自由を求めて三千里
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「家出した本当の理由は?」
洗濯物を干していたら、唐突にベンさんから質問された。
「・・・・・・・本当の理由、ですか?」
と、言われても。
「そんなに酷い家だったのか」
「・・・・・いいえ」
何だかんだ住まわせてくれたし、
ご飯も食べれた。
お風呂にも入れたし、寝るときは柔らかい布団で寝れた。
「なら家を出る必要はなかったんじゃないのか?」
「・・・・・・・確かに、洗濯物の量は多くなりましたねえ」
人数が違うんだからこればっかりは仕方ない。
なんて笑えば、呆れたようなため息が返ってきた。
「そういうことを言ってるんじゃないんだが。別に疑っている訳じゃない。ただ」
ただ、と言って言葉を切ったベンさんは次の言葉を口にするのを迷ってるように見えた。
「ただ、何ですか?」
だから続きを聞きたくて促せば、
「ただ・・・・・・・死にたがっているように見えた」
「え」
「それならうちを死に場所にするのをやめてくれ、と言いに来た」
真っ直ぐに突き刺さる視線。
「・・・・や、死ぬのは嫌です」
「ならいい」
「ただ」
さっきのベンさんと同じように、私はここで言葉を切った。
ちょっと、言いにくいんだよなあ。
「ただ、何だ」
「・・・・・・ただ、押しに弱いんですよねえ私」
「は?」
少しだけ迷ってやっぱり口にしてみたら、ベンさんは怪訝な顔で首を傾げた。
あ、何か口にしたらたいしたことじゃなかったかもしれない。
「多少はやりたくないことも我慢してやりますけど。でも全部流されちゃいそうで怖かった」
あのままあそこに居たら、
私は息子と結婚していたかもしれない。
でも私にとってあの人は兄弟同然で。
そんな風に見られなかった。
だから絶対嫌だった。
「必要とされたら、私断れないことが多くて。本当に嫌な時は断りますけど、何回もお願いされたら折れちゃうかも」
そしたらきっと、
私は私でなくなってしまう。
それが怖かった。
「面倒な性格だな、それは」
「あはは、自覚あります。あ、でもこのことは船長さんには内緒でお願いします」
たぶん、心配してくれるから。
そう思って伝えれば何故かベンさんは苦笑して首を横に振った。
え、駄目なの?
「悪いがもう手遅れだ」
「手遅れ?」
後ろを振り向いたベンさんの視線の先に居たのは。
「せせせ船長さん!?」
居たの!?
「いつから!?」
「家を出る必要はなかったんじゃないのか、のあたりだな」
ほぼ最初ですけど!?
驚く私にベンさんが楽しそうに笑って、
「黙っていたことは謝ろう。ま、あとは2人でゆっくり話すんだな」
と颯爽と去って行き。
残されたのは、
阿呆みたいにぽかんと口を開けたままの私と、
そんな私を見てくつくつと笑いを堪えてる(若干堪えきれてないけど)船長さん。
「あー・・・・えっと私洗濯物まだ残ってるんで」
「後でいい」
「このままだとしわくちゃのままになっちゃうんですよ!」
伸ばすのが大変なんですよ!と熱弁するも、
「よし、なら俺も手伝おう」
という結果になり。
「おおおおおお話しがあるなら後でお部屋に伺いますが!?」
「話するだけならここで出来るだろ?」
「何ならお茶とお菓子もおつけしますよ!?」
自分で訳のわかんないことを言ってる自覚はある。
でも何となくいたたまれなくて。
・・・・・・・・・何となく、
船長さんには知られたくなかった。
押しに弱い、こんな自分を。
じゃあ何でベンさんには話せたか、というと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ。
何でだ。
「あとこれだけだろう?たまには俺もやるさ」
「えーと・・・じゃあ、ハイ。お願いします」
やっぱり承諾してしまった自分にがっくりと肩を落として洗濯物干しを再開。
・・・・・・・・・四皇が洗濯物とか。
ちょっと不思議だ。
「断れない訳じゃなかったんだな」
「・・・・・・・・・・・・・・はい」
「押しに弱いとはいいことを聞いた」
「何か怖いですその言い方」
「だっはっは、まあ海賊だからな」
2人並んで洗濯物を干しながらする会話じゃない。
なるべくこれ以上余計なことは言わないように無表情を作った。
「結婚してくれ、って迫ったら結婚してくれるっつーことか」
「たぶんその前に逃げますけどね」
実際こうして逃げてる訳だし。
「なるほど。逃げられないようにすりゃいい訳か」
あ。しまった。
言わなきゃ良かった。
「うわああああ!船長さん怖い!」
「そう言うな。じゃあとりあえず、アコ」
「・・・・・・・・・・はい」
何を言われるのかと覚悟して耳を澄ます。
「泣け」
「は?」
「泣いとけ」
「いやいやそれは無理がありますよ!」
そりゃいくら押しに弱いと言っても、泣きたくもないのに泣ける訳ないでしょう!
