自由を求めて三千里
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アコの具合も良くなってきた頃、
島に着いた。
嫌になったらいつでも逃げていい、と言ってある俺にとっては第一の試練、と言ったとこか。
「自信は?」
「ある」
即答すれば、ベンが苦笑した。
「・・・・じゃあさっさとデートにでも誘うんだな、他の男にとられないうちに」
もう既に何人かは町に出ているだろう。
「俺もそう思って探してんだよ、ベン」
「・・・・・・・先越されたか」
「嫌なこと言うな・・・・トレバーに聞いてくる」
自信ある、と即答したものの。
・・・・・・・・・予想のつかないアコのことだ。
誰かと一緒に町に降りていてもおかしくはない。
甲板に出るとすぐにトレバーは見つかった。
「トレバー、アコを知らないか?」
「アコ?今日は見てませんが」
「そうか・・・・」
「部屋には?」
「居なかった」
それからトレバーと顔を見合わせて、
「・・・・・・・・・・お頭、俺は嫌な予感しかしません」
トレバーは物凄く渋い顔で低くそう呟いた。
「・・・・・・・・・・・いや、さすがにそりゃないだろ」
と願いたい。
「だといいんですがね」
「・・・・引き止めて悪かったな」
「いえ」
「アコを見かけたら連絡くれるか?」
「了解しました」
はあ、とため息を吐いてから船を降りたトレバーを見て再びアコを探す。
何度も見た部屋はそのままで。
トイレにも風呂にも居なかった。
・・・・・探せるとこは全部探したな。
ってことは、
「逃げられたのか?頭」
「・・・・・・・・・どうだろうな」
何だかんだ言いながら心配してくれていたのか、とベンの声に振り向けばそれはもう楽しそうに笑っていた。
「フられたか」
「・・・・楽しそうな顔すんなァ、ベンちゃん」
「ああ、こんなに楽しいことはないな」
さっきまでの自信は粉々だ。
「考えられるのは2つだ」
「1つだろ?逃げられた」
「・・・・聞けよベン。もう1つある」
「聞いてやろう」
「1人で町に降りた可能性がある」
もう俺の顔なんか見たくない、と。
それで船を降りたのならいい。
・・・・・・・・いや、良くないが。
だが戻ってくるつもりで1人で買い物にでも行ったってんなら話は別だ。
何があるかわからねェってのに。
「どんなとこかもわからないのに1人で行くか?」
「行くな、アコなら」
後先考えない奴だから。
「こんだけの人数が居たら普通誰かしらと行くってことは?」
「・・・・・・・・どう、なんだろうな」
「そもそも誰1人として姿を見てないってことはこっそり降りたってことになる」
・・・・・・・・俺が認めたくなかっただけか。
「フられたにしても、そうじゃねェにしても、だ」
「おい」
「探してくる」
この船には居られない、と思って降りたんだとしても。
せめてもう1度会いたい。
ちゃんと安全な世界であるのかも確かめないと落ち着きゃしねェ。
・・・・・・・・くっそ、未練タラタラか俺。
「やめとけ、お頭」
「あ?何で止める」
「ただの買い物ならそのうち帰って来る。そうでないなら・・・あんたには会いたくないだろう」
・・・・・・・・・・・ぐさっと来た。
そりゃ・・・・・そうだ。
「・・・・・・・・・・・・だな」
町には仲間も降りてる。
何かあれば奴らが動くだろう。
・・・・・・・・・・・・・・とはいえ。
「落ち着かねェな・・・・・」
これじゃアコが自分から出て行ったんだとしても、
また攫って来ちまうかもしれねェな。
トレバーからの連絡もないし、
どうにも落ち着かない。
「・・・・・・・・アコ」
今何処に居て、
何をしてる。
どんな顔してんのかなァ、あいつ。
また無理して笑ってたりしてねえだろうな。
嫌なことさせられてねェか。
もう何本目かになる酒瓶を空にして、
空を見た。
・・・・・・・・・・・もうすぐ暗くなるな。
ほんとに、帰ってこないつもりか?アコ。
「お頭」
目の前に座ったのは、
「ああ・・・・トレバー」
「アコは帰って来てない、と」
「・・・・・あァ」
帰ってきたら1人では居ないさ。
アコを抱きしめて、離さない。
「目撃情報もねェ、か」
「みたいですね」
「あいつ隠れるの上手いからな」
「・・・・・・・・・ははっ、まったくです」
笑うトレバーは、何処か元気がない。
「トレバー・・・・アコをどう思う?」
「単純馬鹿。迷惑な奴だが・・・・嫌いではないですよ」
「可愛いだろ?」
「・・・・それは俺にはわかりませんね」
「・・・・・・・・そうか」
