自由を求めて三千里
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「えーっと、確かここでリップクリームを買ったんですよ。それからここを曲がって」
船長さんの求めるお酒を買う為に、
私が迷子になった店へ再び行くことになった。
ので、来た道を一生懸命思い出そうとするんだけども。
・・・・・・・・・・・どの辺だったかなあ。
「あ、そうだ!そこを通った記憶あります!」
「随分裏道だな。人通りもない」
「そうなんですよーこういうとこに名店は隠れてるんですね!」
「変な奴に声かけられたりしなかったのか?」
ひたすら記憶を探りながら歩きつつ、
そう言えばそんなことあったかも、と思い出す。
「・・・・・・・・かけられたような」
そんなことなかったような。
私の答えに船長さんは変な顔で首を傾げる。
「何かされたのか?」
「そんな暇ないですよ。急いでたんですから。・・・そう、急いでたんで話し聞かなかったんです私」
そうだそうだ、思い出した。
あったなあそんなこと。
あの時は頭の中早く帰らなきゃってことでいっぱいで人の話を聞く余裕なんかなかった。
「無理やり連れ去られてたらどうするつもりだったんだ、アコ」
少し呆れたような船長さんに、
「・・・・・・・・てへ」
笑って誤魔化す。
「・・・・・・・・・・・・考えてなかった、と」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
誤魔化せなかった!
「で、何で急いでたんだ?」
「え、だって船長さんに私が出かけてることバレないように早く帰らなきゃって思ってたので」
「はははっ、バレバレだったんだがな」
何処か楽しそうに笑う船長さんに苦笑。
「・・・・・・・学習しますハイ」
「あァ、俺も学習した。アコから目を離さないことにする」
言いながらぽんぽん、と頭に乗せられた手は、
次に私の手の元に。
「・・・・・・・・・目ですか?これ」
「目も手も似たようなモンだ、気にするな」
「そんなもんですかね」
繋がれた手は、まるで私を逃がさないと言ってるみたいだった。
「・・・・・・・・・あれーこの辺にあったと思ったんですけど・・・!!」
また迷子!?
「ゆっくり探せばいいさ」
優しい船長さんに泣きそうになる。
何という役立たずな私・・・!!
「・・・・・・・・・・すみません」
「そんな顔するな。大丈夫だ、アコ」
「見つけます必ず!」
船長さんの為に!!
「この辺じゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・・見覚えがある気がします」
そうだ、確かこの辺で声をかけられて。
会話をして、
それでもう知るか!ってこっち向いて、
「あー!!!!あった!!!」
くるりと首を向けた先にあった見覚えのある古ぼけた酒屋。
「ほう、ここか」
「そうなんですよ・・・・お邪魔しまーす」
2度目の酒屋さんには、
「らっしゃい」
やっぱり愛想の知らない親父さんが座ってた。
「あ、こんにちはー!昨日頂いたお酒ってまだありますか?」
「ああ、ストックだね。何本だい」
「船長さん、ありました!何本いりますか?」
そう言って船長さんに顔を向けると、
店主さんも船長さんの顔を見た。
「・・・・・・・・あんた、赤髪かい?」
店主さんは言いながら船長さんを睨みつける。
「ああ、海賊をやってる。・・・海賊には売れねェか?」
ドキッとしながら船長さんを見ると、
何てことないという風に笑ってる。
「・・・・・いいや、金さえ払ってくれりゃ構わないよ」
「そうか、そりゃ嬉しいな。10本、あるか?」
「あいよ。1本5000ベリーだよ」
うん、昨日と同じ値段。
「本当にいいのか?この酒はもっと高いもんだと思っていたんだが」
「値段は人によって変わるのさ、うちの店はな」
え、そうなの?