「俺はアコの泣いた顔が見てみたい」
「そっ・・・・そんなこと言われましても」
言いながら私は最後の1枚を干し終えた。
「あ。洗濯物終わったので、私はこれ、でっ!!」
よっし、逃げようと後ろを向けた瞬間腕を強く引かれた。
あっと言う間に私の身体は船長さんの片腕の中。
「じゃあキスしよう」
船長さんの目は、本気に見える。
「いいだろう、アコ?」
逃げられない、この状況で。
私は一瞬で色んなことを一気に考えた。
お世話になってるしキスくらい、とか。
いやいやさすがにそれはマズイでしょう、とか。
初キスくらい好きな人としたい、とか。
絞り出た言葉は、
「船長さんのどえす!!」
だった。
船長さんはさっきの私みたいに口をぽかんと開けて、驚いた顔。
「そこまでからかわなくてもいいじゃないですかー!!」
「・・・・・・・・はァ」
半泣き状態で叫べば、目の前でため息を吐いて俯く船長さんは、反省してるようには見えない。
「悪かったな、アコ」
ぽんぽん、といつものように頭を優しく叩いて船長さんは私を離し、何処かへ行ってしまった。
・・・・・・・・・・あんなからかい方するなんて、
酷い人だ。
+押せ押せ 終+
洗濯物を干していたら、唐突にベンさんから質問された。
「・・・・・・・本当の理由、ですか?」
と、言われても。
「そんなに酷い家だったのか」
「・・・・・いいえ」
何だかんだ住まわせてくれたし、
ご飯も食べれた。
お風呂にも入れたし、寝るときは柔らかい布団で寝れた。
「なら家を出る必要はなかったんじゃないのか?」
「・・・・・・・確かに、洗濯物の量は多くなりましたねえ」
人数が違うんだからこればっかりは仕方ない。
なんて笑えば、呆れたようなため息が返ってきた。
「そういうことを言ってるんじゃないんだが。別に疑っている訳じゃない。ただ」
ただ、と言って言葉を切ったベンさんは次の言葉を口にするのを迷ってるように見えた。
「ただ、何ですか?」
だから続きを聞きたくて促せば、
「ただ・・・・・・・死にたがっているように見えた」
「え」
「それならうちを死に場所にするのをやめてくれ、と言いに来た」
真っ直ぐに突き刺さる視線。
「・・・・や、死ぬのは嫌です」
「ならいい」
「ただ」
さっきのベンさんと同じように、私はここで言葉を切った。
ちょっと、言いにくいんだよなあ。
「ただ、何だ」
「・・・・・・ただ、押しに弱いんですよねえ私」
「は?」
少しだけ迷ってやっぱり口にしてみたら、ベンさんは怪訝な顔で首を傾げた。
あ、何か口にしたらたいしたことじゃなかったかもしれない。
「多少はやりたくないことも我慢してやりますけど。でも全部流されちゃいそうで怖かった」
あのままあそこに居たら、
私は息子と結婚していたかもしれない。
でも私にとってあの人は兄弟同然で。
そんな風に見られなかった。
だから絶対嫌だった。
「必要とされたら、私断れないことが多くて。本当に嫌な時は断りますけど、何回もお願いされたら折れちゃうかも」
そしたらきっと、
私は私でなくなってしまう。
それが怖かった。
「面倒な性格だな、それは」
「あはは、自覚あります。あ、でもこのことは船長さんには内緒でお願いします」
たぶん、心配してくれるから。
そう思って伝えれば何故かベンさんは苦笑して首を横に振った。
え、駄目なの?
