何度でも、君と
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「遅くなっちまったな。約束通り家まで送ろう」
「あ、ハイ。・・・・お願いします」
あれから何だかんだと意見を聞かれて、素直にそれに答えていれば外はもう暗くなっていた。
「では車と運転手の手配を致します」
美人の秘書さんがそう言ってくれたけど、
「いや、俺が運転しよう。車の手配だけでいい」
という先輩の言葉に内心パニック。
え、ちょっと待って。
これじゃあ避けたかった状況になっちゃう。
けれど状況はあれよあれよと言う間に進んで行く。
目の前につけられた車。
車のことはよくわからないけど、高級な車なんだと思う。
「乗ってくれ」
「・・・・・・・・・・・・はい」
まさかここまで来て嫌とは言えず。
そもそも先輩の会社まで来てしまっては家までの道もわからないし、タクシーで帰ろうにも持ち合わせが少なすぎる。
観念して助手席に乗り込んだ。
「遅くまで悪かったな、アコ」
「・・・・・・いえ」
私がベルトを締めたのを確認すると先輩は車を発車させた。
こんなに近い距離で。
しかも密室で。
先輩と2人きり、なんて。
・・・・・・・・目、合わせないようにしとこう。
でないと、
・・・・・・・でないと、ドキドキが止まらない。
「・・・・・・・あれ」
「どうした?」
「先輩私の家わかるんですか?」
私は家まで教えてないのに。
「ああ、ルフィから聞いた」
「・・・・・・・そうですか」
もうルフィ君に余計なこと話すのやめよう。
あの人懐っこい笑顔にほだされてつい色んなこと話しちゃうんだよね。
それから少しの間沈黙が続いて。
私はただ景色ばかりを見ていた。
先輩の顔を、見たくなくて。
先に沈黙を破ったのは先輩だった。
「アコ」
「・・・・・・・・はい」
私は窓の外の景色を見たまま返事をする。
「また頼んでもいいか?」
新製品のモニター。
それを引き受けるということは、
先輩と関わるということだ。
「・・・・忙しいので、すみません」
「・・・・・・・そうか」
少しだけトーンの下がった声にざわつく胸。
罪悪感、それとも。
それからまた暫く静かな時間。
車の走る音がやけに耳に響く。
「あ、ここで大丈夫です」
もう家がすぐそこに見えたので、車を止めてもらうことにした。
「ん、ああわかった」
もうこれ以上先輩と2人きりなんて無理。
これでやっと解放される、と思った。
ベルトをはずして出ようとするも、
「アコ」
腕を捕まれて動けなくなった。
「・・・・何ですか?」
「わからないんだ」
数分ぶりに見た先輩の顔はとても真剣で。
「わからない、って何がですか」
「アコの好きな奴が、だ」
どくん、と大きく心臓が跳ねる。
「・・・・・・・・ルフィ君ですよ。好きな人」
「違うだろ?」
「違いません」
「言わねえならキスする」
「・・・・・っ!嫌、です」
そう言った瞬間、
腕を強く引かれた。
そしてそのまま、
重なった唇。
「ん、・・・・・・・ん」
深く、より深く求められる口づけに身体の力が抜けていく。
ようやく唇が離れた私は、
「・・・・・だから!!私は!恋とか愛とかじゃなくて!
ルフィ君の元気さとか純粋さとか前向きなとこが!人間的に好きって言ってるんです!」
そのままやり場のない気持ちをぶつけた。
直後のシャンクス先輩は、といえば。
「・・・・・・・・・人間的に?」
ぽかん、と口を開けて。
驚いているような、そんな顔。
「異性として好きな人は今は居ません!以上何か文句ありますか!?」
「・・・・・・・・・ない」
「じゃあ失礼します!」
ドアを開けて足元に置いていた荷物を持って私は外に出た。
・・・・・・・・・重い。
荷物も、
足取りも。
心も。
重いよ。
久し振りだった、シャンクス先輩とのキス。
思い出すのはあの頃のこと。
先輩とした、初めてのキス。
+重い 終+