自由を求めて三千里
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頭が働かない。
ぼーっとする。
えーっと、何すればいいんだっけ。
「えーと」
・・・・・・・・・・・・あれ?
ここ、何処だ?
私どうしたんだっけ。
目の前に見える天井、寝ているベッドはふかふか。
動く部屋。
・・・・・・・・・・動く部屋?
ちょっと待って私、ホテルの部屋に居たはず。
それからすべてを思い出して顔が青ざめていくのがわかった。
そうだ、私。
仮面の男達に囲まれて。
意識失って。
・・・・・・・・・・・・・ここに居るんだ。
慌ててベッドから降りて部屋を見渡す。
目の前のドアからしか逃げられなさそう。
何で私を連れてきたのかは知らないけど、
逃げなきゃ。
せっかく船長さん達にここまで連れてきてもらったのに!
そう思ってドアノブに手をかけた瞬間、聞きたくなかった声が耳に届いた。
「出航ー!」
嘘でしょ!?
やっぱここ船!?
急いでノブを回すけど、開かない。
「ちょっ、ちょっと待って下さーい!!船出さないで!!」
ドアに向かって叫んで、
ドンドン叩いてみる。
・・・・・・・・でも反応はない。
「ちょっと!どちら様か存じませんけどね!私を出しなさい!」
でも負けない!
せめてドアが開けば逃げられる可能性だってあるんだから。
「こらー!聞いてんの!?」
そこまで言って初めて反応があった。
「もう船は出た。手遅れだ、諦めな」
「泳いで逃げる!」
「・・・・・・そんな無茶な」
「無茶でも何でもするの!せっかく船長さん達に連れてきてもらったのに・・・・!」
「もらったのに?」
「こんなことになって船長さんに申し訳なさすぎる!だああ!早く出して!」
ドンドン叩き続けた手がいい加減痛い。
でも諦めない。
続けて何を言ってやろうかと思った瞬間。
ガチャ、という音と共にドアが開いた。
そして、
「誰に申し訳ないって?お嬢さん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
出て来た男の人。
仮面はない。
その顔は、
「せん・・・・・・ちょう、さん?」
「よう」
「・・・・・・・・・あ、れ?」
私のよく知る船長さん、だった。
「怖い思いさせちまって悪かったな、アコ」
「・・・・・・・え、え、え?」
私はいまだに何が起こっているのかわからない。
「でもな、仮面つけるって言い出したのはトレバーだからな?顔がバレると色々面倒だってよォ」
「あの・・・・・えっと?」
情けないことに言葉が出て来ない。
「あ、スープ美味かった。アコの手料理もこれからは食いたいもんだな」
「はあ・・・・有り難う御座います」
作った料理を褒められてついお礼を言って。
「じゃなくてですね船長さん!?ここはっ」
「俺の船で、俺の部屋だな」
「ですよね!・・・・っでもなくて!何で私ここに居るんですかね!?」
「連れてきたからだ」
駄目だ!話にならない!
「何で私は連れてこられたんですか!?」
話の核心に迫る。
だけど船長さんはいつものようにへらりと笑ったまま。
「海軍がうろついてたんでな、あそこは。あんまり長居出来なかったんだ、悪いな」
「いえいえ、とんでもない・・・・じゃなくて!私はっあそこで皆さんとお別れしたはずで!」
「ああ、したな」
「もう会わない覚悟だってしたんですよ!?」
「そうか」
「・・・・・・・・・・っ」
一気に脱力してしゃがみこんだ。
「おいおい、大丈夫か?」
「・・・・・・状況が飲み込めません」
やっとのことでそれだけ説明すれば、
「まあそうだろうな。で、本題だアコ」
ようやくまともな話になりそうだ。
「・・・・・お聞きします」
ごくりと生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
「俺達は海賊としてお前を掻っ攫ってきた」
「・・・・・・・・・海賊として?」
「簡単に言えば別れが惜しくなった。だがそう言って頼み込めばアコは頷くだろ?」
「そう、ですね」
必要とされることが嬉しい私は。
断らないだろう。
「だがそれじゃ駄目なんだ」
「駄目、と言いますと」
「俺達にほだされて仕方なくこの船に残るんじゃ意味がねェってことだ」
船長さんが部屋の中に入ってきて、
バタンとドアが閉まった。
「アコを離したくない。だが望んでここに居てくれっつーことだ」
不敵な笑みを浮かべる船長さんの片腕が私の腰に伸ばされて。
ぐ、っと引き寄せられた。
「愛しちまったんだ、アコ」
耳元で囁かれて、
どくんと心臓が大きく動いた。
「嫌になったらいつ逃げてもいい。追いかけたりしねえから安心しろ」
優しく諭すように、語り掛ける声。
「ああ、でも海の上に居る限りは逃がさないつもりだからな」
「え?」
「さっき言ってただろう?泳いで逃げるって」
「あ、それは」
それはここがまさか今までお世話になってた船だと思わなかったからで。
「海は危険だから、覚えておけよ」
身体が少し離れて船長さんと目が合った。
・・・・・・・船長さんの方が怖い。
「・・・・・・・・はい」
はーっと安堵の息を吐くと船長さんが苦笑い。
「トレバーが褒めてた。度胸のある女だってな」
「トレバーさんが?」
「あの場で大声出す余裕、かつ助けて、じゃなく火事だーって言えるなんてたいしたもんだってな」
「トレバーさんも居たんですか、あの場に!」
「後ろから布当てられて眠らされたろ?」
「はい」
「それやったのがトレバーだ」
マジですか・・・・!
「しゃべってくれたらわかったのに!」
「バレないようにしゃべらないようにしてたんだろうな」
からからと笑いながら話す船長さんにショックを受ける私。
あ、でも。
「・・・・・・・トレバーさんとかベンさんは反対しなかったんですか?」
「アコのスープが効いたんだろうな、トレバーは割とすんなり賛成してくれた」
「ベンさんは?」
「ベンには一昨日の時点で話をしてたんだが苦労したぜ・・・まァ最終的には納得してくれたが」
「皆も納得してくれたんですか?」
「ああ、納得済みだ」
皆が納得してくれるなら、いいかも。
逃げてもいいって言ってくれてるし。
「ふつつかものですが・・・よろしくお願いします」
もう暫くはここでお世話になろう。
そう決めた。
すると船長さんは、
「逃げ道は作ってあるからな。本気でいかせてもらう」
「・・・・・・・・・・・うぇ」
・・・・・・・・やっぱ怖い。
+そういうことか 終+