少なくとも恋愛感情はなさそうだ。
トレバーのグラスに酒を注いでやって、
2人無言で飲み干した。
仲間と飲む酒でさえこんなに不味いとは思わなかった。
「このまま帰って来なかったらどうします?またやりますか」
トレバーが言っているのは掻っ攫う、ってことだろう。
正直やりたい気持ちはでかい。
「いや。・・・・束縛はしたくねェんだ」
「お優しいこって」
「好きな女にゃ臆病にもなる」
「そんなもんですか。・・・・俺は部屋に戻ります、やることがあるんで」
「ああ、悪かったな」
さて俺も新しい酒を取りに行くかと立ち上がった時、見えた小さい影。
「あ」
小さく声をあげて、
俺を見たその姿は、
「アコ」
「ど・・・・どうも」
アコ、だった。
気まずさげに笑いながら近づいてきたアコの腕を取り、閉じ込めた。
「・・・・・・・・・・や、やっぱり怒ってます、よね」
アコは申し訳なさそうに呟く。
「それもある。・・・・・が、今はもう怒ってねェさ」
俺の前に戻ってきてくれただけで。
「あの・・・船長さん?」
「逃げられたのかと、思ったが」
「いやいやいや!それはないです!」
「じゃあ何故誰にも言わず出かけた?」
怒ってない、そう言いながら少しきつい口調になった。
「だって・・・・病み上がりだからって船長さん心配してたから」
言ったら絶対止められると思ったんです、と泣きそうな声が聞こえて、反省した。
・・・・・・・・・俺のせいか。
「で、何処に行ってたんだ?」
「リップクリームがなくなったので、買いに」
「・・・・・・・それだけの割には遅かったんじゃねえのか」
「・・・・・・・・・迷子になりまして」
「迷子?」
「・・・・ここ何処だろう、みたいな」
ああ、そりゃ確かに迷子だ。
「・・・・・・・く、くははっはははっ!そうか、迷子か!アコらしいな!」
アコらしいその理由に存分に笑ってから、
そっと腕を離した。
そして、
「うぎゃ!」
ごつん、と軽く頭を小突いてやる。
「・・・・っやっぱ船長さん怒ってる!」
「俺は束縛したくはねェんだ、アコ。だからこれは命令じゃない」
「・・・・・・・何ですか?」
「俺の前から居なくなるときは、知らせてくれ。じゃないと酒が不味くて仕方ない」
アコは少しだけ嬉しそうに笑って、
「・・・・はいっ」
ゆっくり頷いた。
これでやっと、美味い酒が飲めるってもんだ。
+酒の味 終+
島に着いた。
嫌になったらいつでも逃げていい、と言ってある俺にとっては第一の試練、と言ったとこか。
「自信は?」
「ある」
即答すれば、ベンが苦笑した。
「・・・・じゃあさっさとデートにでも誘うんだな、他の男にとられないうちに」
もう既に何人かは町に出ているだろう。
「俺もそう思って探してんだよ、ベン」
「・・・・・・・先越されたか」
「嫌なこと言うな・・・・トレバーに聞いてくる」
自信ある、と即答したものの。
・・・・・・・・・予想のつかないアコのことだ。
誰かと一緒に町に降りていてもおかしくはない。
甲板に出るとすぐにトレバーは見つかった。
「トレバー、アコを知らないか?」
「アコ?今日は見てませんが」
「そうか・・・・」
「部屋には?」
「居なかった」
それからトレバーと顔を見合わせて、
「・・・・・・・・・・お頭、俺は嫌な予感しかしません」
トレバーは物凄く渋い顔で低くそう呟いた。
「・・・・・・・・・・・いや、さすがにそりゃないだろ」
と願いたい。
「だといいんですがね」
「・・・・引き止めて悪かったな」
「いえ」
「アコを見かけたら連絡くれるか?」
「了解しました」
はあ、とため息を吐いてから船を降りたトレバーを見て再びアコを探す。
何度も見た部屋はそのままで。
トイレにも風呂にも居なかった。
・・・・・探せるとこは全部探したな。
ってことは、
「逃げられたのか?頭」
「・・・・・・・・・どうだろうな」
何だかんだ言いながら心配してくれていたのか、とベンの声に振り向けばそれはもう楽しそうに笑っていた。
「フられたか」
「・・・・楽しそうな顔すんなァ、ベンちゃん」
「ああ、こんなに楽しいことはないな」
さっきまでの自信は粉々だ。
「考えられるのは2つだ」
「1つだろ?逃げられた」
「・・・・聞けよベン。もう1つある」
「聞いてやろう」
「1人で町に降りた可能性がある」
もう俺の顔なんか見たくない、と。
それで船を降りたのならいい。
・・・・・・・・いや、良くないが。
だが戻ってくるつもりで1人で買い物にでも行ったってんなら話は別だ。
何があるかわからねェってのに。
「どんなとこかもわからないのに1人で行くか?」
