3千万ベリーの恋
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「・・・・・という訳で」
「なるほどなあ」
シャンクスは私の話を黙って聞いてくれた。
違う世界から来たこと、
ルフィが主人公の本があること、
その為シャンクスを知っていたこと。
そして仕事から帰ってきて、
うとうとしていたら人身売買の騒ぎに巻き込まれていたこと。
「よく頑張ったな」
「・・・・え、信じてくれるの?」
「信じるさ。何せグランドラインだし何が起こってもおかしくはない」
「いやいやいやいや!グランドラインどんだけ!」
平然と言ってのけるシャンクスに私は肩の力が抜けるのを感じた。
わ・・・私の今までの不安はいったい何だったのか。
グランドライン恐るべし!
「しかし、そうか。困ったな」
「え、何が?」
私が異世界から来たことが何か困ったことにさせただろうか。
「アコが来た時に居た町はもう遠いんだ」
そりゃそうだろう。
もうシャンクスと出会ってから数日は過ぎてる。
「普通に考えたらアコが元の世界に帰る為にはあそこに居たままのほうが良かったんじゃないか?」
衝撃が走った。
やべええええ!!!!
言われてみりゃそうだよ!
でも正直あそこには戻りたくない。
それに。
「・・・・でもさ、この世界に来て、知ってるシャンクスに会ったことの方が何らかの意味がある気がする」
「はははっ、そりゃ嬉しいことを言ってくれる。・・・ところでアコ」
本当に嬉しそうに笑ってから、シャンクスは急に真面目な顔をした。
「ん、何?」
「アコが好きなのは誰だ?」
「・・・・は?」
「途中までとはいえ好んで読んでいる本だ。当然好きな登場人物とかも居るんだろう?」
「好きなのはナミさんだけど」
「ナミ?」
「あ、えーと、ルフィんとこの航海士さん。美人だしスタイル良くて可愛くて強くてカッコよくてマジ天使!」
私はうっとりと語る。
ナミさん素敵よマジで。
「・・・女か?」
ぐぐ、と眉間に皺を寄せるシャンクス。
「そうだけど」
「そうか。なら男では誰なんだ?」
「そりゃ勿論ルフィっしょ!」
「・・・・アコ、俺は?」
少し寂しそうなシャンクス。
ぎくっとした。
「しゃ・・・シャンクスは最初以降あんま出番ないからよくわかんないっていうか」
あ、落ち込んだ。
「あ!でもあのルフィの命の恩人だし、強くてカッコイイお酒好きな人だなって!」
ぴくり、とシャンクスの耳が動いた。
「カッコイイ・・・・?」
「え、うん」
「そーか!カッコイイか!だっははは!」
・・・・立ち直り早っ!
「アコ」
「ん?なーに?」
「帰りたいだろう?」
「・・・・っ」
不意打ちだった。
いきなり、言われて。
「いきなり知らない世界に来て、売られて。知っているとはいえ海賊船だ。怖くない筈がない」
「・・・っそんなこと」
「なのにお前は1度も不安も不満も漏らさなかった。・・・アコは強いな」
「・・・なんで、なんでそんなコト言うの今!っざけんな、馬鹿・・・」
言いながら私は泣いていた。
溢れ出る涙は止まらなくて。
そして急に包まれた。
あたたかいぬくもりに。
1本しかない腕が私の身体に回されていて。
「・・・鼻水つくよ」
抱きしめられたことに驚いて、恥ずかしくて。
「構わんさ。それよりやっと泣いたな」
「・・・・やっと、って」
「ずっと泣きそうな顔してた。でも泣きたいけど泣けないって顔をな」
「そりゃ泣きたくもなるよ・・・!何で私なのってずっと思ってた!友達の方が詳しいし愛だって私よりあるのに、何で私なんだって」
「ああ」
「私戦えないし料理だって得意じゃないし出来ることって言ったら掃除くらいだし」
「ああ」
「でも皆、優しくて、ごはんも美味しいし!嬉しかっ、だから帰りたいなんて言えなっ」
「言え、アコ」
「・・・私はっ」
「俺は聞きたい」
「私は!家に!元の世界に帰りたい!!!」
どれだけ大きな声で叫んだんだろう。
久し振りだった気がする。
こんなに大きな声を出したのは。
そしてシャンクスは私の耳元で、
ひどく優しくそして力強い声音で
「任せろ」
そう一言、確かに言った。
+カッコイイと思った 終+