自由を求めて三千里
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『船長さんには内緒でお願いします』
この言葉を聞いた時、何かが切れた。
ベンには簡単に話しておいて、俺には内緒?
苛立ちを抑えきれず、
苛めてみたくなった。
いつも飄々としていて。
何事にも動じることのないアコの泣き顔が見たい、と。
しかしアコは泣くことはなく、
・・・・・・・・・怒った。
ように見えた。
その声と顔に、
拍子抜けしたのと同時に我に返った。
今まで・・・・・・・・・
笑った顔ときょとん、とした顔くらいしか見たことなかったなそういや。
あとは困ったように笑う姿。
もっと色んな顔が見てみてェなァ。
そうは思うものの、
次の島に着くまで順調に行けばあと5日。
アコはどんな顔で俺達に別れを言うんだろうな、と考えた。
「え、雨?」
「もう少ししたら嵐だな」
「マジですか・・・・有り難う御座います」
通りすがりの航海士さんが、
もうすぐ雨になると教えてくれた。
危なかった。
洗濯物は室内に干そう。
嵐、かあ。
そういえば風が強くなったような気がする。
雷は鳴らないといいな。
祈りながらさくさくと洗濯物を干し終えた。
その瞬間。
空が光った。
そして次には、
物凄い雷鳴。
「え」
驚く間もなくざあああ、っと降り出した雨。
あー・・・・・・・これはホント、干さなくて良かった、洗濯物。
波は当然のように荒れてきて、
揺れる船。
ふとすれ違ったクルーの人に、
「何か手伝います?」
と聞いてみたけど、
「これくらいじゃすることないぜ」
と言われてしまった。
・・・・・・・・・・そうか、これくらい普通なんだ。
私結構怖いんだけど。
部屋で本を読もうにも、
どうにも落ち着けなくて内容が頭に入ってこないし。
掃除も終わったし、やることはないし。
耳に響く轟音、揺れる船。
だがしかし私にやることはない。
「・・・・・・・・・・・落ち着けないいいい!!!」
本を置いて立ち上がったところで虚しく響く私の声。
そして再び響いた雷鳴に、
私は部屋を出た。
行く先は。
コンコン、と控えめなノック音が部屋に響いた。
このノックの仕方で外に居るのが誰かわかる。
「どうした、アコ?」
名前を呼べば、予想通りアコがおずおずと顔を出した。
「・・・・・・・・・お邪魔しても、いいですか?」
「何か用事か?」
ベンに渡された書類を机に置いてアコを見れば至極真面目な顔で、
「あ、どうぞお構いなく」
「は?」
「ここに居たいだけなんです。駄目ですか?」
こんなことを言う。
・・・・珍しいこともあるもんだ。
「まあ、言いたくねえならいいさ」
「・・・・・・・・・・・・・・雷が」
「ん?」
ちょこん、と俺の隣に座って。
丸くなって俯くアコの声は小さい。
・・・・・・・・可愛いなァ、こいつは。
「雷が怖いんです、私」
「・・・・・・・・・そうか」
「でも船長さんの側って何かすごく安心するっていうか、落ち着けるっていうか」
「そりゃ光栄だな」
「だから・・・・ここに居ていいですか?」
下から覗き込んでくる瞳からは、
恐怖も不安も感じない。
ただ伝わってくるものは、必死さ。
恐らく必死に堪えているんだろう。
「好きなだけ居りゃいいさ」
アコの頭をいつものように撫でれやれば、ほっと表情が柔らかくなった。
・・・・・・・・こんな時、片腕なのが少しばかり惜しくなる。
両手で抱きしめてやりてェな。
ま、いいか片腕でも。
「わぷっ」
何か言おうとしたアコを片腕で閉じ込めて、
「こうした方がもっと落ち着くだろう?」
さてこれにはどんな反応が返って来るかと思えば(落ち着きません!というのを実は期待していた)、
「・・・・・・・・・・はい、すっごく」
ゆっくりと紡ぎ出された言葉。
・・・・・・・・・・・・・・そしてそのまま、
腕の中から聞こえてきた寝息。
笑うしかねえな、こりゃ。
+落ち着ける場所 終+
この言葉を聞いた時、何かが切れた。
ベンには簡単に話しておいて、俺には内緒?
