False love
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「アコさぁぁぁん・・・・・」
「何ですか後輩君」
「俺もう駄目ッス・・・・・」
「何が駄目なの?」
後輩の情けない声にちらりと時計を見た。
まだ21時、と言うべきか。
もう21時、と言うべきか。
「彼女とデートの約束があるんスぅぅ・・・・」
「・・・・・あとどれくらい?」
「こんくらいッス」
どん、と見せられた書類の量。
「・・・・いいわ、行っても」
「いいんスか!?有難う御座いまーす!!」
喜び勇んで帰る後輩をやれやれと見送って、
書類のチェック。
とりあえず緊急でやらなきゃいけないものは半分くらい、か。
「甘やかしすぎじゃないか?」
もう帰り支度を済ませたシャンクスが声をかけてきて、思わず苦笑した。
「半分は明日彼にやらせるつもり、期限まだあるし」
「それにしても、だ」
「仕方ないわ、デートらしいから」
・・・私が逆の立場だったら。
そう考えたら帰っていいと言わずにおれなかった。
愛する人と過ごせる時間、大切にしたい気持ちはわかるから。
「俺とのデートはどうなる?」
なんてシャンクスが冗談ぽく笑う。
「今度ね。今日は先に帰ってて」
「冷たいな、俺に手伝わせてくれないのか?」
「そこまでお願い出来ません」
ただでさえこの間のことで借りがあるのに。
「2人でやった方が早いと思うが?」
「それはそうだけど・・・・」
「邪魔か?」
「っていうか・・・・」
「ていうか?」
「シャンクスこそ私を甘やかしすぎじゃない?」
「恋人を甘やかして問題が?」
「甘やかしすぎは問題だと思うわ」
だからこのまま先に帰って欲しいんだけど。
きっとそう言えばシャンクスはわかった、と言って出たフリをして近くで待ってるんだろうなあ。
なんて思う。
・・・ほんとの、恋人でもないのに。
「アコなら出来るのはわかっちゃいるが、心配なんだ」
「過保護ね」
なんて苦笑したらシャンクスの眉が顰められた。
「・・・保護者のつもりはねェ」
・・・・少し怒ったように見えた。
私は何か彼を傷つけるようなことを言ってしまっただろうか。
「・・・そうね、ごめんなさい。でもこの仕事引き受けたのは私だし、シャンクスまで巻き込みたくないの」
「・・・仕方ない、今日は帰っておこう」
「そうして。ちなみにその辺で待ち伏せは禁止」
「おっと、読まれてたか」
「本当に有難うシャンクス、お疲れ様」
これで安心して仕事に専念出来る、と思いきや。
「・・・・シャンクス?」
シャンクスはぴくりともこの場から動こうとしない。
「あァ・・・いや、しつこいと嫌われるのはわかっちゃいるんだがな?」
「どうしてもって言うなら30分だけ待ってて、すぐ終わらせるから」
「いや、帰るよ。悪かった」
シャンクスが退社したのを見届けて、
今度こそ仕事再開。
と思いきや。
「まったくしつこいねあの男も」
「・・・・お疲れ様です先輩」
告白こそされたことのないものの、
何度かアプローチしてくる先輩だ。
シャンクスと交際を始めたことにしてからは大人しくなったように見えた、んだけど。
「迷惑なことははっきりと迷惑と言った方がいいと思うがね」
今のアンタの方がよっぽど迷惑なんですけど。
「何か御用でしょうか」
「これは来週公表される予定なんだが、実は昇進が決まってね」
「それはおめでとう御座います」
頑張って愛想笑いを浮かべたけど、
「つまり君たちをどうすることも出来るようになったということだ」
この言葉に思わず顔から笑みが消えた。
「・・・・何がおっしゃりたいのでしょうか」
「単刀直入に言おう。あの男と別れて僕と付き合いたまえ、勿論結婚前提だ」
「お断りします」
「断ればシャンクスの降格は決定だ」
・・・・・・・ボイスレコーダーに録音してなかったことを悔やんだ。
「仕事に私情を持ち込むのはいかがなものかと」
「何とでも言えばいい、君の答え次第だ」
・・・本当の恋人でもない私の為にシャンクスが降格になる。
そんなの許さない。
でも。
「とりあえず今はこの仕事片付けないといけないので帰ってもらえませんか?考えさせてください」
「考える必要があるかい?」
「・・・・でははっきり言わせて頂きますね。迷惑です」
「・・・・は」
「迷惑な時は迷惑とはっきり言った方がいいとさっき先輩が」
「ぼっ僕に刃向かうとどうなるか・・・・!」
「権力しかアピール出来ない無能なら黙って帰ってもらえません?」
「なっ、な・・・・ん・・・・」
「無能じゃないって言うなら私の代わりにこれやって下さい私シャンクス追いかけるんで」
シャンクスには申し訳ないけどこんな男と付き合うなんてもっと御免だ。
怒りに任せて立ち上がったら、
「その必要はねェ、ここにいる」
ドアから見えた赤い髪。
「お、お前帰ったんじゃなかったのか!」
「アコに次のデートの約束を取り次いでないことに気づいて戻ってきたところだ」
「聞いていたんなら話しは早い、お前から別れを切り出してもいいんだぞ」
「生憎と昇進にも降格にも興味がないもんで」
「それなら首にしてやる」
「正当な理由もなしに出来るとは思えませんわ」
「適当に理由をでっちあげて・・・!」
「でっちあげた理由で解雇がまかり通るような会社ならこちらから辞めさせて頂きますわ」
「ああ、そうだな、それもいい」
「お・・・お前ら・・・覚えてろよ!」
顔を真っ赤にさせた先輩はそう言って出て行った。
「覚えてろよって現実に言う人居るのね・・・」
「だっはっは、身近にいるもんだなァ」
「ホント。・・・・それはそうと、ごめんねシャンクス」
「アコが謝るようなことがあったか?」
「シャンクスの降格と自分を並べて自分を取ったこと」
シャンクスは私の謝罪にいつものように笑った。
「むしろ俺は嬉しかったから気にする必要はねェさ。俺の為にあれと付き合う必要はなかった」
「有難う。・・・・ところで本当に何でここにいるのかしら」
「・・・・すまん」
責めたつもりはなかったんだけど、シャンクスはしゅんと俯いた。
「ううん、来てくれて良かった。・・・本当に降格されたらと思うと不安だけど」
「ああ、それなら問題ない」
「え」
「俺に策がある」
「何!?」
「心配するな、俺が守る」
「・・・・・・どうやって?」
何度か聞いたけどシャンクスは答えてくれなかった。
でも後日シャンクスと先輩が何か話したのを見た後、
先輩が私たちを避けるようになり、
シャンクスも私も何事もなかった。
・・・・謎。
シャンクスに何かお礼をしないとな、とは思う。
+優しい人 終+