした方がいいんじゃないですか?」
「そうか?いつもこれくらい普通に飲むぞ」
次々に並べられていく空き缶。
・・・・・・・・・さすがに先輩の身体が心配だ。
「私何か作りますから、ご飯にしましょうよ」
「作ってくれるのか?」
「お酒終わりにするなら」
「これに乗らない手はないだろう。何を作ってくれるんだ?」
子供のような笑顔を見せる先輩にドキドキしながら、
「冷蔵庫見ますね。・・・・・・・・・・んー炒飯、とかどうですか?」
冷蔵庫にハムと卵とネギがあった。
横の炊飯器を見ればご飯も少し残ってるし。
「好物だ。頼むよ」
「じゃあ、台所お借りします。普段自炊されるんですか?」
「滅多にしねえなァ。たまーにベンが来て飯は炊いてくれるが」
「・・・・・・・・・・・素敵な奥さんがいらっしゃるんですね」
「・・・・・・・笑えねェ。俺の奥さんはアコだけでいい」
よっぽど嫌だったのか、先輩はものすごーく嫌そうに顔を歪めた。
「どうぞ」
本当に簡単な物だけど、炒飯を作って出してみる。
「お、美味そうだな。いただきます」
ぱく、と一口。
「美味い。・・・・・・・・こんな飯なら毎日でもいいな」
「・・・・・・・・・有難う御座います。あ、テレビつけてもいいですか?」
「ああ」
急に恥ずかしくなって、誤魔化すように話題を変えた。
了解を得てテレビをつけると、大画面に楽しそうな遊園地が映った。
・・・・・・・この遊園地、行ったことがある。
昔、先輩と。
「懐かしいな、この遊園地」
先輩も思い出したようで、目を細めてそう笑った。
「・・・・・・・・・・・・・ですね」
「覚えてるか?ここのお化け屋敷入った時」
「結構怖かったですよね」
「いや、お前全然怖がってなかっただろ」
「え、そうでしたっけ」
何せ18年も前のこと。
デートで行ったのは覚えてるんだけど。
「女の人形が転がって血まみれになった時、救急車!って騒いだり」
「え」
「血の池地獄からたくさん手が出て手招きした時なんか、あの手は綺麗だけどこの手は汚いとか言ってたな」
「あ」
あ・・・・・・思い出しちゃった、かも。
「俺は怖がってくっついて来てくれることを期待してたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・えーと、すみません」
何やら悲しそうな先輩の顔に思わず謝っちゃったけど。
「まあ、それはそれで可愛かったんだがな」
・・・・・・・・・・・駄目だ、
先輩と居ると身がもたない。
・・・・・・・ドキドキして、どうにかなっちゃいそう。
優しい眼差しに思わず目をそらした。
「あれから1ヵ月後だったな、アコから別れを切り出されたのは」
「・・・・・・・・・そう、でしたっけ」
不意に切り出されたその話題に思わず胸が痛んだ。
「アコが許してくれるまで、おれはいつまでも待つつもりだ」
「・・・・・・・・・・・・・もう、とっくに許してるんですけどね」
「・・・・・・・・・どういうことだ?」
「あれは浮気じゃなかった。少なくとも先輩にその気はなかったって。教えてくれました」
「教えてくれた?誰が?」
「私を呼び出して土下座させようとした先輩が。あの時のお詫びだって」
卒業式の日。
あの時はごめんなさい、と。
そして先輩とキスをしたあの人は、
ずっと前からシャンクス先輩が好きだったんだと言われた。
「あの日、私が教室に行くことを知ってて、あんな風になることを見計らってたって」
「それでも、アコを傷つけたのは事実だ」
「もう18年も前のことですよ。・・・もう、いいんです」
「なら」
「先輩への気持ちが恋じゃないって気づいただけ、です」
口にする度に胸がちくちく痛いのは、
「・・・・・それがアコの本音か?」
「そう、です」
嘘をついているから。
顔が見れなくて俯く私の頬に、
先輩の手が添えられた。
「知ってるか?アコ。高校の時のアコの評判」
「・・・・・・・・・・・評判?」
見当ハズレの話題に驚いて顔をあげれば、
酷く優しい表情の先輩が見えた。
・・・・・・・・・何で?
「服装も素行も問題ない、成績も普通なのに問題児、だ」
「はぁ!?何ですかそれ初耳です!」
私は今までのことも忘れてそう叫んだ。
だってそんなの知らない!
「教師に逆らう生徒、ってな。それがまた正論なんだと」
「それは・・・・たぶん先生たちが間違えてるのに謝らなかったから」
「アコのクラスメイトが言ってたよ。全部友達の為だったって」
「・・・・・・・・・・詳しくは覚えてません、けど」
「普段は真面目で大人しいのに、教師だろうが先輩だろうが仲間の為ならすごい勢いで文句が言える。
そう聞いていた」
そんなの初めて聞いた。
先輩は楽しそうな笑みを浮かべて続ける。
「アコがあの時屋上で土下座しようとしたのも友人の為だったんだろう?普段のアコなら口でいくらでも言えたハズだ」
「・・・・・・・・私そんないい人間じゃないですよ?」
「実際あそこでアコが口答えしていれば友人にも何らかの影響はあっただろう」
「面倒くさかっただけです」
「アコは覚えてないかもしれねェが」
「・・・・・・・・・・何、ですか」
「俺がアコを好きになった理由も、そうだった」
それは初めて聞く、私を好きになってくれた瞬間の話だった。
+思い出色々 終+