苛立ちを抑えきれず、
苛めてみたくなった。
いつも飄々としていて。
何事にも動じることのないアコの泣き顔が見たい、と。
しかしアコは泣くことはなく、
・・・・・・・・・怒った。
ように見えた。
その声と顔に、
拍子抜けしたのと同時に我に返った。
今まで・・・・・・・・・
笑った顔ときょとん、とした顔くらいしか見たことなかったなそういや。
あとは困ったように笑う姿。
もっと色んな顔が見てみてェなァ。
そうは思うものの、
次の島に着くまで順調に行けばあと5日。
アコはどんな顔で俺達に別れを言うんだろうな、と考えた。
「え、雨?」
「もう少ししたら嵐だな」
「マジですか・・・・有り難う御座います」
通りすがりの航海士さんが、
もうすぐ雨になると教えてくれた。
危なかった。
洗濯物は室内に干そう。
嵐、かあ。
そういえば風が強くなったような気がする。
雷は鳴らないといいな。
祈りながらさくさくと洗濯物を干し終えた。
その瞬間。
空が光った。
そして次には、
物凄い雷鳴。
「え」
驚く間もなくざあああ、っと降り出した雨。
あー・・・・・・・これはホント、干さなくて良かった、洗濯物。
波は当然のように荒れてきて、
揺れる船。
ふとすれ違ったクルーの人に、
「何か手伝います?」
と聞いてみたけど、
「これくらいじゃすることないぜ」
と言われてしまった。
・・・・・・・・・・そうか、これくらい普通なんだ。
私結構怖いんだけど。
部屋で本を読もうにも、
どうにも落ち着けなくて内容が頭に入ってこないし。
掃除も終わったし、やることはないし。
耳に響く轟音、揺れる船。
だがしかし私にやることはない。
「・・・・・・・・・・・落ち着けないいいい!!!」
本を置いて立ち上がったところで虚しく響く私の声。
そして再び響いた雷鳴に、
私は部屋を出た。
行く先は。
コンコン、と控えめなノック音が部屋に響いた。
このノックの仕方で外に居るのが誰かわかる。
「どうした、アコ?」
名前を呼べば、予想通りアコがおずおずと顔を出した。
「・・・・・・・・・お邪魔しても、いいですか?」
「何か用事か?」
ベンに渡された書類を机に置いてアコを見れば至極真面目な顔で、
「あ、どうぞお構いなく」
「は?」
「ここに居たいだけなんです。駄目ですか?」
こんなことを言う。
・・・・珍しいこともあるもんだ。
「まあ、言いたくねえならいいさ」
「・・・・・・・・・・・・・・雷が」
「ん?」
ちょこん、と俺の隣に座って。
丸くなって俯くアコの声は小さい。
・・・・・・・・可愛いなァ、こいつは。
「雷が怖いんです、私」
「・・・・・・・・・そうか」
「でも船長さんの側って何かすごく安心するっていうか、落ち着けるっていうか」
「そりゃ光栄だな」
「だから・・・・ここに居ていいですか?」
下から覗き込んでくる瞳からは、
恐怖も不安も感じない。
ただ伝わってくるものは、必死さ。
恐らく必死に堪えているんだろう。
「好きなだけ居りゃいいさ」
アコの頭をいつものように撫でれやれば、ほっと表情が柔らかくなった。
・・・・・・・・こんな時、片腕なのが少しばかり惜しくなる。
両手で抱きしめてやりてェな。
ま、いいか片腕でも。
「わぷっ」
何か言おうとしたアコを片腕で閉じ込めて、
「こうした方がもっと落ち着くだろう?」
さてこれにはどんな反応が返って来るかと思えば(落ち着きません!というのを実は期待していた)、
「・・・・・・・・・・はい、すっごく」
ゆっくりと紡ぎ出された言葉。
・・・・・・・・・・・・・・そしてそのまま、
腕の中から聞こえてきた寝息。
笑うしかねえな、こりゃ。
+落ち着ける場所 終+