自由を求めて三千里
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私って世間知らずだったんだなあ、と。
改めて思い知った。
「いやーんお頭さん面白い」
「四皇なのに気取ってなくて素敵」
それは船長さんの魅力なのか、
それとも四皇、というオーラからなのか。
とにかく今、
船長さんはたくさんの美人さんに囲まれて幸せそうだ。
デートだデート、と船長さんに誘われて今日も町に出てきたはいいものの。
何処からか四皇が来てる、という噂が広まったらしい。
船を降りてすぐに囲まれてしまった。
船長さんもまんざらでもなさそう。
こんな状況見たことなかったから新鮮だなあ。
・・・・・・でも、
すごい人だとは思ってたけど。
船長さんこんなにモテるんだ。
改めて思う。
こんなすごい人の船に私が乗っていること、
こんな素敵な人が私のことを好きだといってくれてることの奇跡。
最初はただ、
家を出たかった。
ただそれだけだったのに・・・・・何か、
大変なことになってるなあ。
そんな風にぼーっとしていた私の耳に届いた声。
「タイムセールだよーっ!!」
何ですと!?
ばっと顔を声の方に向けると、
奥のほうの店で男の人が叫んでいた。
ああっ気になる!
船長さんに一言・・・・と思ったけど、
お取り込み中のようなので。
・・・・・・・・・・・ぱぱっと行っちゃおう。
奥にある店だけど人通りが多いとこだし大丈夫だよね!
うん、ちゃんと考えた!大丈夫!
「さあさあいらっしゃーいっ」
何がお得なんだろう、とワクワクしながら店に入った瞬間のことだった。
「・・・・・・・・・・・あ、れ」
口元に当てられた布。
薄れていく意識。
あれ、何かこれデジャヴ。
・・・・・・でもたぶん、
トレバーさんじゃないような気が・・・・する・・・・。
は、と目が覚めた時には、
手足を縛られていた。
「・・・・・・・・・・・・何と言うことでしょう」
見慣れない倉庫。
・・・・・・・・私って倉庫に縁があるのかしら、なんてのんびり考えていると、
さっきまでタイムセールだよー!と叫んでいたはずの男の人が入ってきた。
あぁ、やっぱり知らない人だ。
「お目覚めかい?」
「・・・・・・・・ええ、まあ」
「この間はどうも。よくも俺をコケにしてくれたな、お嬢ちゃん」
コケ?
「私のせいで転ばれたんですか!?」
そんな記憶まったくないんですけど!
「・・・・・・覚えてねーとは言わせないぜ」
男の人の顔が強張った。
「・・・・・・・・・・・・・・・お、覚えてません」
てへ。
笑って誤魔化してみたけど、
「っざけんなよぉ!」
駄目でした。
「今!!忙しい!!言葉わかります!?そう言ったのは誰だったっけぇ!?」
「・・・・・・・・・・・ああ!あの時の!」
迷子になった時、酒屋さんの前で声をかけてきた人!
「お前の後をつけてわかったぜ、赤髪んとこのモンだってな」
あ。じゃあ噂流したのこの人だ。絶対。
「赤髪には手を出せないが、まあ女なら復讐くらいしたっていいだろお?」
「復讐?」
「お前に怒鳴られたのを同僚に見られてたんだよ!これ以上見下されたら・・・俺は」
「じゃあ辞めれば?」
「ああ?」
「そんな嫌なら辞めればいいじゃないですか」
「人手不足で簡単にゃ辞められねーんだよ!」
「辞める権利は貴方にあるんじゃないんですか?」
「・・・・・・・それは」
「私は自由になりたくて家出しました。その結果の場所が、あの船です」
「・・・・おまっ、マジかよ」
「マジですよ。私もびっくりしましたけど。でもおかげで私は今、幸せです」
男の人は頭を抱えてため息を吐いた。
「・・・・・・・・・・嘘だろ」
あははーと笑うと、
「嘘じゃねェとこがいい」
聞き覚えのある声。
「ひっ・・・・・・ひぃィ!!」
「船長さん?」
女性に囲まれてたはずの船長さんが目の前に立っていた。
「うちのアコが世話になったな」
うっわ、すごい迫力。
「船長さん・・・・何でここに」
「さっきからずっと居たが?」
「・・・・・・・・・・・・・・はい?」
「言っただろう?学習した、と。目は離さない、ってな」
そう言って悪戯の成功した子供みたいに笑う船長さんは更に続けて、
「アコの寝顔、楽しませてもらった」
「・・・・・・・・・ええええええ!?」
「幸せです、ってのもな。いいこと聞いた。可愛かったなァ」
それから船長さんは私の手足を縛っていた縄をほどいてくれた。
男の人は恐怖でか、顔が引きつり腰を抜かしているらしい。
「じゃあ、行くか」
「あ・・・・・はい」
ガクガクと身体を震わせる男の人を横目に私は、
「頑張って下さいね!」
と声をかけた。
「・・・・・・・・・・・・まったくアコは」
「え?」
困ったように呟く船長さんを見ると、
「ちったァ嫉妬くらいしてくれるかと思いきや・・・・こっちがやきもきさせられちまった」
と、お店を出た瞬間。
「私を置いていくなんて酷いじゃない!」
物凄い声。
あ、さっき居た女の人だ。
「そんな小娘なんかより私の方が絶対いい女よ!武術の心得だってあるし、貴方の船に相応しいんだから!」
お・・・・・怒ってらっしゃる。
船長さんは少しだけ驚いたように笑った。
「はははっ、それはどうだろうな」
「私の方が愉しませてあげられる!」
「何も考えないで行動して、監禁されても文句言わねェ女の方が楽しいな」
「な・・・・・なによ、それ」
・・・・・・・・・・・・それ絶対私のことですよね。
いやでもあれは普通の監禁じゃなかったんだよ!?
ご飯食べれてトイレにも行けて本も読めて、なおかつ掃除もさせてくれる監禁だったんだよ!?
・・・・・・・と言いたい。
「アコ、行くぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・あ、はい」
何でこの人は私のことを、
好きになってくれたんだろう。
そんな疑問はもとより、
私はこの時、
とても寂しい気持ちになった。
+寂しい気持ち 終+