3千万ベリーの恋
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一旦船に戻って、アイスケーキは冷凍庫に入れた。
夜の宴の時のデザートで食べる予定で。
私はといえば部屋に戻ってベッドの上でぼーっとしている。
あの時は泣きそう、って思ったけど、いざ1人になってみると泣けないもんだなあ、なんて。
・・・・・私も好き、って口にするだけの問題じゃないんだ。
シャンクスに好きだと伝えることは、私がここに残るということだ。
家族も友人も、仕事も何もかも捨てて。
・・・・・海賊の、世界で。
シャンクスが海賊王の船に居たことも、四皇の意味すら知らなかった私が、
この世界で生きてくことは想像以上に辛いんだろうなと思う。
それでもこの船は居心地が良くて、楽しい。
この船なら。
シャンクスの隣でなら。
・・・・・ここらでちょっと横になりたい気分だけども、そんなことをしたらたぶん寝るな私。
さすがに学習した。
ここで悩んでても仕方ないと結論を出し、シャンクスに会いに行くことにした。
まずは帰れるかもしれない方法がどんななのかを聞いてみないと。
自分の部屋を出てすぐ隣の部屋。
ドアの前に立って、動けなくなる。
・・・シャンクスの顔を思い出しただけなのに。
帰る方法ってどんな、って聞いたら、私が帰るって思うかな。
・・・思うだろうなあ。
そしたらシャンクスはどんな顔するんだろ。
迷って、悩んで。
思いっきり叫びたい気分だ。
手を伸ばしては引っ込めて、それを4回繰り返した。
5分くらいそうしていて、その後深く深呼吸して覚悟を決めた。
コンコン、と軽くノックして、
「私、アコだけど」
するとすぐにドアが開いた。
「ああ、入ってくれ」
楽しそうなシャンクスが迎え入れてくれて、不思議な気分だ。
こうもすぐにドアが開くとは。
「お・・・お邪魔します」
「何ですぐに来なかったんだ?」
「へ?」
「扉の前に5分くらい居ただろう?」
見抜かれてる!
何故!
「何でわかったの!?」
「ははっ内緒だ」
子供みたいに笑うシャンクスに、それまでの緊張が少しだけ緩むのを感じた。
「そういえばさ、私が誘拐された時に敵の人たち数人を指1本触れないで倒してたけど、あれ何だったの?」
「ああ、そりゃ覇気だ」
緊張が解けたからか、気になっていたことをふと思い出した。
それにもシャンクスは笑顔で答えてくれる。
「覇気?」
聞くと、シャンクスは簡単に覇気、というものを説明してくれた。
・・・シャンクスは貴重な覇王色の持ち主なのか。
「アコ?」
何も言わなくなった私を不思議に思ったのか、シャンクスが名前を呼ぶ。
優しい声。
もとの世界に帰ったら、こんな風に名前を呼んでくれる声も聞けない訳か。
「んー何か改めて知らないこといっぱいあったんだなって思って」
「・・・そうか」
「あ、そいえば、さ。帰れるかもしれない方法ってどんなの?」
よし、これは自然に言えたっしょ!
心の中でガッツポーズ。
「アコは月虹という現象を知っているか?」
シャンクスは至って普通に答えてくれた。
「げっこう?」
「月の光によって生じる虹のことだ。これが満月の時に起きること、それがまず1つの条件だな」
「・・・まず1つってことはまだあるんだ?」
「あとは鏡と月の間に目を閉じて居ることだ。そしてその時に思い浮かんだ場所に行ける、らしい」
「・・・へー」
私がこっちに来た時ももしかしてそういう状況だったのかも。
「ちなみに次の満月は3日後。月虹が起こる確率は半々だそうだ」
「3日後・・・」
もしその時に月虹が起こったら。
私はどうするんだろう。
「アコ・・・すまん」
「え、何が?」
突然謝ってきたシャンクスに、何のことだかわからない私。
「任せろと言ったのは俺だ。だが、今は帰したくねえ」
「・・・・うん」
「それでもアコの願いは叶えてやりたいと思ってる、と言ったら困惑するか?」
「ま、人間なんてそんなもんでしょ。どっちにしても嬉しいよ、私は」
「アコ・・・」
「3日後に月虹が起きなくても、ちゃんと返事はするよ。私らしく考える。ありがとね」
「アコらしく、か。・・・そうだな、それがいい」
ふ、と優しく笑ってくれたシャンクス。
今まで何回この表情を見てきてただろう。
・・・あと何回見れるんだろう。
「そそ、だからシャンクスもシャンクスらしくしててよ」
「そんなこと言われたら襲うぞ?」
「それは却下で」
そう答えたら、シャンクスは大口開けて笑い始めた。
・・・・・こういう時、ああ好きだなあって思ってしまう自分が居る。
+戸惑う 終+