何度でも、君と
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「チケットの用意が完了致しました」
「ああ、有難う」
「失礼致します」
アコとの電話が終わった後、すぐに秘書が入って来た。
チケットを机の上に置いて、深くお辞儀をするとすぐに部屋から出て行く。
そして入れ違いに入ってきたのは、
「仕事をしてくれ、社長」
「まあそう言うなベン、ちゃんとしてるさ」
副社長である、ベンベックマン。
「ならさっきまでの電話は何だ」
「我が社の新製品をモニターしてもらったから御礼の電話していただけだ」
「・・・・・このチケットは?」
「謝礼だ」
「わざわざ用意させておいて、社長直々に手渡しか?」
「いくら某有名パテシエのケーキとはいえ、ただ奢る、と言ってもアコは納得しないだろうからな」
「・・・・・・・・・・・・仕事しろ」
「少なくともアコが電話をとってくれたってことは、それなりに良い気分にはなれたってことだろう?」
感想を聞くのも仕事だろ、と言えばベンは深くため息を吐いた。
「復縁出来た時に無職、なんてことにならんよう気をつけるんだな」
「副社長が有能だからな、そうはならんだろうよ」
「・・・・どうなっても俺は知らん」
言いながら呆れたように去っていく副社長の為、俺は残された書類に目を向けた。
・・・・・・・・これ終わらせなきゃ明日のデートもなし、って言われそうだしな。
ふ、と腕時計を見れば10時55分。
・・・・・・・・・・・ちょっと早い、かな。
ドキドキと高鳴る心臓を押さえつつ駅前に着けば、先輩はもう来ていた。
「あ・・・・お、お待たせしました」
「いや、まだ時間より早いくらいだ。・・・今日も可愛いな、アコ」
「・・・・・っいい年した大人が可愛いって言われても嬉しくないです」
「そりゃ失礼。本当のことを言っただけなんだが」
楽しそうに笑う先輩に少しだけ戸惑う。
嬉しくない、訳じゃない。
でもこんなの社交辞令だ。
・・・・・・・・・そう、自分に言い聞かせた。
「それよりこれ、アンケート持って来ましたけど」
「ああ、有難う。参考にさせてもらう」
「気持ち良かったですよ」
「・・・・その台詞、ベッドの上で聞きてェなあ」
「最っ低です」
「ははっ、冗談だ。それよりケーキ食いに行くんだろう?」
もういっそ帰ってしまおうかと一瞬考えたけど、ケーキ、の言葉に心が浮く。
「・・・・・・・・・行きます」
そう言えば、
「え、」
す、っと取られた手。
ぎゅ、っと優しく繋がれた。
「ここから歩いてそう遠くないはずだ」
・・・・・・・・・嫌、なんて言えない。
そのまま黙ってるしかない私に先輩は平然と話しかけてきて、少し悔しい。
「・・・・・・・そういえば引換券、ってどうしたんですか?」
「前に取引先からもらったんだが、すっかり忘れてたんだ。っても俺は甘いモン食わねえし仕方ないんだが」
「あれ、先輩って甘いの苦手でしたっけ」
不意に疑問に思ってぶつけてみると、
先輩はにや、と笑った。
「・・・・・・・・いや?」
そしてそれだけ。
・・・・・・・・・・何となく、気になる、けど。
「ここだな」
目当てのお店に到着したらしい。
「いらっしゃいませ」
お洒落なカフェ、という印象のその店は、あるのは知ってたけど入ったことのない場所だった。
窓際の席に案内されて、先輩が引換券を渡した。
「飲み物は如何致しましょう」
「珈琲で」
「私は紅茶でお願いします」
「かしこまりました」
お客さん自体はそれなりに居るけれど、広いせいか騒々しくなくて、心地良い。
所々に置かれている植木にもセンスがある。
「こんなとこあったんですね。私結構好きかも」
「気に入ったんならまた来よう」
・・・・・・・・・次は1人で来ます、と言えない私はやっぱり臆病者で。
そんな時ふと耳に入ってきた会話。
『面白かったねー!名探偵VS大泥棒!もう1回見たいかも!』
『ねー!やっぱり映画館で見ると違うよね!ていうかあの作品は映画館で見るべき!』
名探偵VS大泥棒!
私も見たいと思ってた作品だ。
そういえばこの近くに映画館あったっけ。
今度休みの日に私も見に行こうかな。
「・・・・・あれ、そういえばどうして先輩は私の休みを知ってたんですか」
『明日ならアコも休みだろう?』
その言葉は私のシフトを知っていなければ出ない言葉だ。
さすがのルフィ君でもそこまで知ってはいない。
「たまたま知ることが出来ただけだが・・・お、来たな」
「お待たせ致しました」
珈琲紅茶、そしてケーキが運ばれてきた。
本当はもっと追求したいとこだけど、どうせまともに答えてはくれないだろうし、やめておく。
・・・・・・・・・・・ケーキも気になるし。
「頂きますっ」
あ、おいし。
さすが某有名パテシエのケーキ。
「そういえば休みの日は何してるんだ?」
ここは紅茶も絶品だな、なんて思いながらケーキを頬張っている私をやっぱり微笑ましげに見つめるシャンクス先輩。
「主に部屋でごろごろしてます。あとはたまに掃除したり買い物とか、映画見に行ったり」
「なるほどな」
・・・・・・・・・・何がなるほどな、なのか。
結局その後も普通に雑談をして、
夕飯前には帰宅した。
・・・・・・・・思い出す、昔のデート。
あの頃より大人になった私達は、
別にもっと遅くても良かったけど。
私が怖がりだから。
+気になることが 終+