自由を求めて三千里
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ようやくアコもこの船に馴染んで来たかと思っていた。
その矢先だった。
洗濯物をしてくると言ったアコの姿が見えない。
その辺にいた奴に聞いてみれば、
『トレバーに連れてかれてましたよ』とのこと。
・・・・・なるほどな。
となるとトレバーの部屋には居ないだろう。
誰も使っていない、いつからか放置されたままの倉庫。
あそこなら人目にもつかないし、監禁するにはもってこい、だ。
案の定そこに見張りらしきクルーが居た。
「何をやってるんだ?」
「お・・・・お頭」
冷や汗を流したクルーの様子を見れば予想が当たっていたことは明白。
「中にアコが居るな?」
「しっしかし、本人も承知の上です!」
「そりゃ嫌とは言えんだろうよ」
ドアを開けようとする俺の前に立ちふさがるクルーは、それでも退こうとしない。
・・・・・・・・・・アコは、
ここに居ろと言われたら恐らく嫌とは言えない。
そういう性格だ。
「お頭に何かあれば、」
「退いてくれねェか。仲間を傷つけたくない」
じろりと軽く睨めば、
「そいつは悪くねえですよ、お頭。俺が頼みました」
トレバーが横から来て、ドアの前に立つ。
「何でこんなことした、トレバー」
「怪しかったから、以外にありますか?あの女も抵抗しなかった」
「アコと話をしたか?」
「しました。本人も納得済みです。十分だと」
「それが本音だと思ったのか?」
「・・・・・どういう意味でしょう」
「とにかく退いてくれ、トレバー」
「出来ません」
「退け」
思ったより低い声が出た。
それに諦めたのか、
トレバーがずれた。
急いでドアを開けると、アコは何でもないような顔で本を手に取っていた。
「何してるんだ、アコ」
「あ、船長さん。今本読もうと思ってたんですよー」
この間は面白そうな本がなかった、と言っていたくせに。
「この部屋から出るな、と言われたな?」
「え、はい」
「何故俺に言わなかった?」
「・・・・・え、だって。ここに居ていいって言われたから」
睨みつける俺をじっと臆することなく見つめ返すアコは、決して弱くない。
この間も嫌な時は言うと、俺に言った。
「嫌な時は言えって言った筈だ」
「・・・・嫌じゃないですよ?」
きつめに問いただせば、返ってきたのは予想外過ぎる答え。
「監禁が?」
「だって、ご飯も食べれる、トイレにも行ける、本も読めます。明るいし。海に落ちろって言われたらそりゃ断りますが」
平然と言い返すアコに思わず深いため息を吐いた。
・・・・・・・駄目だこいつは。
この間俺が言った意味を理解してないのか、と軽く拳を頭に当てた。
「ぎゃっ!!」
痛くはなかったはずだが驚いたのか、アコは声をあげて不満顔だ。
「仲間だ、って言っただろう?仲間をこんなとこに閉じ込められるか馬鹿」
そう伝えればアコはきょとん、として、
「でも・・・あの人は私を仲間だと思ってくれてません」
「ああ、だろうな。だいたいのことはトレバーから聞いた」
ちら、と後ろのトレバーを見ると、ただアコを観察するように見つめていた。
「じゃあ、」
「だからお前の口から言え、アコ」
どん、と背中を押してアコをトレバーの前に突き出す。
俺が何を言ったところで変わりはしない。
「・・・・私、やっぱり自分が間違ってるとは思いません」
「アコ」
あくまで意見を変えようとしないアコを咎めるように名前を呼ぶ。
「だって普通に考えたら怪しいですよこんな女」
・・・・・・・・・まだ言うか。
「でもね、トレバーさん。あなたも見くびりすぎです。貴方がたの船長さんはこんな女にやられるような人じゃないでしょうに」
「・・・・・・そうだな、悪かった」
今度はちゃんとトレバーと睨み合ったアコは、視線を外したトレバーに、にっこりと微笑んだ。
「いえいえ、私も悪かったんでお互い様です」
「は?」
また訳のわからないことを言い出したと思ったら、
「トレバーさんと船長さんに言ったこと、本音でしたけど・・・半分だけでしたから」
「半分?もう半分は?」
「半分はやっぱり寂しかったですねー」
少しだけ寂しそうにそう笑ったアコ。
「ほら見ろトレバー」
十分、だけが本音じゃなかったろ、という意味をこめてそう言えば、
「・・・・・・まったくお頭には敵いませんや」
トレバーは苦々しく笑った。
「トレバー、さん」
「・・・・・・何だ」
「私この部屋使ってもいいですかね?」
「・・・・・・・・・・はぁ?」
「せっかくご用意して下さった部屋だし、片付けもしたし。ここで暮らせると思うんですよねー」
駄目ですかね?と可愛らしく首を傾げるアコに俺もトレバーも開いた口が塞がらない。
「お頭、申し訳ないが俺には手に負えない仲間のようだ」
手に負えない、と言いながらトレバーはアコを仲間だと認めた。
「まあそう言うな。面白いだろ?」
「は、確かに。しかしお前・・・こんなとこでいいのか?」
「十分です!」
「お頭がいいなら、俺は別にいい」
「船長さん、いいですか?」
アコの期待の眼差しに、俺はゆっくりと首を横に振った。
「駄目だ」
「何で、ですかね」
俺の答えが意外だったのか、おずおずと聞いてくるアコに答える。
「俺が寂しくなるだろう」
こんなに面白くて可愛い女、
もう目が離せねェよなァ。
結局、アコの強い希望と、
その方がいいという周りの声もあってアコは使っていなかったこの部屋を使うことになった。
次の島に着くまであと1週間と3日。
+ほらみろ 終+