「悪いがもう手遅れだ」
「手遅れ?」
後ろを振り向いたベンさんの視線の先に居たのは。
「せせせ船長さん!?」
居たの!?
「いつから!?」
「家を出る必要はなかったんじゃないのか、のあたりだな」
ほぼ最初ですけど!?
驚く私にベンさんが楽しそうに笑って、
「黙っていたことは謝ろう。ま、あとは2人でゆっくり話すんだな」
と颯爽と去って行き。
残されたのは、
阿呆みたいにぽかんと口を開けたままの私と、
そんな私を見てくつくつと笑いを堪えてる(若干堪えきれてないけど)船長さん。
「あー・・・・えっと私洗濯物まだ残ってるんで」
「後でいい」
「このままだとしわくちゃのままになっちゃうんですよ!」
伸ばすのが大変なんですよ!と熱弁するも、
「よし、なら俺も手伝おう」
という結果になり。
「おおおおおお話しがあるなら後でお部屋に伺いますが!?」
「話するだけならここで出来るだろ?」
「何ならお茶とお菓子もおつけしますよ!?」
自分で訳のわかんないことを言ってる自覚はある。
でも何となくいたたまれなくて。
・・・・・・・・・何となく、
船長さんには知られたくなかった。
押しに弱い、こんな自分を。
じゃあ何でベンさんには話せたか、というと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ。
何でだ。
「あとこれだけだろう?たまには俺もやるさ」
「えーと・・・じゃあ、ハイ。お願いします」
やっぱり承諾してしまった自分にがっくりと肩を落として洗濯物干しを再開。
・・・・・・・・・四皇が洗濯物とか。
ちょっと不思議だ。
「断れない訳じゃなかったんだな」
「・・・・・・・・・・・・・・はい」
「押しに弱いとはいいことを聞いた」
「何か怖いですその言い方」
「だっはっは、まあ海賊だからな」
2人並んで洗濯物を干しながらする会話じゃない。
なるべくこれ以上余計なことは言わないように無表情を作った。
「結婚してくれ、って迫ったら結婚してくれるっつーことか」
「たぶんその前に逃げますけどね」
実際こうして逃げてる訳だし。
「なるほど。逃げられないようにすりゃいい訳か」
あ。しまった。
言わなきゃ良かった。
「うわああああ!船長さん怖い!」
「そう言うな。じゃあとりあえず、アコ」
「・・・・・・・・・・はい」
何を言われるのかと覚悟して耳を澄ます。
「泣け」
「は?」
「泣いとけ」
「いやいやそれは無理がありますよ!」
そりゃいくら押しに弱いと言っても、泣きたくもないのに泣ける訳ないでしょう!
「俺はアコの泣いた顔が見てみたい」
「そっ・・・・そんなこと言われましても」
言いながら私は最後の1枚を干し終えた。
「あ。洗濯物終わったので、私はこれ、でっ!!」
よっし、逃げようと後ろを向けた瞬間腕を強く引かれた。
あっと言う間に私の身体は船長さんの片腕の中。
「じゃあキスしよう」
船長さんの目は、本気に見える。
「いいだろう、アコ?」
逃げられない、この状況で。
私は一瞬で色んなことを一気に考えた。
お世話になってるしキスくらい、とか。
いやいやさすがにそれはマズイでしょう、とか。
初キスくらい好きな人としたい、とか。
絞り出た言葉は、
「船長さんのどえす!!」
だった。
船長さんはさっきの私みたいに口をぽかんと開けて、驚いた顔。
「そこまでからかわなくてもいいじゃないですかー!!」
「・・・・・・・・はァ」
半泣き状態で叫べば、目の前でため息を吐いて俯く船長さんは、反省してるようには見えない。
「悪かったな、アコ」
ぽんぽん、といつものように頭を優しく叩いて船長さんは私を離し、何処かへ行ってしまった。
・・・・・・・・・・あんなからかい方するなんて、
酷い人だ。
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