「男と女で変わるって訳じゃなさそうだが」
「ツラぁ見て決めてるんだ。客のな」
それを聞いて気になるのは、
「・・・・・・私どんな顔でした?」
「誰かを喜ばせてやりてえ、って顔だ。そういう顔は嫌いじゃない」
・・・・・・・・・・・うっわぁ恥ずかしい。
「見たかったなァ、そん時のアコの顔。俺の為に、だろう」
「・・・・・・・そうですけど。じゃあ何で船長さんも同じ値段で?」
「俺の薦めた酒を気に入って買いに来たんだろう、こんな嬉しいこたぁねえ」
そう言ってにやりと笑った店主さんに船長さんも嬉しそうに笑う。
「惚れた女がくれた酒っつーのを抜きにしても美味かった」
「惚気は聞きたかないね」
「いやいや、こんな可愛くていい女居ねェんだ、実際」
「いやーそんな褒められると照れますねー」
「・・・・・・・・・あんたらよくお似合いだよ。オマケやるからさっさと帰んな」
「わーい有り難う御座います!」
呆れた声の店主さんは、
それでも少しだけ口角を上げて私達にオマケのお酒をくれた。
船長さんがお金を支払って、
私達は店を出た。
「オマケ何もらったんですか?」
「これだな」
ガサ、と開いた口から出したそれは、
「わ、可愛い」
燃えるような赤い色の小さな盃が大きいのと小さいサイズで1つずつ。
「・・・・・・・・・・・和の国に」
「和の国?」
急に和の国の話をし出した船長さんに首を傾げれば、
「和の国に、夫婦茶碗っつーのがあるそうだ」
船長さんは優しい目で言う。
「メオト・・・・茶碗?」
「夫婦で使用するように、大小二つで一組になっている茶碗のことらしい」
「・・・・・・・・・夫婦、茶碗」
言葉を、噛み締める。
「夫婦盃ってのもいいな、と思ってな」
「・・・・・・・・・それって語呂悪くないですか?」
「そう来たか。まあとにかく、これは俺とアコで使おう」
それから何故か船長さんは苦笑した。
「え、いいんですか!?やったぁ!」
「今夜はコレで飲むか、ストック」
ストック。
それがこの町で有名なお酒の名前らしいけど。
「・・・・・・・・・ストックって、花もありますよね」
「花は詳しくねェんだ・・・あるのか?」
「はい。色んな色の花が咲きますよ。赤とかピンクとか、青も紫も」
「ああ、もしかしてアレか?」
「へ?」
アレか、と首で指す船長さんの視線の先。
道端にちらほら咲いていた、ストック。
「そうです、アレです!わー咲いてたんですね!」
綺麗だなぁ、何で今まで気づかなかったんだろう。
昨日も今日も歩いてたのに。
色とりどりのストック。
「ストック・・・・って花言葉も素敵なんですよ」
「どんな意味があるんだ?」
「見つめる未来」
「・・・・・・・いいな、ますます気に入った」
目を細めて笑う船長さんは優しくて。
まるで誰かを思い出しているようだった。
「船長さん、気づかせてくれて有り難う御座いました。見れて良かったですストック」
「じゃあ今夜は酌を頼む」
「はいっお任せを!」
2つの盃がカシャン、と音を立てた。
+夫婦茶碗ならぬ 終 +
船長さんの求めるお酒を買う為に、
私が迷子になった店へ再び行くことになった。
ので、来た道を一生懸命思い出そうとするんだけども。
・・・・・・・・・・・どの辺だったかなあ。
「あ、そうだ!そこを通った記憶あります!」
「随分裏道だな。人通りもない」
「そうなんですよーこういうとこに名店は隠れてるんですね!」
「変な奴に声かけられたりしなかったのか?」
ひたすら記憶を探りながら歩きつつ、
そう言えばそんなことあったかも、と思い出す。
「・・・・・・・・かけられたような」
そんなことなかったような。
私の答えに船長さんは変な顔で首を傾げる。
「何かされたのか?」
「そんな暇ないですよ。急いでたんですから。・・・そう、急いでたんで話し聞かなかったんです私」
そうだそうだ、思い出した。
あったなあそんなこと。
あの時は頭の中早く帰らなきゃってことでいっぱいで人の話を聞く余裕なんかなかった。
「無理やり連れ去られてたらどうするつもりだったんだ、アコ」
少し呆れたような船長さんに、
「・・・・・・・・てへ」
笑って誤魔化す。
「・・・・・・・・・・・・考えてなかった、と」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
誤魔化せなかった!
「で、何で急いでたんだ?」
「え、だって船長さんに私が出かけてることバレないように早く帰らなきゃって思ってたので」
「はははっ、バレバレだったんだがな」
何処か楽しそうに笑う船長さんに苦笑。
「・・・・・・・学習しますハイ」
「あァ、俺も学習した。アコから目を離さないことにする」
言いながらぽんぽん、と頭に乗せられた手は、
次に私の手の元に。
「・・・・・・・・・目ですか?これ」
「目も手も似たようなモンだ、気にするな」
「そんなもんですかね」
繋がれた手は、まるで私を逃がさないと言ってるみたいだった。
「・・・・・・・・・あれーこの辺にあったと思ったんですけど・・・!!」
また迷子!?
「ゆっくり探せばいいさ」
優しい船長さんに泣きそうになる。
何という役立たずな私・・・!!
「・・・・・・・・・・すみません」
「そんな顔するな。大丈夫だ、アコ」
「見つけます必ず!」
船長さんの為に!!
