False love
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「好きなの」
「ああ、俺も好きだ」
「そう?いいわよね、このブランド」
・・・シャンクスに向かって、じゃないなら。
簡単に好きって言えるんだけど。
「・・・これ、アコに似合いそうだな」
「あら可愛い」
青と赤のブレスレット。
でも値札を見て商品を置いた。
「気に入らなかったか?」
「・・・ボーナス前の私には、ちょっと」
情けない話しだけども。
「・・・そうか」
シャンクスは私が置いたブレスレットを見つめたあと、ひょい、とそれを手に取った。
「ちょ・・・っと」
手に取ったままこれを、と店員に渡すシャンクス。
「すまん」
なんて笑顔で振り返ったシャンクスは全然反省なんてしてなさそうで。
何がすまん、よ。
「・・・そういう勝手なとこ嫌い」
「アコに似合うと思ったんだ、アコも気に入ってくれただろう?」
「私がそういうことされるの嫌なの知ってるでしょ?」
「この間アコを傷つけた詫びだ」
「それは今日の食事を出してくれることでチャラって約束だったはず」
「・・・・すまん、ただ喜んで欲しかっただけなんだ」
「・・・・・・そ・・・・・っ」
それはずるい!!
そんな寂しそうな顔でそんなこと言われたら!!
怒るに怒れないじゃない・・・!!
「・・・嫌いになったか?」
「じゃあ半分出させて」
「俺が勝手にやったことだ」
「駄目」
「・・・駄目か?」
「駄目です。絶対嫌」
「・・・そんなにか」
「どうしても出させないって言うなら」
「なら?」
「今日は帰らせて頂きます」
そこまでシャンクスがため息を吐いた。
「そこまでとはな・・・わかった、1割でどうだ?」
「3割」
「・・・2割だ」
傍から見たら喧嘩してるように見えるかもしれない。
我ながらバカバカしい。
・・・・素直に有難うって受け取れば簡単だし、
可愛い女なのにっていうのはわかってる。
「・・・あんまり私を甘やかさないで」
「甘やかしたくて仕方ねェんだ、すまんとは思ってる」
そうしてシャンクスは会計を済ませて、
ブレスレットの入った紙袋を私に手渡した。
「・・・・有難う」
お礼を言って受け取った私の手をシャンクスが取って絡めた。
「・・・何?」
「帰られないようにしておかないとな」
「帰らないわよ」
「なら安心だ。・・・と言ってもまだ怒ってはいるみたいだな?」
「そうね、怒ってはいるわ」
「嫌いにならないでくれ、と懇願するしか出来ないな俺には」
わかってる、シャンクスが私のことを下に見たりしている訳じゃないってことは。
・・・ただシンプルに私のことを思ってくれてるんだろう。
一生懸命に恋人を演じてくれてる。
・・・偽の恋人なのに、ここまでしなくていいのに。
「・・・本当に、気持ちだけで十分。だって私たちは、」
突然ぽん、と頭に置かれた手。
「恋人だろう?俺達は」
「・・・・・そう、だけど」
・・・何処か有無を言わせぬ強い圧を感じて頷くしか出来なかった。
だって私たちは。
その続きを聞きたくなくてアコの言葉を遮った。
アコが俺達の関係を偽の恋人同士だと思っているのは知っているが、
それを改めてアコの口から聞くのはキツイ。
「悔しいじゃない」
ぽつりとアコが呟いた。
「ん?」
「私ばっかり喜んでるみたいで」
・・・ああ、本当に愛おしい。
可愛くて仕方がねェ。
甘やかしたくて、
抱きしめたくて仕方がない。
「そんな風に・・・見えるか?」
「え?」
「俺がどれだけアコに救われてるか・・・幸せをもらってるか、わかってないみたいだな」
アコの笑顔にどれだけ救われてきたか。
真っ直ぐに伸びた背中に。
凛とした瞳に。
シャンクス、と俺を呼ぶ声に。
「たいしたこと出来てないじゃない」
「俺はそうは思ってねェってことさ」
さて、アコの機嫌を直す為に次はどうするか。
「じゃあとりあえずはい、二割」
「・・・俺が勝手にしたことなんだが」
「シャンクス」
「わかった、有難くもらおう」
じろりと睨まれて慌ててお金を受け取った。
アコの満足そうな笑みにほっと肩を撫で下ろした。
「・・・ねえ」
「ん?」
「シャンクスは何が好きなの?」
恐らくアコが言いたいのは好きなブランドや物のことだろう。
が、
「アコだな」
あえてこう返せばどう反応が返ってくるかと期待を込めた。
「・・・誰が、じゃなくて何が、って聞いたんだけど」
予想外にアコは眉を顰めた。
「おっと、すまん。・・・そうだな、何がと聞かれると困るが・・・こういう時間、だな」
「こういう時間?」
「アコと居られる時間がたまらなく愛おしい」
「・・・・そういうのでもないんだけど」
「物には執着がないんだ、生憎と」
「・・・ふぅん」
「・・・俺は、恐らくアコが思ってよりもっとずっとアコを愛してる」
「な・・・に、」
「例えアコが俺のことをどう思っていようとも」
「・・・・それ、どういう、」
困惑した顔のアコに見つめられてさてどう答えたものかと考えていたら、
ぽつりと冷たい何かが頭に当たった。
「アコ、何処か適当な店に入った方が良さそうだ」
「え、嘘雨?」
「傘、持ってねェだろう?」
「ないわ。・・・そこ、カフェがある」
「よし入ろう」
目の前にあったカフェに咄嗟に入って席に着いた瞬間、
「きゃ、」
アコの小さな悲鳴と同時に空が光ったのが見えた。
「ゲリラ雷雨ってやつだな」
「音、近いわ」
「何、ここに居れば問題はない」
「・・・・ねえ。さっきのどういう意味?」
・・・いい機会かもしれないな。
この関係を、本当にするために。
「アコ、俺は」
「アコじゃね!?久しぶりじゃん!!」
聞き慣れない男の声が遮った。
「・・・こちらは?」
あからさまに嫌そうな顔を隠そうとしないアコに尋ねれば、
「・・・・前に付き合ってた人」
小さくそう答えた。
・・・・なるほど。
コイツは確かにゲリラ雷雨だ。
+なるほど確かに 終+