「行くな、アコなら」
後先考えない奴だから。
「こんだけの人数が居たら普通誰かしらと行くってことは?」
「・・・・・・・・どう、なんだろうな」
「そもそも誰1人として姿を見てないってことはこっそり降りたってことになる」
・・・・・・・・俺が認めたくなかっただけか。
「フられたにしても、そうじゃねェにしても、だ」
「おい」
「探してくる」
この船には居られない、と思って降りたんだとしても。
せめてもう1度会いたい。
ちゃんと安全な世界であるのかも確かめないと落ち着きゃしねェ。
・・・・・・・・くっそ、未練タラタラか俺。
「やめとけ、お頭」
「あ?何で止める」
「ただの買い物ならそのうち帰って来る。そうでないなら・・・あんたには会いたくないだろう」
・・・・・・・・・・・ぐさっと来た。
そりゃ・・・・・そうだ。
「・・・・・・・・・・・・だな」
町には仲間も降りてる。
何かあれば奴らが動くだろう。
・・・・・・・・・・・・・・とはいえ。
「落ち着かねェな・・・・・」
これじゃアコが自分から出て行ったんだとしても、
また攫って来ちまうかもしれねェな。
トレバーからの連絡もないし、
どうにも落ち着かない。
「・・・・・・・・アコ」
今何処に居て、
何をしてる。
どんな顔してんのかなァ、あいつ。
また無理して笑ってたりしてねえだろうな。
嫌なことさせられてねェか。
もう何本目かになる酒瓶を空にして、
空を見た。
・・・・・・・・・・・もうすぐ暗くなるな。
ほんとに、帰ってこないつもりか?アコ。
「お頭」
目の前に座ったのは、
「ああ・・・・トレバー」
「アコは帰って来てない、と」
「・・・・・あァ」
帰ってきたら1人では居ないさ。
アコを抱きしめて、離さない。
「目撃情報もねェ、か」
「みたいですね」
「あいつ隠れるの上手いからな」
「・・・・・・・・・ははっ、まったくです」
笑うトレバーは、何処か元気がない。
「トレバー・・・・アコをどう思う?」
「単純馬鹿。迷惑な奴だが・・・・嫌いではないですよ」
「可愛いだろ?」
「・・・・それは俺にはわかりませんね」
「・・・・・・・・そうか」
少なくとも恋愛感情はなさそうだ。
トレバーのグラスに酒を注いでやって、
2人無言で飲み干した。
仲間と飲む酒でさえこんなに不味いとは思わなかった。
「このまま帰って来なかったらどうします?またやりますか」
トレバーが言っているのは掻っ攫う、ってことだろう。
正直やりたい気持ちはでかい。
「いや。・・・・束縛はしたくねェんだ」
「お優しいこって」
「好きな女にゃ臆病にもなる」
「そんなもんですか。・・・・俺は部屋に戻ります、やることがあるんで」
「ああ、悪かったな」
さて俺も新しい酒を取りに行くかと立ち上がった時、見えた小さい影。
「あ」
小さく声をあげて、
俺を見たその姿は、
「アコ」
「ど・・・・どうも」
アコ、だった。
気まずさげに笑いながら近づいてきたアコの腕を取り、閉じ込めた。
「・・・・・・・・・・や、やっぱり怒ってます、よね」
アコは申し訳なさそうに呟く。
「それもある。・・・・・が、今はもう怒ってねェさ」
俺の前に戻ってきてくれただけで。
「あの・・・船長さん?」
「逃げられたのかと、思ったが」
「いやいやいや!それはないです!」
「じゃあ何故誰にも言わず出かけた?」
怒ってない、そう言いながら少しきつい口調になった。
「だって・・・・病み上がりだからって船長さん心配してたから」
言ったら絶対止められると思ったんです、と泣きそうな声が聞こえて、反省した。
・・・・・・・・・俺のせいか。
「で、何処に行ってたんだ?」
「リップクリームがなくなったので、買いに」
「・・・・・・・それだけの割には遅かったんじゃねえのか」
「・・・・・・・・・迷子になりまして」
「迷子?」
「・・・・ここ何処だろう、みたいな」
ああ、そりゃ確かに迷子だ。
「・・・・・・・く、くははっはははっ!そうか、迷子か!アコらしいな!」
アコらしいその理由に存分に笑ってから、
そっと腕を離した。
そして、
「うぎゃ!」
ごつん、と軽く頭を小突いてやる。
「・・・・っやっぱ船長さん怒ってる!」
「俺は束縛したくはねェんだ、アコ。だからこれは命令じゃない」
「・・・・・・・何ですか?」
「俺の前から居なくなるときは、知らせてくれ。じゃないと酒が不味くて仕方ない」
アコは少しだけ嬉しそうに笑って、
「・・・・はいっ」
ゆっくり頷いた。
これでやっと、美味い酒が飲めるってもんだ。
+酒の味 終+