「この辺じゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・・見覚えがある気がします」
そうだ、確かこの辺で声をかけられて。
会話をして、
それでもう知るか!ってこっち向いて、
「あー!!!!あった!!!」
くるりと首を向けた先にあった見覚えのある古ぼけた酒屋。
「ほう、ここか」
「そうなんですよ・・・・お邪魔しまーす」
2度目の酒屋さんには、
「らっしゃい」
やっぱり愛想の知らない親父さんが座ってた。
「あ、こんにちはー!昨日頂いたお酒ってまだありますか?」
「ああ、ストックだね。何本だい」
「船長さん、ありました!何本いりますか?」
そう言って船長さんに顔を向けると、
店主さんも船長さんの顔を見た。
「・・・・・・・・あんた、赤髪かい?」
店主さんは言いながら船長さんを睨みつける。
「ああ、海賊をやってる。・・・海賊には売れねェか?」
ドキッとしながら船長さんを見ると、
何てことないという風に笑ってる。
「・・・・・いいや、金さえ払ってくれりゃ構わないよ」
「そうか、そりゃ嬉しいな。10本、あるか?」
「あいよ。1本5000ベリーだよ」
うん、昨日と同じ値段。
「本当にいいのか?この酒はもっと高いもんだと思っていたんだが」
「値段は人によって変わるのさ、うちの店はな」
え、そうなの?
「男と女で変わるって訳じゃなさそうだが」
「ツラぁ見て決めてるんだ。客のな」
それを聞いて気になるのは、
「・・・・・・私どんな顔でした?」
「誰かを喜ばせてやりてえ、って顔だ。そういう顔は嫌いじゃない」
・・・・・・・・・・・うっわぁ恥ずかしい。
「見たかったなァ、そん時のアコの顔。俺の為に、だろう」
「・・・・・・・そうですけど。じゃあ何で船長さんも同じ値段で?」
「俺の薦めた酒を気に入って買いに来たんだろう、こんな嬉しいこたぁねえ」
そう言ってにやりと笑った店主さんに船長さんも嬉しそうに笑う。
「惚れた女がくれた酒っつーのを抜きにしても美味かった」
「惚気は聞きたかないね」
「いやいや、こんな可愛くていい女居ねェんだ、実際」
「いやーそんな褒められると照れますねー」
「・・・・・・・・・あんたらよくお似合いだよ。オマケやるからさっさと帰んな」
「わーい有り難う御座います!」
呆れた声の店主さんは、
それでも少しだけ口角を上げて私達にオマケのお酒をくれた。
船長さんがお金を支払って、
私達は店を出た。
「オマケ何もらったんですか?」
「これだな」
ガサ、と開いた口から出したそれは、
「わ、可愛い」
燃えるような赤い色の小さな盃が大きいのと小さいサイズで1つずつ。
「・・・・・・・・・・・和の国に」
「和の国?」
急に和の国の話をし出した船長さんに首を傾げれば、
「和の国に、夫婦茶碗っつーのがあるそうだ」
船長さんは優しい目で言う。
「メオト・・・・茶碗?」
「夫婦で使用するように、大小二つで一組になっている茶碗のことらしい」
「・・・・・・・・・夫婦、茶碗」
言葉を、噛み締める。
「夫婦盃ってのもいいな、と思ってな」
「・・・・・・・・・それって語呂悪くないですか?」
「そう来たか。まあとにかく、これは俺とアコで使おう」
それから何故か船長さんは苦笑した。
「え、いいんですか!?やったぁ!」
「今夜はコレで飲むか、ストック」
ストック。
それがこの町で有名なお酒の名前らしいけど。
「・・・・・・・・・ストックって、花もありますよね」
「花は詳しくねェんだ・・・あるのか?」
「はい。色んな色の花が咲きますよ。赤とかピンクとか、青も紫も」
「ああ、もしかしてアレか?」
「へ?」
アレか、と首で指す船長さんの視線の先。
道端にちらほら咲いていた、ストック。
「そうです、アレです!わー咲いてたんですね!」
綺麗だなぁ、何で今まで気づかなかったんだろう。
昨日も今日も歩いてたのに。
色とりどりのストック。
「ストック・・・・って花言葉も素敵なんですよ」
「どんな意味があるんだ?」
「見つめる未来」
「・・・・・・・いいな、ますます気に入った」
目を細めて笑う船長さんは優しくて。
まるで誰かを思い出しているようだった。
「船長さん、気づかせてくれて有り難う御座いました。見れて良かったですストック」
「じゃあ今夜は酌を頼む」
「はいっお任せを!」
2つの盃がカシャン、と音を立てた。
+夫婦茶碗ならぬ 終 +